婚約破棄よりも私は婚約者の頭が気になります

荷居人(にいと)

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「父上、母上、ぼ……私はビビランと婚約破棄してフランスパンと婚約します」

回想に浸っていればはっとしたように告げるアルアル。名前惜しいなとか、婚約破棄じゃなく白紙に戻すよう説得は難しいかぁなんてことを思う。

「フランスパン……?そのパンか?」

「はい」

「アルアル……、パンと結婚はできないぞ?」

ああ、陛下が呆れたようにあっさり言われてしまった。そりゃそうである。

「? 結婚はビビアンとしますよ」

あ、やっと名前を………ん?

「婚約破棄をするのに結婚をする……のか?」

「私、よくわからなくなってきたわ……」

王妃様、私も同感です。もはやアルアルの言葉に周囲すらもハテナを浮かべているように思える。まさかと思うけど、アルアルは婚約と結婚を別物と考えてないかしら?

「あー……アルアル?婚約破棄をしたら結婚しないという意味になるのよ?」

「え……」

まさかのまさか、アルアルがそんなと顔を青ざめさせていた。なるほど、私と離れる気はなかったようだ。なんかおかしいとは感じていたけど。

「婚約は結婚の約束みたいなものだから……それを破棄するってことはそうなるの」

まあ、私はどっちでもいいけど。

「は、破棄しない!破棄しないからどこにも行かないで!」

「え、ええ」

あまりに必死に叫んだかと思うと急に抱き締められて動揺する。そんなに必死になること?と思いながら。気のせいか周囲もほっとした様子だ。

「何事かと思ったぞ」

「あれだけ毎日ビビアン様の話をしながらおかしいと思ったわ」

毎日?え、毎日私について?いや、確かにほぼ毎日私たちは一緒にいたけど……他に話すことあったでしょう?いつもの日常を過ごしてただけなんだから。

「父上は嘘つきです」

「え」

「婚約はずっと一緒にいる約束、結婚はずっと一緒にいる契約だって言ってました!」

いや、あながち間違ってないと思うわよ?ほら、陛下が何言われているのか理解できてないじゃない。

「つまりアルアルはフランスパンとずっと一緒にいるために婚約し、私とずっと一緒にいる約束から契約に変えたいから婚約をなくして結婚にしたかったと?」

「ちょっと違う。フランスパンをずっと食べたかったから婚約したかったんだ。ビビアンのことはそうだよ?約束だと破られたらそれまでだけど、契約なら簡単には破られないからそっちがいいなって」

「でも私には悪いけどっておっしゃってましたよね?」

てっきり婚約破棄について悪いと認識してるとばかり思ってたけど、そう聞いていると違うように思えてきた。

「それは……契約で縛っちゃうから窮屈にさせるだろうけど、私はビビアンなしでは生きられないから確実なものにしたかったんだ。例えビビアンが嫌がっても」

「そ、そう……ですか」

な、何かしら……物凄い告白というかプロポーズをされているような……。顔が熱いわ。き、気温があがったのかしらね?おほほ……ほ……ほ………ほぉ……。
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