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7章もうひとりの悪役令嬢と~ダーリン編2~
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それは突然のことだった。いや、実際はアイの話を聞いた時から違和感がだんだんと沸き上がってくるようなそんな感じはあったというべきか。コーカイへの怒りで後から来た違和感ではあったけれど。
はっと頭の中が巡るように前世の記憶を思い出したのはハッピーニの病気を治せるかもしれない方法を見つけた日。
まるでそれが記憶の鍵だったかのように一気に甦ったそれに人知れず涙が出た。
「これは……僕が見つけ出した治療法だ」
見つけたときには間に合わなかったその治療法だが、今ならまだ間に合う。ただ成功率は半分……必ずしも成功するとはいえない確率。それでも助かる見込みがあるならと思うが、失敗すれば放置するだけのときよりも短い命となりえる方法だ。
その悩みと共に浮かぶ疑問。アイの話はコーカイの名も出ていた。出ていたが、話が噛み合っていないのだ。
それにヒロインとやらはそんな人を想えるような人だっただろうか?あれはアイの寿命を縮めたとも言える害悪でしか……考えれば考えるほどわからない。
アイは確かにコーカイが愛した女性で婚約者だったが、僕は確かにアイと最後まで死の別れに抵抗すべく二人で生きる道を探した。もちろんアイが悪役のように振る舞おうとしたことはあったけれど……。
どうにもまるで違う自分とアイの話を聞いているようなそれに感じた。
しかし、そんな違和感はあるもののまず優先すべきことを忘れてはいけないと治療法を持ってハッピーニと僕の父と母となるハッピーニの両親に話を持っていく。これは僕が勝手に決めることではないから。
「確率は半分……しかも失敗は……」
「………」
両親側は難しい表情をする。それもそうだろう。娘の命に関する話で、成功率も高いとは言えないばかりか失敗は失敗で命を削るはめとなるのだから。
本人であるハッピーニは不思議なことに笑みを浮かべていた。
「ダリィ、ありがとう……。成功率が低くても治る術があると知れただけで私は嬉しいわ」
「ハピー……」
それは偽りのない笑顔。アイの病気の治療法は見つからなかったと聞くだけに、見つかっただけ希望があるというもの。そのハッピーニの言葉に決めたとばかりにハッピーニの母がこちらを睨み付けるように見た。
「その手術をするかは娘の判断に任せるわ」
「お母様?」
「私たちが言ったところで本人に生きる気力がなければ、覚悟がなければ成功するものも失敗するに決まっているもの。ならば、私は貴女が望むようにして………あげなくてもなくてよ?」
「お母様……」
「でも生きることを諦めるのは許さないわ……普段はその、あれですけど……その、娘を愛してないわけではなくもないのですからね!」
デレたというべきか、素直か素直じゃないのかわからない言葉で顔を真っ赤にさせていうハッピーニの母にハッピーニの目は潤んでいる。だが、それで治療法があると知れて嬉しいで終わることなく覚悟を決めたように笑うのをやめ、真剣な目で僕を見た。
「私、その手術を受けますわ」
その言葉に未来を想像したのはきっと僕だけではない。
はっと頭の中が巡るように前世の記憶を思い出したのはハッピーニの病気を治せるかもしれない方法を見つけた日。
まるでそれが記憶の鍵だったかのように一気に甦ったそれに人知れず涙が出た。
「これは……僕が見つけ出した治療法だ」
見つけたときには間に合わなかったその治療法だが、今ならまだ間に合う。ただ成功率は半分……必ずしも成功するとはいえない確率。それでも助かる見込みがあるならと思うが、失敗すれば放置するだけのときよりも短い命となりえる方法だ。
その悩みと共に浮かぶ疑問。アイの話はコーカイの名も出ていた。出ていたが、話が噛み合っていないのだ。
それにヒロインとやらはそんな人を想えるような人だっただろうか?あれはアイの寿命を縮めたとも言える害悪でしか……考えれば考えるほどわからない。
アイは確かにコーカイが愛した女性で婚約者だったが、僕は確かにアイと最後まで死の別れに抵抗すべく二人で生きる道を探した。もちろんアイが悪役のように振る舞おうとしたことはあったけれど……。
どうにもまるで違う自分とアイの話を聞いているようなそれに感じた。
しかし、そんな違和感はあるもののまず優先すべきことを忘れてはいけないと治療法を持ってハッピーニと僕の父と母となるハッピーニの両親に話を持っていく。これは僕が勝手に決めることではないから。
「確率は半分……しかも失敗は……」
「………」
両親側は難しい表情をする。それもそうだろう。娘の命に関する話で、成功率も高いとは言えないばかりか失敗は失敗で命を削るはめとなるのだから。
本人であるハッピーニは不思議なことに笑みを浮かべていた。
「ダリィ、ありがとう……。成功率が低くても治る術があると知れただけで私は嬉しいわ」
「ハピー……」
それは偽りのない笑顔。アイの病気の治療法は見つからなかったと聞くだけに、見つかっただけ希望があるというもの。そのハッピーニの言葉に決めたとばかりにハッピーニの母がこちらを睨み付けるように見た。
「その手術をするかは娘の判断に任せるわ」
「お母様?」
「私たちが言ったところで本人に生きる気力がなければ、覚悟がなければ成功するものも失敗するに決まっているもの。ならば、私は貴女が望むようにして………あげなくてもなくてよ?」
「お母様……」
「でも生きることを諦めるのは許さないわ……普段はその、あれですけど……その、娘を愛してないわけではなくもないのですからね!」
デレたというべきか、素直か素直じゃないのかわからない言葉で顔を真っ赤にさせていうハッピーニの母にハッピーニの目は潤んでいる。だが、それで治療法があると知れて嬉しいで終わることなく覚悟を決めたように笑うのをやめ、真剣な目で僕を見た。
「私、その手術を受けますわ」
その言葉に未来を想像したのはきっと僕だけではない。
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