婚約破棄よりも私は婚約者の頭が気になります

荷居人(にいと)

文字の大きさ
6 / 12

6

しおりを挟む
「陛下、王妃様、助かりました。ありがとうございます」

とりあえず鳥の存在が気にはなるけど呼び出したからには、お礼を言わなければと気を取り直す。

「お礼なんていいのよ~!」

「寧ろ毎日でも呼んで犬扱いしてくれ!」

「おほほ……」

毎日はちょっと……というか陛下と王妃様を私が従えるのには抵抗ありすぎて……。なんでこうなったのかはアルアルと婚約してから始まった。

『アルアル、何をしているのです?』

それは婚約が成立してから1年は過ぎた頃。

『アリ、数えてる。今666匹目』

その日、一度座り込んでから、いくら呼んでもアルアルからの返事がなくどうしていいかわからないと困っていた侍女や護衛たちを見て、私が見かねて声をかけることに。

婚約前から仲良くしていた私たちだからだろうか?どんなに集中していても私が声をかければアルアルは何かしら答えてくれていた。

『そうですか……。そろそろ皆さんが心配してますからやめましょう』

『心配?』

『アルアルの体調がわるいんじゃないかって皆さんが心配してるんですよ』

『声かけてくれたらよかったのに……』

『声をかけたと言っていましたよ』

『気づかなかった……』

まあそんな感じでアルアルは昔からマイペース。でも基本穏やかで怒ることがあるのか?ってくらい相手が誰であろうと同じ態度なので身分差別のない王子として人気ではある。

って話が脱線したわね。とりあえず、その場面をどこからか陛下と王妃様が見ていたようで翌日呼び出されたの。

『あの子、自分の世界に入ると私たちが呼んでもだめなのよ』

『だが、ビビアン嬢にはきちんと返事ができる。つまりはビビアン嬢には何かしらアルアルの意識を呼び出す何かがあるのだろうと思う』

要はアルアルは元々集中力が人一倍あって一度何かに集中すると集中が途切れて寝るまでそれ以外に意識がいくことなく、誰の声も聞こえなくなることを陛下と王妃様は言いたいようだ。

そしてその集中力に打ち勝つのが私の中にある何かだと二人は言う。バトル漫画じゃないんだからとツッコミたくなったけど、我慢した私はえらい。

『それを知るために私たち、ビビアン嬢の犬になろうと思ったの』

『い、ぬ……?』

『ビビアン嬢の秘めたる力を知るにはまず呼ばれる側になり、知ればよいと二人で相談してな』

『あ、犬になるならビビアン様とお呼びするべきね』

『いや、あの……おことわ……』

『王命だから拒否権はないぞ?』

こうして私はその日国家権力を手にすることとなった次第である。この国の王族の思考回路はやっぱりおかしいと考えながら。その場にいた宰相さんだけが同情するような眼差しだったのは今でも覚えている。
しおりを挟む
感想 14

あなたにおすすめの小説

冤罪で婚約破棄したくせに……今さらもう遅いです。

水垣するめ
恋愛
主人公サラ・ゴーマン公爵令嬢は第一王子のマイケル・フェネルと婚約していた。 しかしある日突然、サラはマイケルから婚約破棄される。 マイケルの隣には男爵家のララがくっついていて、「サラに脅された!」とマイケルに訴えていた。 当然冤罪だった。 以前ララに対して「あまり婚約しているマイケルに近づくのはやめたほうがいい」と忠告したのを、ララは「脅された!」と改変していた。 証拠は無い。 しかしマイケルはララの言葉を信じた。 マイケルは学園でサラを罪人として晒しあげる。 そしてサラの言い分を聞かずに一方的に婚約破棄を宣言した。 もちろん、ララの言い分は全て嘘だったため、後に冤罪が発覚することになりマイケルは周囲から非難される……。

婚約破棄を伝えられて居るのは帝国の皇女様ですが…国は大丈夫でしょうか【完結】

恋愛
卒業式の最中、王子が隣国皇帝陛下の娘で有る皇女に婚約破棄を突き付けると言う、前代未聞の所業が行われ阿鼻叫喚の事態に陥り、卒業式どころでは無くなる事から物語は始まる。 果たして王子の国は無事に国を維持できるのか?

そちらがその気なら、こちらもそれなりに。

直野 紀伊路
恋愛
公爵令嬢アレクシアの婚約者・第一王子のヘイリーは、ある日、「子爵令嬢との真実の愛を見つけた!」としてアレクシアに婚約破棄を突き付ける。 それだけならまだ良かったのだが、よりにもよって二人はアレクシアに冤罪をふっかけてきた。 真摯に謝罪するなら潔く身を引こうと思っていたアレクシアだったが、「自分達の愛の為に人を貶めることを厭わないような人達に、遠慮することはないよね♪」と二人を返り討ちにすることにした。 ※小説家になろう様で掲載していたお話のリメイクになります。 リメイクですが土台だけ残したフルリメイクなので、もはや別のお話になっております。 ※カクヨム様、エブリスタ様でも掲載中。 …ºo。✵…𖧷''☛Thank you ☚″𖧷…✵。oº… ☻2021.04.23 183,747pt/24h☻ ★HOTランキング2位 ★人気ランキング7位 たくさんの方にお読みいただけてほんと嬉しいです(*^^*) ありがとうございます!

嘘からこうして婚約破棄は成された

桜梅花 空木
恋愛
自分だったらこうするなぁと。

私を選ばなかったくせに~推しの悪役令嬢になってしまったので、本物以上に悪役らしい振る舞いをして婚約破棄してやりますわ、ザマア~

あさぎかな@コミカライズ決定
恋愛
乙女ゲーム《時の思い出(クロノス・メモリー)》の世界、しかも推しである悪役令嬢ルーシャに転生してしまったクレハ。 「貴方は一度だって私の話に耳を傾けたことがなかった。誤魔化して、逃げて、時より甘い言葉や、贈り物を贈れば満足だと思っていたのでしょう。――どんな時だって、私を選ばなかったくせに」と言って化物になる悪役令嬢ルーシャの未来を変えるため、いちルーシャファンとして、婚約者であり全ての元凶とである第五王子ベルンハルト(放蕩者)に婚約破棄を求めるのだが――?

さようなら、婚約者様。これは悪役令嬢の逆襲です。

パリパリかぷちーの
恋愛
舞台は、神の声を重んじる王国。 そこでは“聖女”の存在が政治と信仰を支配していた。 主人公ヴィオラ=エーデルワイスは、公爵令嬢として王太子ユリウスの婚約者という地位にあったが、 ある日、王太子は突如“聖女リュシエンヌ”に心を奪われ、公衆の場でヴィオラとの婚約を破棄する。 だがヴィオラは、泣き叫ぶでもなく、静かに微笑んで言った。 「――お幸せに。では、さようなら」 その言葉と共に、彼女の“悪役令嬢”としての立場は幕を閉じる。 そしてそれが、彼女の逆襲の幕開けだった。 【再公開】作品です。

王子は婚約破棄を泣いて詫びる

tartan321
恋愛
最愛の妹を失った王子は婚約者のキャシーに復讐を企てた。非力な王子ではあったが、仲間の協力を取り付けて、キャシーを王宮から追い出すことに成功する。 目的を達成し安堵した王子の前に突然死んだ妹の霊が現れた。 「お兄さま。キャシー様を3日以内に連れ戻して!」 存亡をかけた戦いの前に王子はただただ無力だった。  王子は妹の言葉を信じ、遥か遠くの村にいるキャシーを訪ねることにした……。

婚約破棄は踊り続ける

お好み焼き
恋愛
聖女が現れたことによりルベデルカ公爵令嬢はルーベルバッハ王太子殿下との婚約を白紙にされた。だがその半年後、ルーベルバッハが訪れてきてこう言った。 「聖女は王太子妃じゃなく神の花嫁となる道を選んだよ。頼むから結婚しておくれよ」

処理中です...