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6章もうひとつの悪役令嬢~ダーリン・ハッピーニ編~

2~ダーリン視点~

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透き通る白い髪はこの世と思えない美しさで、他を寄せ付けないどこか神聖さを放つオーラに僕は惹き付けられた。だからこそそんな日陰に佇む少女に対して僕は声をかけずにはいられなかった。

「大丈夫ですか?」

「え?」

僕の声に反応してこちらに顔を向ける少女だったが、顔はサングラスやマスクのようなものをして見えず残念に感じたものの、隠された素顔に期待が余計に膨みつつもあった。

何より驚くようにあげられた声はたった一文字の言葉。だというに、鈴の音色のようにリン………と耳に残る綺麗な声。それを聞けただけでも声をかけてよかったと思えるほどに。

それから関わりを断たせないとばかりに入学式は隣に座れるようにしたり、自己紹介を互いにして帰ったときには父にハッピーニのことを伝え婚約者になれたらと相談してみたりと必死になりすぎたと思う。

この時はこれが恋かはわからない状態だった。ただ、ハッピーニの傍にいられるのは婚約者の立場だと思ったからこそあの神聖なる人の傍にいて当然の立場にすがったようなものだ。

そんな中、サセル家から婚約の打診が来た際には父の手前大きく喜べなかったが、内心浮かれまくっていた。

婚約が成立するまでの間もハッピーニとは仲を深め、婚約が成立した際には好意を堂々と伝えられると愛称を呼びあったりするようにもなって………つまりは婚約成立する頃には僕は自分がハッピーニに恋をしていると気づけていた。

今更な気がするけれど。

だけど、いつしかハッピーニの様子がおかしいことに僕は気づいた。

「ハピー、好きだよ」

「ありがとうございます」

好意を伝えればハッピーニは嬉しそうにする。だけど、感謝を伝えてはくれても好意の言葉を返してくれはしない。最初は照れているのかもしれないと思った。

でもいつしか伝える度何か言いたげに苦しそうな表情が見え隠れするようになって、サセル家から婚約の打診があったからとあの日は浮かれたが、必ずしもそれがハッピーニの意思ではないと思いハッピーニの様子次第では離れようと考えもしたが、嫌われている様子は見られないのでそれは取り止めた。

自分といることが本当は苦痛ならば無理に関わるのはと思うものの、嫌われていないならやはり惚れた女の子には自分が幸せにしてやりたい、そう思ったから。

そう思ったのに思うだけで僕は何もできていなかったと思い知るのはハッピーニが倒れたその日。

「ダリィ、私貴方がす………っ」

「ハピー!」

ハッピーニに好意の言葉を初めてもらえるのではと期待したその日。最後まで言い切ることなくハッピーニは倒れ意識不明の重体となった。

原因も理由もわからない意識不明に。

好きな人から好意たる言葉を望んだせいだろうか?そんなバカなことあるはずがないと思いながらも意識を取り戻さないハッピーニを案じた。

そして1ヶ月後ハッピーニはようやく目を覚まし…………

「ここ、どこ………?」

「ハッピーニ!」

「! だ、誰………?」

僕どころか家族の記憶さえも失い、自分はアイだと名乗り、別人になったかのように狂い始めた。
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