92 / 109
5章悪役令嬢の記憶の鍵
1
しおりを挟む
保健室での出来事はダリィの一言で解散となった。
「お話したいならお嬢様が調子を取り戻してからでお願いします」
相手が誰だろうと関係ないとばかりに今まで関わりのない人物との会話に疲れを見せてしまったのをダリィが気づいてくれたのか生徒会長との会話を中断させてくれた。
特に双子のお二人とは起きた時は心配するように近寄ってきたがそれから何も話してないし、自己紹介すらしていないわけだけど………双子の王子様に関してはちらりと見る度に心がざわめいた。逃げたいような、何か言いたいようなよくわからないざわめき。
今日は帰った方がいいとこれからお世話になるだろうハッケン医師に名前だけ聞いてダリィに支えられながら学園で特に何もすることなく来たときの装備をして帰ることとなった。
「ハッピーニ!」
「あ、お母様」
屋敷に着けば待ち構えていたかのように母が厳しい顔つきで私を見て名を呼ぶ。
「学園で倒れたと聞きましたよ。全く何をしているのですか!体調管理にはあれほど気を付けろと!」
「すみません、お母様………」
厳しく叱る母の目付きはそれだけで怖く謝るしかない。でも、みんなが知っている母の素直じゃない不器用さを。だからこそダリィも何も言わない。
「学園なんて無理に行かなくていいのです!勉強は屋敷でもできるのですから!け、決して貴女を心配したわけじゃありませんからね?私の娘のあまりみっともない姿を他人に見せたくないだけです!」
わざわざ心配していないという辺り心がほっこりとする。その部分だけ頬を赤くしながら目付きを和らげる母は私が心配で仕方ないといったのが伝わってくるのだから。
学園のことだって私の身を案じてくれているからこその言い分。でも決して行くなとは言わない。そこは私の意思を優先してくれているのだ。
いつしか誰かが母をツンデレと言っていたのを思い出す。厳しい態度でツンツンしながら時たまわざわざ口を出す必要のないところで素直に言えませんとばかりに頬を赤らめて喋る姿を。
父は母と正反対で素直すぎて愛も恥ずかしがることなく伝えるそれに、素直じゃない母を困惑させる。人前で何を!とばかりに父をそれこそ顔を真っ赤にしながら叱る母は使用人たちの前ではよくあること。
それでも最後には
『…………まあ、そんな貴方が嫌いなわけではないですけどっ』
母の最大の愛の言葉が必ず言われる。父はそれが聞きたいがためにほぼ毎日時間あれば母に愛を大声で叫ぶのだとか。
「ハッピーニ、聞いているのですか!」
「あ、すみません、ぼーっとしてました」
母の叱る声にはっとすればとたん母の顔がより目付きが強張り怖くなる。
「医者よ!すぐ呼びなさい!全く、無理に私の話など聞く必要もないのに世話のかかる子ですね!」
現に自分のせいだという母が止める暇なく医者を呼ぶよう近くの使用人に指示をする。父と似たようなところがある母はきっと大丈夫だと言っても無駄だろう。
ダリィにどうしようという視線を向けるも、ダリィもまた心配そうにこちらを見るのだから私の周りは心配性だなと思わずくすりと笑ってしまった。
「お話したいならお嬢様が調子を取り戻してからでお願いします」
相手が誰だろうと関係ないとばかりに今まで関わりのない人物との会話に疲れを見せてしまったのをダリィが気づいてくれたのか生徒会長との会話を中断させてくれた。
特に双子のお二人とは起きた時は心配するように近寄ってきたがそれから何も話してないし、自己紹介すらしていないわけだけど………双子の王子様に関してはちらりと見る度に心がざわめいた。逃げたいような、何か言いたいようなよくわからないざわめき。
今日は帰った方がいいとこれからお世話になるだろうハッケン医師に名前だけ聞いてダリィに支えられながら学園で特に何もすることなく来たときの装備をして帰ることとなった。
「ハッピーニ!」
「あ、お母様」
屋敷に着けば待ち構えていたかのように母が厳しい顔つきで私を見て名を呼ぶ。
「学園で倒れたと聞きましたよ。全く何をしているのですか!体調管理にはあれほど気を付けろと!」
「すみません、お母様………」
厳しく叱る母の目付きはそれだけで怖く謝るしかない。でも、みんなが知っている母の素直じゃない不器用さを。だからこそダリィも何も言わない。
「学園なんて無理に行かなくていいのです!勉強は屋敷でもできるのですから!け、決して貴女を心配したわけじゃありませんからね?私の娘のあまりみっともない姿を他人に見せたくないだけです!」
わざわざ心配していないという辺り心がほっこりとする。その部分だけ頬を赤くしながら目付きを和らげる母は私が心配で仕方ないといったのが伝わってくるのだから。
学園のことだって私の身を案じてくれているからこその言い分。でも決して行くなとは言わない。そこは私の意思を優先してくれているのだ。
いつしか誰かが母をツンデレと言っていたのを思い出す。厳しい態度でツンツンしながら時たまわざわざ口を出す必要のないところで素直に言えませんとばかりに頬を赤らめて喋る姿を。
父は母と正反対で素直すぎて愛も恥ずかしがることなく伝えるそれに、素直じゃない母を困惑させる。人前で何を!とばかりに父をそれこそ顔を真っ赤にしながら叱る母は使用人たちの前ではよくあること。
それでも最後には
『…………まあ、そんな貴方が嫌いなわけではないですけどっ』
母の最大の愛の言葉が必ず言われる。父はそれが聞きたいがためにほぼ毎日時間あれば母に愛を大声で叫ぶのだとか。
「ハッピーニ、聞いているのですか!」
「あ、すみません、ぼーっとしてました」
母の叱る声にはっとすればとたん母の顔がより目付きが強張り怖くなる。
「医者よ!すぐ呼びなさい!全く、無理に私の話など聞く必要もないのに世話のかかる子ですね!」
現に自分のせいだという母が止める暇なく医者を呼ぶよう近くの使用人に指示をする。父と似たようなところがある母はきっと大丈夫だと言っても無駄だろう。
ダリィにどうしようという視線を向けるも、ダリィもまた心配そうにこちらを見るのだから私の周りは心配性だなと思わずくすりと笑ってしまった。
0
あなたにおすすめの小説
ヒロインしか愛さないはずの公爵様が、なぜか悪女の私を手放さない
魚谷
恋愛
伯爵令嬢イザベラは多くの男性と浮名を流す悪女。
そんな彼女に公爵家当主のジークベルトとの縁談が持ち上がった。
ジークベルトと対面した瞬間、前世の記憶がよみがえり、この世界が乙女ゲームであることを自覚する。
イザベラは、主要攻略キャラのジークベルトの裏の顔を知ってしまったがために、冒頭で殺されてしまうモブキャラ。
ゲーム知識を頼りに、どうにか冒頭死を回避したイザベラは最弱魔法と言われる付与魔法と前世の知識を頼りに便利グッズを発明し、離婚にそなえて資金を確保する。
いよいよジークベルトが、乙女ゲームのヒロインと出会う。
離婚を切り出されることを待っていたイザベラだったが、ジークベルトは平然としていて。
「どうして俺がお前以外の女を愛さなければならないんだ?」
予想外の溺愛が始まってしまう!
(世界の平和のためにも)ヒロインに惚れてください、公爵様!!
王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません
きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」
「正直なところ、不安を感じている」
久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー
激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。
アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。
第2幕、連載開始しました!
お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。
以下、1章のあらすじです。
アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。
表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。
常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。
それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。
サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。
しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。
盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。
アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?
悪役令嬢が美形すぎるせいで話が進まない
陽炎氷柱
恋愛
「傾国の美女になってしまったんだが」
デブス系悪役令嬢に生まれた私は、とにかく美しい悪の華になろうとがんばった。賢くて美しい令嬢なら、だとえ断罪されてもまだ未来がある。
そう思って、前世の知識を活用してダイエットに励んだのだが。
いつの間にかパトロンが大量発生していた。
ところでヒロインさん、そんなにハンカチを強く嚙んだら歯並びが悪くなりますよ?
好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】
皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」
「っ――――!!」
「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」
クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。
******
・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。
最愛の番に殺された獣王妃
望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。
彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。
手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。
聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。
哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて――
突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……?
「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」
謎の人物の言葉に、私が選択したのは――
【完結済】私、地味モブなので。~転生したらなぜか最推し攻略対象の婚約者になってしまいました~
降魔 鬼灯
恋愛
マーガレット・モルガンは、ただの地味なモブだ。前世の最推しであるシルビア様の婚約者を選ぶパーティーに参加してシルビア様に会った事で前世の記憶を思い出す。 前世、人生の全てを捧げた最推し様は尊いけれど、現実に存在する最推しは…。 ヒロインちゃん登場まで三年。早く私を救ってください。
悪役令嬢ですが、当て馬なんて奉仕活動はいたしませんので、どうぞあしからず!
たぬきち25番
恋愛
気が付くと私は、ゲームの中の悪役令嬢フォルトナに転生していた。自分は、婚約者のルジェク王子殿下と、ヒロインのクレアを邪魔する悪役令嬢。そして、ふと気が付いた。私は今、強大な権力と、惚れ惚れするほどの美貌と身体、そして、かなり出来の良い頭を持っていた。王子も確かにカッコイイけど、この世界には他にもカッコイイ男性はいる、王子はヒロインにお任せします。え? 当て馬がいないと物語が進まない? ごめんなさい、王子殿下、私、自分のことを優先させて頂きまぁ~す♡
※マルチエンディングです!!
コルネリウス(兄)&ルジェク(王子)好きなエンディングをお迎えください m(_ _)m
2024.11.14アイク(誰?)ルートをスタートいたしました。
楽しんで頂けると幸いです。
※他サイト様にも掲載中です
疲れきった退職前女教師がある日突然、異世界のどうしようもない貴族令嬢に転生。こっちの世界でも子供たちの幸せは第一優先です!
ミミリン
恋愛
小学校教師として長年勤めた独身の皐月(さつき)。
退職間近で突然異世界に転生してしまった。転生先では醜いどうしようもない貴族令嬢リリア・アルバになっていた!
私を陥れようとする兄から逃れ、
不器用な大人たちに助けられ、少しずつ現世とのギャップを埋め合わせる。
逃れた先で出会った訳ありの美青年は何かとからかってくるけど、気がついたら成長して私を支えてくれる大切な男性になっていた。こ、これは恋?
異世界で繰り広げられるそれぞれの奮闘ストーリー。
この世界で新たに自分の人生を切り開けるか!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる