弟のために悪役になる!~ヒロインに会うまで可愛がった結果~

荷居人(にいと)

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番外編年齢制限なし

番外編~幸せを願う、心から~

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トアが猛獣となり、お風呂で自分から仕出かし、大変な目にあった翌日熱を出した俺は、トアを心配させ、トアが年配のベテラン待女に教わりながら、食事を作る以外世話をしてくれた。

「兄上……すみません」

「ん……俺が誘ったんだから」

二人分の仕事を押し付けられた側近二人にこそ謝った方がいい気もするが、まあ今度休暇ひとつ増やすぐらい進言してみよう。

熱のせいか、身体もだるく、薬のせいか、眠たくなる身体、会話でトアを安心させてあげる余裕が俺にはなく、次第に心配するトアを最後に瞼が落ちるのを感じた。

『兄さん』

懐かしい声。それは忘れられずに後悔の原点にいる前世の弟。トアを愛そうとしたきっかけ。

夢だとわかっているけど、もう一度会いたくて、死なせたことを謝りたくて、最後まで俺を兄だと思ってくれたことに感謝をしたくて、そんな大事なもうひとりの弟。

「あ………」

名前を呼ぼうとして呼べない。いや、思い出せない。確かに俺の弟なのに、弟“だった”のに。

『兄さん、また会えて嬉しい』

「俺もだよ」

返事が返せることにほっとした。笑みを浮かべる弟は最後に目にした弟の姿で、病室にいた時の服のまま。俺はあの時の前世の姿になっているようだ。じゃなきゃ、弟が俺を兄だとは思わないだろう。

『僕、王座の証の話が大嫌いだった』

ああ、幼馴染みが弟にも話していたのだろう。突然のその話をして、悲しげに笑う弟の頭を自然と撫でると、ほんの少し嬉しそうにする弟。

『セトアも苦労するみたいだけど、リーアベルも必死なのに、セトアばかり幸せになって、リーアベルは最後不幸のまま死ぬなんて、あんまりだから。兄の婚約者すら奪って、まるで兄を不幸にするために生まれた子だ。』

「リーアベルの自業自得だ。努力の方向性を間違えたんだよ」

それにそのトアは兄が必死になる理由を知らない。愛されたいと、必要とされたいと叫ぶその意味を。意味を持って生まれてくる子などひとりとしていない。

『ううん、そんなことない。まるでセトアは僕だ』

「違う!」

何を言っている?弟は弟で、トアはトア。でもそういう意味じゃない。弟は自分を、俺(兄)を不幸にするために生まれた子(弟)と言っているのだ。

この夢はなんだ?こんな夢は俺が思う夢ではない。

『僕知ってる!兄さんに本当は嫌われていたこと!』

流れる涙を見て、グサリと胸を突き刺すような痛みを感じた。

「なら、なんで……」

否定なんてできない。本当のことだった。今でこそ愛してやればよかったと心底感じているが。

『兄さんが、好きだから………っ嫌ってる癖に、転べば助け起こしてくれて、泣けば乱暴に頭撫でて来る兄さんが大好きだったの!』

「そん……」

『そんなことじゃない!体調ばかり気にして、あれだめ、これだめって言われてる中、そこから連れ出してくれる兄さんは僕を鳥かごから自由にしてくれた唯一の自由の鍵だったんだよ?親の見てないところでいたずらしてやろうとしてたのはわかってた。親に構われる僕を睨む目も。でも、自分からいたずらして泣く僕を慰めるのも結局兄さんで、親に叱れるのも兄さんなのに同じこと繰り返して……いつしか兄さんに恋してたよ』

「! それは、ごめん」

この弟はどれだけ俺のことを想い、苦しんできたのか、何一つ気づいてやれなかった。

『謝らないで。死に逃げて兄さんを追い詰めたのは僕だ。僕、神様にお願いしたんだ。僕はもう一度兄さんと兄弟になりたいって。そしたら兄さんはリーアベルに転生してるし、僕はセトアに魂ひっついた半端者でびっくりしたよ』

「え?」

『ふふっ大丈夫。セトアと僕は別人だよ。セトアの魂に僕がしがみついていたようなもの。兄さんに愛されてるってわかる気持ちがセトアを通じて僕にもたくさん流れてきた。これが、兄さんの愛なんだって。途中兄さんに会えなくて痛い気持ちもあったけど、共感できたし、その後和解した後は幸せいっぱいな気持ちが、物凄く僕をも幸せにしてくれた』

「俺は幸せにできていたんだな……」

トアだけじゃなく、間接的にでも弟を幸せにできたというなら嬉しいことこの上ない。これはもはや夢じゃないと俺は思っている。

『今日はお別れに来たんだ。ネタバレしちゃうと、ここにいる兄さんは精神体で、夢とはまた違うんだよね。で、ここは魂の集まる場所。さすがに時間切れで転生するんだ、僕も。セトアへの転生は失敗したのバレちゃって』

「そうなのか・・・」

『兄さん、また会えたら、セトアみたいに愛してほしいな。愛のお遊戯は別にして』

「愛のお遊戯ってお前なぁ」

『ふふっありがと!兄さん!さようなら!』

「━━━━!」

最後に叫んだ言葉は確かに思い出せた弟の名前。

どうか、どうか、幸せな転生を送れますようにと見たこともない神様に願えば任せなさいという誰とも知らぬ声を聞いた気がし、目を開けた時には、もう熱も下がり、王の部屋へ移動することとなった。
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