婚約破棄よりも私は婚約者の頭が気になります

荷居人(にいと)

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「ちょっと無視ですかー?酷いですぅ」

「貴女の存在が酷いですぅ」

「な……っ」

「あ」

小鳥さんに癒されていたのにあまりに煩いからつい真似てしまったわ……。でも、電波ヒロインも絶句してるし、自分のぶりっ子がどれだけ痛いか理解できていい機会になっただろうし……私いいことしちゃったわね。悪役令嬢なのに。

これも私の心が前世から清らかなせいかしら?

「あ、ビビアン、忘れてたけど婚約破棄してくれる?」

そして私と電波ヒロインの掛け合いなど目の前にいながら見ていなかったのか、今思い出したとばかりに振り出しに戻るアルアル。相変わらずマイペースな男である。

「それは婚約を白紙に戻すじゃだめなんですか?破棄だと私の今後に響きますので」

「今後に響く?」

「私が結婚できなくなるか、ろくでもない人と生涯共に過ごすことになりますね」

「そうなの!?それは大変だ!誰がビビアンの未来を脅かそうと?僕が助けるよ!」

「はぁ……」

私そんな難しい話した覚えはないのだけど……脅かそうとしたのは貴方よ、アルアル。それにだんだん素がでてきてるじゃない。人前では私と言うように何度も言ったのに……。

まあ私の未来を想ってくれるがために……と言えば聞こえはいいけどその場合の原因がその本人だからやりきれないわ……。

「ぴよ……」

ああ、小鳥さん……あなたはわかってくれる?

「騙されてはいけませんわ!アルアル様!」

電波ヒロイン復活……あー、余計疲れるわぁ……。騙すって何を?確かにアルアルは詐欺をするにはうってつけに見えるけれど、そういう勘は働くのか気がつけば詐欺師を追い詰めてるタイプよ。

まあ本人が知らないままに相手が目的バレてる?と勘違いして勝手に自滅するんだけど。あれは見る分にはとても笑えてくるし、アルアルの唯一尊敬できるところね。

「え!騙す?それは悪いことだよ!誰が誰を騙そうと!?」

それで本人はこれだし……悪い子ではないの。少しばかり思考回路がズレてるだけで。

「ぴぴ……」

ああ、小鳥さんあなただけは私の苦労わかってくれるのね。その気持ちに涙が出そうだわ。

「アルアル様を騙そうとしてるのはそこの悪役令嬢ですわ!」

このクソヒロイン……せめて名前で言いなさいよ!役名じゃなくて!

「いいなぁ、悪役令嬢……かっこいい。なら、僕は悪役王子がいいな。なら、フランスパンは悪役パンだね!」

「え、あの、アルアル様?」

誰か~!ここに悪役希望の攻略対象がいまーす!そのせいで話続かないので小鳥さんだけ回収して退場願えますか~?

………まあ、無理なのはわかっているわ。もう素が出まくってるのはこの際無視するけど、悪役パンってなによ……悪役パンって。

食べられるだけのパンがどうやって悪役になるのよ。アルアル、貴方そのフランスパンがどう見えてるわけ?

『え?フランスパンに見えてる』

……なんて言うアルアルが思い浮かんだわ。彼なら言うわね。余計頭が痛くなるからこれ以上は考えないようにしましょう。ああ、まともな人と会話したい。
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