1 / 12
1
しおりを挟む
「君とは婚約破棄する」
そう告げたのは私の婚約者くるくるのわかめ頭がチャームポイントのアルアル・ナシナシとふざけた名をするこの国の第一王子様。卒業パーティーで突然の宣言に会場がざわつく。言われた張本人である私は特にその宣言に驚くことはない。
何せここは前世していた乙女ゲームの世界に酷似しており、ヒロインも存在していたから悪役令嬢に転生した私は覚悟していた。別に死ぬわけではないのでいいかなと軽視していたのもある。
何よりアルアルは友人としては面白いが、結婚相手としては苦労しそうだなと感じていた。決して前世の記憶にあるよくあるライトノベルの悪役令嬢主人公の相手王子がクズというわけではない。
ただただアルアルは他にない王子として頭のおかしい子なのである。いや、髪のことではないけど。
しかし、それはそれとして謎なのは婚約破棄イベントなのにヒロインがアルアルの隣にいないこと。おかしなこととして何故かアルアルがフランスパンを手に持ち、アルアルの頭を巣と勘違いしているのかぴよぴよと鳴く小鳥がいること。
正直わかっていた婚約破棄発言よりも、いないヒロインのことよりも、おかしな頭のアルアルが持つフランスパンよりも、アルアルの頭の上に乗るふわふわそうなぴよぴよと鳴く小鳥が気になる。
さ、触りたい………。
「君には悪いと思っている。だけど、私は見つけてしまったんだ……このフランスパンを!」
「ぴ、ぴよっ」
ああっ!言葉と共にフランスパンを掲げるアルアルが顔を軽くあげてしまったから小鳥がびっくりしてるじゃない!顔を傾けずまっすぐこちらを向きなさいよ!ヒロインがフランスパンでも私は構わないから!
フランスのない乙女ゲームにフランスパンがある不思議とかツッコまないから、とにかく小鳥さんが過ごしやすいようにしなさい。仮にもあなたの頭は今、小鳥さんの巣なのだから……!
「アルアル様!嬉しいですわ!私に一目惚れなんて!」
「?」
「ぴ、ぴぴ!?」
ああああああっ!電波ヒロイン!どこにいたのか知らないけど呼んでもないのに来ないでくださる!?アルアルがそちらを向いたせいで小鳥さんが振り回されたじゃないの!
アルアルは気づいてないの?わざとなの?フランスパンより小鳥さんを気遣いなさいよ!
私はとにかく小鳥さんが気になってハラハラとした気持ちで見守る。
…………当事者ということも忘れて。
ふわもこな小鳥さんが目の前にいたらどうでもいいことなんて忘れても仕方ないわよね?
そう告げたのは私の婚約者くるくるのわかめ頭がチャームポイントのアルアル・ナシナシとふざけた名をするこの国の第一王子様。卒業パーティーで突然の宣言に会場がざわつく。言われた張本人である私は特にその宣言に驚くことはない。
何せここは前世していた乙女ゲームの世界に酷似しており、ヒロインも存在していたから悪役令嬢に転生した私は覚悟していた。別に死ぬわけではないのでいいかなと軽視していたのもある。
何よりアルアルは友人としては面白いが、結婚相手としては苦労しそうだなと感じていた。決して前世の記憶にあるよくあるライトノベルの悪役令嬢主人公の相手王子がクズというわけではない。
ただただアルアルは他にない王子として頭のおかしい子なのである。いや、髪のことではないけど。
しかし、それはそれとして謎なのは婚約破棄イベントなのにヒロインがアルアルの隣にいないこと。おかしなこととして何故かアルアルがフランスパンを手に持ち、アルアルの頭を巣と勘違いしているのかぴよぴよと鳴く小鳥がいること。
正直わかっていた婚約破棄発言よりも、いないヒロインのことよりも、おかしな頭のアルアルが持つフランスパンよりも、アルアルの頭の上に乗るふわふわそうなぴよぴよと鳴く小鳥が気になる。
さ、触りたい………。
「君には悪いと思っている。だけど、私は見つけてしまったんだ……このフランスパンを!」
「ぴ、ぴよっ」
ああっ!言葉と共にフランスパンを掲げるアルアルが顔を軽くあげてしまったから小鳥がびっくりしてるじゃない!顔を傾けずまっすぐこちらを向きなさいよ!ヒロインがフランスパンでも私は構わないから!
フランスのない乙女ゲームにフランスパンがある不思議とかツッコまないから、とにかく小鳥さんが過ごしやすいようにしなさい。仮にもあなたの頭は今、小鳥さんの巣なのだから……!
「アルアル様!嬉しいですわ!私に一目惚れなんて!」
「?」
「ぴ、ぴぴ!?」
ああああああっ!電波ヒロイン!どこにいたのか知らないけど呼んでもないのに来ないでくださる!?アルアルがそちらを向いたせいで小鳥さんが振り回されたじゃないの!
アルアルは気づいてないの?わざとなの?フランスパンより小鳥さんを気遣いなさいよ!
私はとにかく小鳥さんが気になってハラハラとした気持ちで見守る。
…………当事者ということも忘れて。
ふわもこな小鳥さんが目の前にいたらどうでもいいことなんて忘れても仕方ないわよね?
4
あなたにおすすめの小説
冤罪で婚約破棄したくせに……今さらもう遅いです。
水垣するめ
恋愛
主人公サラ・ゴーマン公爵令嬢は第一王子のマイケル・フェネルと婚約していた。
しかしある日突然、サラはマイケルから婚約破棄される。
マイケルの隣には男爵家のララがくっついていて、「サラに脅された!」とマイケルに訴えていた。
当然冤罪だった。
以前ララに対して「あまり婚約しているマイケルに近づくのはやめたほうがいい」と忠告したのを、ララは「脅された!」と改変していた。
証拠は無い。
しかしマイケルはララの言葉を信じた。
マイケルは学園でサラを罪人として晒しあげる。
そしてサラの言い分を聞かずに一方的に婚約破棄を宣言した。
もちろん、ララの言い分は全て嘘だったため、後に冤罪が発覚することになりマイケルは周囲から非難される……。
婚約破棄を伝えられて居るのは帝国の皇女様ですが…国は大丈夫でしょうか【完結】
繭
恋愛
卒業式の最中、王子が隣国皇帝陛下の娘で有る皇女に婚約破棄を突き付けると言う、前代未聞の所業が行われ阿鼻叫喚の事態に陥り、卒業式どころでは無くなる事から物語は始まる。
果たして王子の国は無事に国を維持できるのか?
そちらがその気なら、こちらもそれなりに。
直野 紀伊路
恋愛
公爵令嬢アレクシアの婚約者・第一王子のヘイリーは、ある日、「子爵令嬢との真実の愛を見つけた!」としてアレクシアに婚約破棄を突き付ける。
それだけならまだ良かったのだが、よりにもよって二人はアレクシアに冤罪をふっかけてきた。
真摯に謝罪するなら潔く身を引こうと思っていたアレクシアだったが、「自分達の愛の為に人を貶めることを厭わないような人達に、遠慮することはないよね♪」と二人を返り討ちにすることにした。
※小説家になろう様で掲載していたお話のリメイクになります。
リメイクですが土台だけ残したフルリメイクなので、もはや別のお話になっております。
※カクヨム様、エブリスタ様でも掲載中。
…ºo。✵…𖧷''☛Thank you ☚″𖧷…✵。oº…
☻2021.04.23 183,747pt/24h☻
★HOTランキング2位
★人気ランキング7位
たくさんの方にお読みいただけてほんと嬉しいです(*^^*)
ありがとうございます!
私を選ばなかったくせに~推しの悪役令嬢になってしまったので、本物以上に悪役らしい振る舞いをして婚約破棄してやりますわ、ザマア~
あさぎかな@コミカライズ決定
恋愛
乙女ゲーム《時の思い出(クロノス・メモリー)》の世界、しかも推しである悪役令嬢ルーシャに転生してしまったクレハ。
「貴方は一度だって私の話に耳を傾けたことがなかった。誤魔化して、逃げて、時より甘い言葉や、贈り物を贈れば満足だと思っていたのでしょう。――どんな時だって、私を選ばなかったくせに」と言って化物になる悪役令嬢ルーシャの未来を変えるため、いちルーシャファンとして、婚約者であり全ての元凶とである第五王子ベルンハルト(放蕩者)に婚約破棄を求めるのだが――?
王子は婚約破棄を泣いて詫びる
tartan321
恋愛
最愛の妹を失った王子は婚約者のキャシーに復讐を企てた。非力な王子ではあったが、仲間の協力を取り付けて、キャシーを王宮から追い出すことに成功する。
目的を達成し安堵した王子の前に突然死んだ妹の霊が現れた。
「お兄さま。キャシー様を3日以内に連れ戻して!」
存亡をかけた戦いの前に王子はただただ無力だった。
王子は妹の言葉を信じ、遥か遠くの村にいるキャシーを訪ねることにした……。
《本編完結》あの人を綺麗さっぱり忘れる方法
本見りん
恋愛
メラニー アイスナー子爵令嬢はある日婚約者ディートマーから『婚約破棄』を言い渡される。
ショックで落ち込み、彼と婚約者として過ごした日々を思い出して涙していた───が。
……あれ? 私ってずっと虐げられてない? 彼からはずっと嫌な目にあった思い出しかないんだけど!?
やっと自分が虐げられていたと気付き目が覚めたメラニー。
しかも両親も昔からディートマーに騙されている為、両親の説得から始めなければならない。
そしてこの王国ではかつて王子がやらかした『婚約破棄騒動』の為に、世間では『婚約破棄、ダメ、絶対』な風潮がある。
自分の思うようにする為に手段を選ばないだろう元婚約者ディートマーから、メラニーは無事自由を勝ち取る事が出来るのだろうか……。
さようなら、婚約者様。これは悪役令嬢の逆襲です。
パリパリかぷちーの
恋愛
舞台は、神の声を重んじる王国。
そこでは“聖女”の存在が政治と信仰を支配していた。
主人公ヴィオラ=エーデルワイスは、公爵令嬢として王太子ユリウスの婚約者という地位にあったが、
ある日、王太子は突如“聖女リュシエンヌ”に心を奪われ、公衆の場でヴィオラとの婚約を破棄する。
だがヴィオラは、泣き叫ぶでもなく、静かに微笑んで言った。
「――お幸せに。では、さようなら」
その言葉と共に、彼女の“悪役令嬢”としての立場は幕を閉じる。
そしてそれが、彼女の逆襲の幕開けだった。
【再公開】作品です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる