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6.5章実は泣いていたミーアと裏話を知りましょう
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これは6章であまり泣いていないミーアが皆様の知らぬところで泣いていた話。
まずは魔王が乙女ゲームを理解し、ミーアの言っていたヒロインや攻略対象、ゲームでの魔王を知った日の夜ミーアの部屋でのこと。二人はベット上に乗り、向かいあって座っている。
「俺を召喚する前から、ゲームとやらの記憶があったのか?」
「うん、しょうかんするちょっとまえから・・・」
「俺を召喚して泣いたのはゲームの記憶が原因なんだな」
「う、ん・・・わたし、しぬためにうまれたのかなって・・・。でも、さびしいの、いやだったの・・・っひく」
「そうか」
話す内に涙が堪えられなくなったミーアを優しく正面から抱き締めてやる魔王はミーアの気持ちに寄り添うかのように悲痛の表情をしていることを、魔王の胸に顔を埋めるミーアにはわからない。
「てんし、しょうかんできたらかわるかなって、でも、だめで・・・っだから、のろいこだから、さびしくてしぬより、まおういたほうが、いいかなって・・・っさいごは、ひとりになるってわかってても、わたし・・・うっあぁぁっ」
もうこれ以上は話せないとばかりに大泣きするミーアを見て、魔王も胸が苦しくなった。大切だとミーアを認識したからだろう。自分のせいで泣いていないときでさえ未来の出来事を不安に感じさせていたという事実を知ったことで、魔王は自分が許せない気持ちで膨れ上がる。
「俺はミーアを守る。死なせないし、一人にはさせない。俺はミーアが愛しいからな」
「うああぁんっ」
泣いていて聞いているのかわからないミーア。だが、魔王は何度だってミーアに愛を伝えられる。例えそれが今は親子愛に近いものとはいえ、愛は愛。ミーアに今必要なのはどんな形であろうと、自分を愛してくれる存在だと魔王は思っている。
「(人が100まで生きるとして、たかが5歳で未来の死を予期して恐怖するとはどんな気持ちだろうか。俺はどちらかと言えば死を、恐怖を与える存在だ。悪魔すら俺を恐れることで、恐怖を知っている。何故俺は魔王なのだろうか)」
ミーアの気持ちの奥深くまで寄り添えない魔王は、この日初めて魔王であることを悔いた。ミーアの不安や死の恐怖の気持ちを少しでもわかれたなら、もっとミーアの心に近づけるのにと。
名付け契約のおかげに感情はダイレクトに伝わってはくるが、どれも魔王にとっては知らぬ感情ばかり。
「うう・・・っひくっ」
今だ泣くミーアを抱く魔王は、腕に少し力を込める。その泣かせる原因の感情を自分に受け持たせてくれとばかりに。
「(死を覚悟してまでひとりでいることができない愛しいミーアを俺自身が手放せるはずもない。人の子の生は短い。名付け契約をしてよかった、本当に。ミーアが先に逝くまで自覚しなかったなら俺はきっと・・・)」
そこに続く想いは魔王の秘めた想い。それを表すようにそっと魔王は下を向いて見えるミーアの髪に唇を触れさせた。
自分の与える愛は本物だと伝えるかのように。魔王の胸に顔を埋めるまだ涙の収まらないミーアがそれに気づいたかはわからない。
本来今の時点では願いを叶える立場の魔王が願う。
「(叶うならこの子に祝福を。笑顔溢れる日常を)」
その願いは魔王らしくなく、悪魔たちが敵対する天使たちが祝福をもたらしたい人々に想う願いであった。
「・・・」
「ミーア・・・」
気がつけば泣きつかれたのか、魔王の腕に抱かれたまま眠るミーアの姿。魔王は起こさないようそっと自分に凭れ座り込んで眠るミーアを横に寝かせて、魔王自身もまたミーアと顔を向かい合わせる形で横になった。
そっと優しい手つきで涙の跡残して眠るミーアの頬に触れた魔王はじっとミーアを見て目を閉じる。
悪魔も天使も大天使、魔王も眠りは必要ない。しかし、一緒に形だけでも眠りたいと感じた魔王は、ただ目を閉じて、手でミーアの頬の体温を感じながらミーアが起きる直前まで狸寝入りを続けた。
「おはよう、まおう」
「ああ、おはよう」
それは目を覚ますミーアと挨拶を交わすその時まで。また、魔王がミーアに触れる手もまたその時まで離しはしなかった。
一緒に寝れたことを喜ぶミーアを見て、その日から魔王の狸寝入りが日課になるのは余談だ。
もうひとつ裏話として、なんだかんだ屋敷に一緒に住むこととなったネコと大天使がふたりに会う前のふたりを知らずして、土下座男の使用人いわく、以前よりもミーアに甘くなった魔王を見て、ときどき砂を吐いていることを魔王は知らない。
また、甘いとは別にミーアが聞いていたかはわからずとも、愛を伝えた夜から魔王の過保護は増した。
「歩かないのもミーアの健康にはよくないか。床に全部三日以内に柔らかい素材のカーペットを敷け。ミーアが転けても怪我をしない柔らかいものだ」
さすがに屋敷全体を魔王の魔法で柔らかい素材カーペットにするには正体がバレかねないと、土下座男に命じる魔王。大天使には期待してないため、買わせにいくのが妥当だろう。
「かしこまりました!」
後日、確かに屋敷の床は転けても怪我をしないカーペットが敷かれた。
「僕、付与魔法は得意なんです」
大天使の衝撃吸収付与、回復付与がされた優れもの。カーペットの上にいるだけで回復魔法は効果を表し、転けても衝撃吸収され痛みひとつない。なんなら敷き詰められたカーペットの上を歩いている間は回復付与により疲れない。
ついでに魔王の魔法も合わさっている。ミーアに敵意を抱くものはカーペットの上を歩くだけで疲れ増大というものだ。大天使も回復付与、衝撃吸収はミーアとミーアを祝福するもの限定付与にしため、互いの力が相殺されることはない。
「なんか、すごいね・・・?」
「やりすぎよ」
過保護には大天使も混ざるのだからミーアは時に驚き、ネコは呆れるばかりである。
そういうわけで今回は学園入学する前までの6章にてそんなことがあったという裏話。
まずは魔王が乙女ゲームを理解し、ミーアの言っていたヒロインや攻略対象、ゲームでの魔王を知った日の夜ミーアの部屋でのこと。二人はベット上に乗り、向かいあって座っている。
「俺を召喚する前から、ゲームとやらの記憶があったのか?」
「うん、しょうかんするちょっとまえから・・・」
「俺を召喚して泣いたのはゲームの記憶が原因なんだな」
「う、ん・・・わたし、しぬためにうまれたのかなって・・・。でも、さびしいの、いやだったの・・・っひく」
「そうか」
話す内に涙が堪えられなくなったミーアを優しく正面から抱き締めてやる魔王はミーアの気持ちに寄り添うかのように悲痛の表情をしていることを、魔王の胸に顔を埋めるミーアにはわからない。
「てんし、しょうかんできたらかわるかなって、でも、だめで・・・っだから、のろいこだから、さびしくてしぬより、まおういたほうが、いいかなって・・・っさいごは、ひとりになるってわかってても、わたし・・・うっあぁぁっ」
もうこれ以上は話せないとばかりに大泣きするミーアを見て、魔王も胸が苦しくなった。大切だとミーアを認識したからだろう。自分のせいで泣いていないときでさえ未来の出来事を不安に感じさせていたという事実を知ったことで、魔王は自分が許せない気持ちで膨れ上がる。
「俺はミーアを守る。死なせないし、一人にはさせない。俺はミーアが愛しいからな」
「うああぁんっ」
泣いていて聞いているのかわからないミーア。だが、魔王は何度だってミーアに愛を伝えられる。例えそれが今は親子愛に近いものとはいえ、愛は愛。ミーアに今必要なのはどんな形であろうと、自分を愛してくれる存在だと魔王は思っている。
「(人が100まで生きるとして、たかが5歳で未来の死を予期して恐怖するとはどんな気持ちだろうか。俺はどちらかと言えば死を、恐怖を与える存在だ。悪魔すら俺を恐れることで、恐怖を知っている。何故俺は魔王なのだろうか)」
ミーアの気持ちの奥深くまで寄り添えない魔王は、この日初めて魔王であることを悔いた。ミーアの不安や死の恐怖の気持ちを少しでもわかれたなら、もっとミーアの心に近づけるのにと。
名付け契約のおかげに感情はダイレクトに伝わってはくるが、どれも魔王にとっては知らぬ感情ばかり。
「うう・・・っひくっ」
今だ泣くミーアを抱く魔王は、腕に少し力を込める。その泣かせる原因の感情を自分に受け持たせてくれとばかりに。
「(死を覚悟してまでひとりでいることができない愛しいミーアを俺自身が手放せるはずもない。人の子の生は短い。名付け契約をしてよかった、本当に。ミーアが先に逝くまで自覚しなかったなら俺はきっと・・・)」
そこに続く想いは魔王の秘めた想い。それを表すようにそっと魔王は下を向いて見えるミーアの髪に唇を触れさせた。
自分の与える愛は本物だと伝えるかのように。魔王の胸に顔を埋めるまだ涙の収まらないミーアがそれに気づいたかはわからない。
本来今の時点では願いを叶える立場の魔王が願う。
「(叶うならこの子に祝福を。笑顔溢れる日常を)」
その願いは魔王らしくなく、悪魔たちが敵対する天使たちが祝福をもたらしたい人々に想う願いであった。
「・・・」
「ミーア・・・」
気がつけば泣きつかれたのか、魔王の腕に抱かれたまま眠るミーアの姿。魔王は起こさないようそっと自分に凭れ座り込んで眠るミーアを横に寝かせて、魔王自身もまたミーアと顔を向かい合わせる形で横になった。
そっと優しい手つきで涙の跡残して眠るミーアの頬に触れた魔王はじっとミーアを見て目を閉じる。
悪魔も天使も大天使、魔王も眠りは必要ない。しかし、一緒に形だけでも眠りたいと感じた魔王は、ただ目を閉じて、手でミーアの頬の体温を感じながらミーアが起きる直前まで狸寝入りを続けた。
「おはよう、まおう」
「ああ、おはよう」
それは目を覚ますミーアと挨拶を交わすその時まで。また、魔王がミーアに触れる手もまたその時まで離しはしなかった。
一緒に寝れたことを喜ぶミーアを見て、その日から魔王の狸寝入りが日課になるのは余談だ。
もうひとつ裏話として、なんだかんだ屋敷に一緒に住むこととなったネコと大天使がふたりに会う前のふたりを知らずして、土下座男の使用人いわく、以前よりもミーアに甘くなった魔王を見て、ときどき砂を吐いていることを魔王は知らない。
また、甘いとは別にミーアが聞いていたかはわからずとも、愛を伝えた夜から魔王の過保護は増した。
「歩かないのもミーアの健康にはよくないか。床に全部三日以内に柔らかい素材のカーペットを敷け。ミーアが転けても怪我をしない柔らかいものだ」
さすがに屋敷全体を魔王の魔法で柔らかい素材カーペットにするには正体がバレかねないと、土下座男に命じる魔王。大天使には期待してないため、買わせにいくのが妥当だろう。
「かしこまりました!」
後日、確かに屋敷の床は転けても怪我をしないカーペットが敷かれた。
「僕、付与魔法は得意なんです」
大天使の衝撃吸収付与、回復付与がされた優れもの。カーペットの上にいるだけで回復魔法は効果を表し、転けても衝撃吸収され痛みひとつない。なんなら敷き詰められたカーペットの上を歩いている間は回復付与により疲れない。
ついでに魔王の魔法も合わさっている。ミーアに敵意を抱くものはカーペットの上を歩くだけで疲れ増大というものだ。大天使も回復付与、衝撃吸収はミーアとミーアを祝福するもの限定付与にしため、互いの力が相殺されることはない。
「なんか、すごいね・・・?」
「やりすぎよ」
過保護には大天使も混ざるのだからミーアは時に驚き、ネコは呆れるばかりである。
そういうわけで今回は学園入学する前までの6章にてそんなことがあったという裏話。
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