婚約破棄よりも私は婚約者の頭が気になります

荷居人(にいと)

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まあそうは願ってもまともな人はまずこの中に入っては来ないわよね。ぴよちゃんだけが救いだわ……ぴよちゃんがいるから逃げられないのも許せるくらいに。

まあとりあえずは問題をひとつずつ解消してぴよちゃんを救出しましょう。でないと邪魔されて中々救出できない気がするもの。

「アルアル、貴方は悪役には向いていませんわ。悪いこと、できないでしょう?」

まずは悪役になりたいと言うアルアルを何とかしましょう。思考回路はおかしくても基本根は真面目だし、悪いことはできない子だから普通に無理だしね。そこは褒めてもいいわ。

「僕だって悪いことはできるよ!」

悪役はしたことを宣言したりしないわ。と言いたいけどそうしたら話が進まなさそうだから聞いてあげた方がよさそうね。

「例えば?」

「前に、昼食前に料理をつまみ食いしたんだ。料理長が内緒ですよって」

つまみ食い……多分、料理長のことだから自分が味見した後、食べたそうにしていたアルアルにも味見させてあげたんでしょうね。何故調理場にいたのかは謎だけど、基本アルアルは色んなところで気配なく現れる子だからツッコむだけ無駄なのは理解してる。

「………他にもおありで?」

「だめって言われたけど、庭の種植え手伝ったんだ」

これには聞き覚えがある。確か、庭師が腰を痛めていて大変そうなところを王子がすることではないと言われながらもアルアルはそれを無視して手伝ったとか。手や服が汚れることも気にせず身分関係なく助けた姿は寧ろ美談として話されている。

なのに本人は悪いことをしたと認識していたとは……。

「……アルアルは………リッパナアクヤクデスネ」

「悪役王子になれた!」

若干棒読みになったけれど、もう本人が喜んでるならいいわよね。

「そうじゃなーい!」

ああ、もう。大声を出さなくても聞こえるのに一々電波ヒロインはうるさい。さっきまで静かだったのに急に目立ちたがるわね。

「ぴよ……」

ほら、小鳥さんまで迷惑そうじゃない。可哀想に。

「アルアル様!私が言いたいのはそうじゃなくて、あの悪役令嬢にいじめられたんですぅ!」

そして言うに事欠いてやはり予想通りの言葉。本来の乙女ゲームのヒロインとは違い、言い方がぶりっ子感極まりなくて腹が立つけど。こんなヒロインだったら乙女ゲーム誰もやってない。

「なんで?」

「え?」

「なんで、ビビッドが君をいじめるの?」

すぐに信じて私を糾弾しないのは嬉しいけど、アルアル?私の名前はビビアンよ……。せめて今日だけは覚えていなさいよ……。

周囲の同情の目が痛い。

「ぴぃ……」

小鳥さんまでそんな目で見ないで!
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