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4章予想外の出来事もいいように使いましょう

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そんな様子を見て口出しをしたのは魔王。

「帰れ」

「ですがっ!」

「口で謝るなら誰でもできる。償いとは行動で示すものだ。それを示してから出直してこい」

「う・・・っはい」

魔王の言葉に思うところがあったのか、渋々出ていく男がこれからどうするのかはまだわかりはしない。

「にしても女神か」

「わたし、めがみじゃないよ」

「お前が神の存在なら俺はいらなかっただろうな」

神の力は魔王が不可能なことでさえ可能な力を持つ絶対なる存在。例え魔王だろうと、大天使だろうと、神には逆らえない。それくらいに絶大な力を持つのだから魔王など赤子同然。

しかし、神の存在は前世のゲーム情報ではなかったために、魔王の意味を理解できずミーアは魔王の腕の中で首を傾げる。

「かみさまより、まおうがいい」

「・・・そうか」

この世界の神を知らないミーアの本音。神だろうが、何だろうが、ミーアにとって今を安心して暮らせるのは魔王のおかげだ。

「(たすけてくれないかみさまなんていらない。たとえみらいでみすてられるうんめいでも、わたしはまおうにあえてよかったとおもうから。きっとげーむのみーあもおなじだよね)」

未来で見捨てられようと、今がなくなるわけではない。それをミーアは実感している。しかし、あえて間違っているとすれば、魔王は既にミーアを見捨てるどころか放っておけない存在として見ていることだろうか。

現時点で未来は既に違いが出てきていることにミーアは気づいていない。気づくきっかけに出会うのはまだ少し先の話である。

「ミーア、どうした」

「なんでもないよ。あのしようにんさんのなまえ、きくのわすれちゃったね」

「覚える価値もない人物の名を知る必要はない」

「おかあさま、おとうさまはわたしのなまえ、おぼえてるかな?」

そう出た言葉は、ミーアにも無意識だった。ミーアの心の声が出たのかもしれない。父、母にとって自分は名前を覚えてもらう価値くらいはあるのか。嫌われていることはミーアにもわかっていたからこその、せめての願い。

「お前の名を忘れるような人間はただの愚か者だな。魔王の俺がミーアの名を覚えたんだ。自分に価値がないと考えるな」

「うん」

自分を下に見るミーアに、魔王は苛立つように告げる。しかし、そこには優しさがあるからこそ伝えられた言葉だとミーアは感じた。

親に名を知られているかを考えるよりも、魔王に名を覚えてもらったことに誇りを持てと、それだけの価値がミーアにはあるという魔王の遠回しな言い分は、ミーアの心に響いた。

親に自分の価値を求めるミーアの願いがどれほどちっぽけで、気にするに値しないことかが知れたのだ。

「子供だからと親が全てなわけじゃない」

「うん・・・わたしにはまおうがいるからね」

「うっいや、そう、だが」

親が全てじゃないならミーアにとっての全ては魔王だ。その意味を理解して魔王は戸惑う。それは、つまり、ミーアは魔王によって構成されるという意味に思えたわけだ、魔王は。

しかし、それはそれで別によかった魔王。問題はそう考えたとたん、どのように育てばいい子に育つかと考えてしまった点だ。

「まおう?」

こてんと首を傾げるミーアを見て、魔王は顔だけを天に向けた。

「魔王あるまじき思考だ!(魔王の子育てはまだいい!だが、いい子に育てようなんざ、ミーアを天使にでもさせる気か、俺は!だが、ミーアが悪魔らしく欲に忠実になる姿が想像つかん・・・!)」

いい子に育てるにはと考えたことが余程ショックなのか、子育てに対しては認めた魔王。今までミーアにしていた世話が子育ての一種と自覚があって認めているかはさておき。

「どうしたの?」

「天井が青い」

「まおうがしたんだよ」

「そうだったな」

何故かミーアが見れない魔王。見てしまえば魔王あるまじき思考に色々な意味で決着がつきそうな気がしたからだ。もう手遅れだというのに。

そんな魔王は知らない。謝罪を行動に移すべく動いた男が、魔王に吹っ飛ばされた際に魔王の力に当てられ、その力が欲に変換されることで欲が意思に注がれた結果、周囲に及ぼす影響が半端ないことを。

半端ない影響力により、ミーア信者が増えることを。ミーア信者が増えた結果により、魔王がこれぐらいと思ってやっていることが立派な子育てとしてやり過ぎなことを指摘される未来を魔王は知らない。

そして、土下座男が意外に有能で、償いのためにを理由に、色々とパシりに使える未来もやっぱり魔王は知らない。

「まおう、だいじょうぶ?」

「ああ」

そんな魔王を心配するミーアももちろん知らないし、使用人がミーアに忠実になるなんてことは前世の記憶ではなかったために、ゲームと異なりすぎる展開に混乱する未来も知らない。

そして異なる展開に理由があることもミーアはやっぱり知らないのだ。
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