(タイトル変更予定あり)前世悪役令嬢だった私が前世の婚約者に溺愛されています

荷居人(にいと)

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2章悪役令嬢の転生先

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結局あれからよくよく聞くとダーリンは私の補佐をしてくれるとのこと。実際縦読みが読みづらいとか特殊なサングラスをかけているとはいえ、視力の矯正も限界で色の区別が苦手な私には道を歩くときの危険性は通常の人より高い。

それを父が心配して同じ年で学園入学できる従者を探していたとか。授業中の補佐範囲の世話などの許可もとったらしいけど、特別待遇だと恨まれないかより心配になる。助かりはするけど。

理由だけ聞けばお礼だけ言って早く仕事をしに行ってくださいと父をすぐ追い出して従者と向き直った。

何はともあれとりあえず、理由を知れば従者を受け入れるのは構わない。何故女の子じゃないかは父のことだから聞いたところで運命を感じた以外口にしないとわかっている。父の運命を感じたはよくあること。それよりもこのダーリンに相談すべきことがひとつある。

「名前の呼び方を変えていいかしら?」

「是非」

最優先事項の問いに真顔の即答が返ってきた。父は論外だけれど、これは呼ぶ方も呼ばれる方も恥ずかしい名前だと思う。人の名前に文句を言うのはいかがとは思うけど、即答する辺り本人も嫌がっているのがわかる。

彼の両親たちは一体何を考えてそんな名前にしたのか。まあ今考えても仕方がないけれど。

「ダーリンだからダリーでどうかしら?」

「とてもだるそうなお名前ですね」

正直一番まともなあだ名だと思ったのだけど言われてみるとだるそうな名前かもしれない。

「じゃあ、リンちゃんとか………」

「ハニーお嬢様には僕が女に見えると?」

ふざけたらカウンターが返ってきたわ。この従者中々やるようね。

「冗談よ、だからその呼び名はやめて。ダーンとか?」

「大きな音を鳴らしたかのような名前ですね」

この従者、ただ生意気なだけな気がしてきたわ。

「じゃあ貴方が考えて」

「お嬢様はお優しいですね。文句ばかりすみません………最初のダリィでいいですよ」

「よりだるそうなあだ名になってないかしら」

「気のせいです」

そういうわけでダーリンからダリィと呼ぶことになった従者は楽しそうに私を見て笑う。その目は決して私の見た目を笑うそれではない。

最初私を見た時、不思議そうに私を見ていたけど気味が悪いとかそう思われてはなかったようでほっとする。この容姿じゃ珍しくて見てしまうのは仕方ないことだろう。

日に当たりすぎるのがよくないためあまり町には出ないけど出る度帽子からはみ出る白い髪への視線が怖くて仕方ない。この赤い瞳も知られたらより嫌な目で見られるんじゃないかと不安は大きい。

誰もが私を蔑むように………違う。これは、私に向けての目じゃ、いや、私の………?

「お嬢様!」

「! あ、ご、ごめんなさい。少しぼーっとして………」

意味もなく混乱した自分に首を傾げる。ダリィに声をかけられなかったら益々混乱していた。何で?と言われたら答えられないけど。私は何を思って混乱したのだろう?

「体調が優れないようでしたら医師を呼びますが」

「いえ、大丈夫。でも、少し休むわ」

「かしこまりました」

よくわからないことばかりが頭の中を駆け巡るようでひとりで解決できそうにもないのに相談ひとつ誰にもできそうにない。言えばきっと少なくとも父も母も乗ってくれるだろうに何故私は言えずにいるんだろう?

『私はずっとひとり、大切な人も物もいらない』

どこからともなくそんな言葉が聞こえた気がした。
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