秒速恋愛~占いが正しかったと知ってももう遅い~

荷居人(にいと)

文字の大きさ
1 / 2

1

しおりを挟む
突然だが、みなさんは占いを信じたことがあるだろうか?

私は信じない。だけどまあ、占い師も立派な仕事だから、占い師を完全否定するわけじゃない。

だけど、いや、ありえないだろと思うことを連発されたらどんな占いも信じられないのが普通だと思う。

何故そんな話をするのか?私は初めて占いを信じればよかったとそう感じた出来事があったからだ。

それは仕事の帰り道。明らかに占い師っぽい格好をして、椅子や机もなく、ただ水晶を持って立つおじいさんに声をかけられたことが始まりだ。

「お嬢さん!占いに興味はないかね?」

「いえ、別に」

鴨だと思われでもしたのかとすぐ断ったものの、そのおじいさんは水晶を手に追いかけてきた。何故私なんだと思いながらも足を止めれば楽しげに笑うおじいさん。

「まあまあ今お試し無料だからやっておくれよ。わし、外したことないからのぉ」

「わかったわよ……占うなら早くして」

妙に自信満々で言って来る上に、無料。それに、このまま無視したら家までついてくるような気がして、それならそれで警察を呼んでもよかったが、早く帰って休みたい私は諦めて占いをすることにした。

「ふぉっふぉっふぉっお主は変わったオーラをもっとるで、気になったのじゃよ」

「はぁ……そうですか」

なんだ、オーラって。と思わなくはなかったが、こういうのは下手に聞くと余計に長引くのは理解しているので、適当に相槌をうつ。

「さてさて、君にはどんな未来が…………ほええええ!?」

「な、なんですか………」

こんな人のいる場所でおじいさんが叫ぶものだから、ただでさえ視線が痛いのに、余計に視線を集める結果となる。そのせいか、この数分で物凄く疲れた。

「お主、わしに感謝するがええぞ。ここでわしが引き留めなかったら家に隕石が直撃して死んどったな」

「隕石……」

ありえない。普通に考えてありえない。ありそうなことを占いと言っていうのかと思えば現実的に中々ありえないことをいうおじいさんに一体何がしたいのかと呆れる。

「信じられんのも無理はない。お主の家だけに小さな隕石が落ちて跡形もなくなっておるからな」

しかも、被害は私の家だけとかどんな確率なのか。ふざけてるようにしか思えない。

「もうどうでもいいんで帰っても………」

「おおっ!」

「次は何よ………?」

明らかに聞く気のないおじいさんがまたもや驚くように叫ぶ。

「家が隕石で跡形もなくなって呆然とするお主に、白馬の王子様が来てプロポーズするぞ」

「いや、白馬の王子って」

ここは都会だよ?王子様も意味わからないけど、どこの誰が馬に乗って都会を走るというのか。

「それを君が断ったあと、次は石油王からプロポーズをされる」

「いや、いるはずないでしょう?」

プロポーズを二回もされる日なんかあるはずがない。しかも、王子もだけど石油王も出会うことすらまずありえないのに。

「石油王は散歩してたら君に一目惚れらしいぞ」

「いや、散歩って」

石油王が散歩……想像すらつかないし。

「まあ年が年だからそれも断った後、16歳の子にプロポーズされる」

「いやいやいやいや」

私を犯罪者にしたいのか。すでに婚期逃した20代後半だぞ!

「君は断れずに付き合うことになるだろう」

「なんで!?」

ありえない連続話に逆に先が気になる。何故16歳と付き合うことになるわけ……?

「そこは後にわかる」

「いや、わかんないけど!?」

気になるところは教えない辺りやはり作り話なのだろう。それでもなんか知れないとなるともやもや………。

「しかも付き合った翌日結婚ぞ」

「早すぎか?」

もうツッコミ係よ?私

「初夜でベッドインじゃ」

「セクハラセクハラ」

展開早すぎだよ。セクハラだよ。意味わかんないよ。その16歳こえぇよ。

「しかも束縛激しいからファイトじゃぞ!じゃ、おつかれじゃ!」

「えー………」

マイペースですか?もう言いたいことだけ言って去ったおじいさん。きっとこれから占い師に会ってもあれほど適当な占いはないだろう。そんなことを思いながらも帰宅すれば………

「うそん………」

私の家だけが消え去り、人だかりが。

「ここが隕石の落ちた場所です!現在こちらは……」

と近づけばそう話しているアナウンス。隕石………隕石!?

まさかの一番ありえない占いが当たったことに、当然、私は驚きを隠せなかった。たまたまというには当たりすぎていて………というか私どこで寝泊まりすれば……。

そんな時だった白馬に乗って、頭に王冠をつけたイケメン不審者が現れたのは。





しおりを挟む
感想 57

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢の去った後、残された物は

たぬまる
恋愛
公爵令嬢シルビアが誕生パーティーで断罪され追放される。 シルビアは喜び去って行き 残された者達に不幸が降り注ぐ 気分転換に短編を書いてみました。

婚約破棄を申し込まれたので、ちょっと仕返ししてみることにしました。

夢草 蝶
恋愛
 婚約破棄を申し込まれた令嬢・サトレア。  しかし、その理由とその時の婚約者の物言いに腹が立ったので、ちょっと仕返ししてみることにした。

婚約破棄を伝えられて居るのは帝国の皇女様ですが…国は大丈夫でしょうか【完結】

恋愛
卒業式の最中、王子が隣国皇帝陛下の娘で有る皇女に婚約破棄を突き付けると言う、前代未聞の所業が行われ阿鼻叫喚の事態に陥り、卒業式どころでは無くなる事から物語は始まる。 果たして王子の国は無事に国を維持できるのか?

ある国の王の後悔

黒木メイ
恋愛
ある国の王は後悔していた。 私は彼女を最後まで信じきれなかった。私は彼女を守れなかった。 小説家になろうに過去(2018)投稿した短編。 カクヨムにも掲載中。

行き場を失った恋の終わらせ方

当麻月菜
恋愛
「君との婚約を白紙に戻してほしい」  自分の全てだったアイザックから別れを切り出されたエステルは、どうしてもこの恋を終わらすことができなかった。  避け続ける彼を求めて、復縁を願って、あの日聞けなかった答えを得るために、エステルは王城の夜会に出席する。    しかしやっと再会できた、そこには見たくない現実が待っていて……  恋の終わりを見届ける貴族青年と、行き場を失った恋の中をさ迷う令嬢の終わりと始まりの物語。 ※他のサイトにも重複投稿しています。

さようなら、たったひとつの

あんど もあ
ファンタジー
メアリは、10年間婚約したディーゴから婚約解消される。 大人しく身を引いたメアリだが、ディーゴは翌日から寝込んでしまい…。

悪役令嬢と言われ冤罪で追放されたけど、実力でざまぁしてしまった。

三谷朱花
恋愛
レナ・フルサールは元公爵令嬢。何もしていないはずなのに、気が付けば悪役令嬢と呼ばれ、公爵家を追放されるはめに。それまで高スペックと魔力の強さから王太子妃として望まれたはずなのに、スペックも低い魔力もほとんどないマリアンヌ・ゴッセ男爵令嬢が、王太子妃になることに。 何度も断罪を回避しようとしたのに! では、こんな国など出ていきます!

ジェリー・ベケットは愛を信じられない

砂臥 環
恋愛
ベケット子爵家の娘ジェリーは、父が再婚してから離れに追いやられた。 母をとても愛し大切にしていた父の裏切りを知り、ジェリーは愛を信じられなくなっていた。 それを察し、まだ子供ながらに『君を守る』と誓い、『信じてほしい』と様々な努力してくれた婚約者モーガンも、学園に入ると段々とジェリーを避けらるようになっていく。 しかも、義妹マドリンが入学すると彼女と仲良くするようになってしまった。 だが、一番辛い時に支え、努力してくれる彼を信じようと決めたジェリーは、なにも言えず、なにも聞けずにいた。 学園でジェリーは優秀だったが『氷の姫君』というふたつ名を付けられる程、他人と一線を引いており、誰にも悩みは吐露できなかった。 そんな時、仕事上のパートナーを探す男子生徒、ウォーレンと親しくなる。 ※世界観はゆるゆる ※ざまぁはちょっぴり ※他サイトにも掲載

処理中です...