(タイトル変更予定あり)前世悪役令嬢だった私が前世の婚約者に溺愛されています

荷居人(にいと)

文字の大きさ
93 / 109
5章悪役令嬢の記憶の鍵

2

しおりを挟む
「さっきぶりというべきですかね」

まさかすぐにハッケン先生を呼ぶことになるとは思わなかった。診察をしてもらうものの、ただぼーっと思考していたに過ぎないので問題があるはずもない。

「特に変わった様子はありませんね」

ハッケン先生からそうだろうと思った通りの返事が返ってくる。

「何ともないのですね?」

「はい」

「何か見落としでもありましたら………」

なんだろう、どこかで見たような光景だ。

「お母様、私は大丈夫ですから」

「べ、別に貴女の心配したわけではありませんからね?ただ、私騙されるのが嫌なのでハッケン先生がヤブ医者じゃないか見極めていただけでしてよ!そうだわ!他の医師にも診てもらって………」

「お母様、本当に大丈夫ですしハッケン先生に失礼ですわ」

それだけ私を心配してくれる気持ちは嬉しいのだけど、母はどうにも過剰的になることが多々ある。

「お嬢様、私も心配です。この者はどうにも信用できません」

「ダリィ!?」

まさかダリィがそんなことを言うとは思わなかった。ハッケン先生を見れば困ったような驚いたようなどうしていいかわからない表情だ。

「何故そんなに疑われるのかはわかりませんが、私はこれでも医師としての経歴はきちんとあります。それでは証明になりませんか?伯爵家に信用がないとなると私も今後医師を続けるのが難しくなるやもしれません」

「そんなつもりはなかったのだけれど、そうかもしれませんわね。だけど私もダーリンもハッピーニが心配なだけなのです。ひとりの医師だけを信用できないのですよ、私たちは」

母の言葉に驚きを覚える。何を思ったのか、無意識なのか母から素直に私を心配している言葉が口に出ていたのだから。それとまさかダリィの気持ちまで代弁するとも思わなかった。

それにしても最後の言葉に重みを感じたのは気のせいだろうか?私たちとはダリィと母のこと?でも母は、ダリィのことがわかるとばかりに言えるくらいの関わりがあっただろうか?

父が本当に拾ってきたかはともかく、ダリィがこのサセル伯爵家に来てからはほとんど私といたし、母と会話するところはそう見ていないだけになんだか不思議さを感じた。

「そうですか………。ですが確かに私の知らない病というものが絶対にないとは言えませんし、ハッピーニ嬢が負担にならない程度なら他の医師に見せるのもいいでしょう。ただ、私は何故貴方にそこまで嫌われているのか聞いても?」

最後の問いかけをする相手はダリィ。ハッケン先生の視線がダリィをじっと見る。ダリィの様子を見れば、笑みひとつ浮かべることなくハッケン先生に冷たい視線を投げ掛けていた。

こんなダリィ初めてで、ハッケン先生が何かダリィにしたのだろうか?そんなことを思う。だが、ダリィが話す気がないと思ったのだろうハッケン先生はどうしたものかと困った表情を浮かべながらその日は結局帰っていった。

その後また母が呼んだ別の医師に診てもらったのは言うまでもない。そこでようやく母とダリィは安心したかのように表情を緩ませたのだった。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

物語のキーポイント、ダリィがようやく始動。皆さん、先が読めますか?さすがに答えは言いませんが、皆さんの想像聞くの楽しいです。
by作者
しおりを挟む
感想 225

あなたにおすすめの小説

好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】

皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」 「っ――――!!」 「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」 クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。 ****** ・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。

ヒロインしか愛さないはずの公爵様が、なぜか悪女の私を手放さない

魚谷
恋愛
伯爵令嬢イザベラは多くの男性と浮名を流す悪女。 そんな彼女に公爵家当主のジークベルトとの縁談が持ち上がった。 ジークベルトと対面した瞬間、前世の記憶がよみがえり、この世界が乙女ゲームであることを自覚する。 イザベラは、主要攻略キャラのジークベルトの裏の顔を知ってしまったがために、冒頭で殺されてしまうモブキャラ。 ゲーム知識を頼りに、どうにか冒頭死を回避したイザベラは最弱魔法と言われる付与魔法と前世の知識を頼りに便利グッズを発明し、離婚にそなえて資金を確保する。 いよいよジークベルトが、乙女ゲームのヒロインと出会う。 離婚を切り出されることを待っていたイザベラだったが、ジークベルトは平然としていて。 「どうして俺がお前以外の女を愛さなければならないんだ?」 予想外の溺愛が始まってしまう! (世界の平和のためにも)ヒロインに惚れてください、公爵様!!

【完結済】私、地味モブなので。~転生したらなぜか最推し攻略対象の婚約者になってしまいました~

降魔 鬼灯
恋愛
マーガレット・モルガンは、ただの地味なモブだ。前世の最推しであるシルビア様の婚約者を選ぶパーティーに参加してシルビア様に会った事で前世の記憶を思い出す。 前世、人生の全てを捧げた最推し様は尊いけれど、現実に存在する最推しは…。 ヒロインちゃん登場まで三年。早く私を救ってください。

一級魔法使いになれなかったので特級厨師になりました

しおしお
恋愛
魔法学院次席卒業のシャーリー・ドットは、 「一級魔法使いになれなかった」という理由だけで婚約破棄された。 ――だが本当の理由は、ただの“うっかり”。 試験会場を間違え、隣の建物で行われていた 特級厨師試験に合格してしまったのだ。 気づけばシャーリーは、王宮からスカウトされるほどの “超一流料理人”となり、国王の胃袋をがっちり掴む存在に。 一方、学院首席で一級魔法使いとなった ナターシャ・キンスキーは、大活躍しているはずなのに―― 「なんで料理で一番になってるのよ!?  あの女、魔法より料理の方が強くない!?」 すれ違い、逃げ回り、勘違いし続けるナターシャと、 天然すぎて誤解が絶えないシャーリー。 そんな二人が、魔王軍の襲撃、国家危機、王宮騒動を通じて、 少しずつ距離を縮めていく。 魔法で国を守る最強魔術師。 料理で国を救う特級厨師。 ――これは、“敵でもライバルでもない二人”が、 ようやく互いを認め、本当の友情を築いていく物語。 すれ違いコメディ×料理魔法×ダブルヒロイン友情譚! 笑って、癒されて、最後は心が温かくなる王宮ラノベ、開幕です。

【完結】悪役令嬢の妹に転生しちゃったけど推しはお姉様だから全力で断罪破滅から守らせていただきます!

くま
恋愛
え?死ぬ間際に前世の記憶が戻った、マリア。 ここは前世でハマった乙女ゲームの世界だった。 マリアが一番好きなキャラクターは悪役令嬢のマリエ! 悪役令嬢マリエの妹として転生したマリアは、姉マリエを守ろうと空回り。王子や執事、騎士などはマリアにアプローチするものの、まったく鈍感でアホな主人公に周りは振り回されるばかり。 少しずつ成長をしていくなか、残念ヒロインちゃんが現る!! ほんの少しシリアスもある!かもです。 気ままに書いてますので誤字脱字ありましたら、すいませんっ。 月に一回、二回ほどゆっくりペースで更新です(*≧∀≦*)

悪役令嬢が美形すぎるせいで話が進まない

陽炎氷柱
恋愛
「傾国の美女になってしまったんだが」 デブス系悪役令嬢に生まれた私は、とにかく美しい悪の華になろうとがんばった。賢くて美しい令嬢なら、だとえ断罪されてもまだ未来がある。 そう思って、前世の知識を活用してダイエットに励んだのだが。 いつの間にかパトロンが大量発生していた。 ところでヒロインさん、そんなにハンカチを強く嚙んだら歯並びが悪くなりますよ?

小説主人公の悪役令嬢の姉に転生しました〜モブのはずが第一王子に一途に愛されています〜

みかん桜
恋愛
第一王子と妹が並んでいる姿を見て前世を思い出したリリーナ。 ここは、乙女ゲームが舞台の小説の世界だった。 悪役令嬢が主役で、破滅を回避して幸せを掴む——そんな物語。 私はその主人公の姉。しかもゲームの妹が、悪役令嬢になった原因の1つが姉である私だったはず。 とはいえ私はただのモブ。 この世界のルールから逸脱せず、無難に生きていこうと決意したのに……なぜか第一王子に執着されている。 ……そういえば、元々『姉の婚約者を奪った』って設定だったような……? ※2025年5月に副題を追加しました。

最愛の番に殺された獣王妃

望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。 彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。 手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。 聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。 哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて―― 突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……? 「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」 謎の人物の言葉に、私が選択したのは――

処理中です...