私の夫はストーカー~私は恋も愛も知りません~

荷居人(にいと)

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3章

夫婦生活の恋の宿敵1

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今日は待ちに待った元婚約者が現れる日。ちなみにご両親のところへ行った翌日のこと。あまりの早さに、元婚約者が抱く時雨への執着がわかるというもの。

歓迎するために家を飾り立てたはいいが、まるで誕生日会みたいだ。夫の元婚約者をこんなに歓迎する妻もいないだろう。

しかし、恋を理解するために元婚約者という存在は私には欠かせないものと思っている。瑠璃が貸してくれた少女漫画とやらにはどれも何かと恋の宿敵が出ていたし、何事も経験は大事。

賛成してくれた時雨は、この日ばかりはいつもより笑みが暗い。自分の気持ちより、どこまでも気持ちすら私を優先するのだからすごいと思う。

夫婦といえど、他人。マイペースを崩さない私には難しい話だ。

ピンポーンと鳴り響く音に、私は即座に扉を開けた。私と時雨は玄関で元婚約者を待っていたわけだ。元婚約者もさすがに早すぎて目を見開いている。

可愛いというより、色気のある綺麗な元婚約者は、確かに時雨と並べば美男美女のお似合い夫婦になったことだろう。それを想像するとなんだか、ちくりと胸が痛んだ気もしたが、恋の宿敵を見たことで、思っている以上に興奮していたのかもしれない。

「ようこそいらっしゃってくださいました。ぜひ入って」

「え、ええ」

取り合えず中へ招き入れれば、戸惑ったような姿で着いてくる。時雨も珍しく苦笑しているし、元婚約者を驚かせてしまった結果だろうか。リビングで待って普通に開ければよかったかもしれない。

客間に案内して、私と時雨は、元婚約者に向き合う形で座る。当たり前といえば当たり前の座り方なのだけど、驚きでの戸惑いも落ち着いたのか急に睨まれた。

「どういうおつもりで?」

「まずは自己紹介ね。私、星影美世と申します」

「自己紹介しなくても私は知っているわ。だから質問に・・・」

「私は知らないわ。まずは自己紹介よ」

「貴女が私を知らないなんてどうでも」

「自己紹介と私は言ってるの」

「・・・伊集院結愛(いじゅういんゆな)よ」

「あら、素敵なお名前ね」

私は私のペースを崩されるのが何よりも嫌。それが例え恋を知るきっかけになるかもしれない恋のライバルが相手でも。ようやく自己紹介で時雨の元婚約者、伊集院の娘結愛の名前を知れて満足する。

諦めて名前を告げた結愛に最初の一回戦は私の勝ちねと内心微笑む。表情は微動だにしてないだろうけど。

「で、どういうつもり」

褒め言葉はスルーされてしまったが、まあそれくらいは気にならない。

「時雨を取り合いたいと思ったの。結愛を歓迎するために時雨とたくさん家に飾りをつけたわ」

「呼び捨て・・・いや、それよりも、意味がわからないわ」

まるで時雨のご両親の時と同じ反応。素直に伝えたのに頭を抱えられたわ。まるで理解できないとばかりの言葉を告げて。

「美世の前だと誰もが調子を狂わせるね」

ぼそりと呟かれた言葉は、結愛に届いてはいない様子。私はただ素直に言いたいことを言って、自分のペースで話を進めているだけなのに。何も、相手の調子を狂わせようだなんて考えて話してないわ。

「・・・まあ、いいわ。貴女、時雨様を愛していて?私は時雨様を誰よりも愛していると自負しているわ。例えお金がなく貧乏になろうと時雨様がいれば私はそれだけでいいの。貴女はどうなの?」

自ら本題に入り出した。ご両親よりも復活が早いのは時雨に対する執着心がそうさせているのだろうか?もちろん、その答えに嘘はつけないし、つくつもりもない。

「私には愛がわからないので、時雨を愛しているとは断言できません。ただ好意はそれなりにあります。お金ないなら離婚しますよ?普通に。安定した生活もありそうだから結婚に了承したわけだもの。それだけが全てじゃなくても、私はそれなりの普通の生活はしたいから、離婚して自分で稼いで、だらだらするときはだらだらしてやるわ」

「君がだらだら生活できるように僕も下手なミスしないよう頑張らないとだね」

「ええ、頑張って。さすがに顔がよくてもお金がないんじゃ夫婦を続けられないわ」

「さ、最低にもほどがあるわよ!」

自覚してますが、何か?

「時雨もわかってるわよ?」

「わ、わからない・・・。時雨様!なぜ、この女なのです!?」

「惚れたから以外にないけど?」

「こ、こんな女に・・・っなぜ・・・」

「だから惚れたからって言ってるんだけど」

今でこそ結愛を出迎えるため、おしゃれな服だけど、普段時雨の前でもジャージ姿と言えば結愛はどんな反応をするのか、この時点で悔しそうに、やりきれないとばかりに拳を握る結愛。見ていて中々に愉快。

私、人間の屑かもしれないと最近思わなくもない。まあ別に気にしないけど。

「私が時雨に恋をするために、貴女に当て馬をしてほしいの」

「は?」

あら、女性らしからぬ顔よ、結愛。貴女の想い人の前でする顔ではないわね。まあ、当て馬を頼まれたら誰だってそんな顔をしそうだけど。にしても時雨?何故貴方も驚いているの?予想していなかったの?あれこれで私を理解する貴方が。結愛を言い負かすだけだと思っていたのかしら?

そんなの時雨が私を想う限りわかりきった結果に興味はないと言うのに。
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