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第一章
43.
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森の入り口付近からさらに奥に入るが、ハウノが見つけていたと言う小さな月桂樹は見つからない。奥に行けば行くほど強い魔物が出てくるが、マリールの獣避けの布玉のおかげで、その数は減らされている。その筈である。
「…っおかしいって! これスタンピードの前兆か何かじゃないか!?」
「トート! 鋼蜘蛛の糸で遊んでないで、ちゃんと戦えって!」
「俺これ好きなんだよ。 なんかかっこいいじゃん?」
「「きれいに素材取れないし、無駄!」」
「え~…? しょうがないなーもう。」
ラルムとサルムのようにしょっぱなから土魔法で倒していれば、魔力の自然回復が追い付かなくなる。トートは考えて鋼蜘蛛の糸で戦っていたのだが、そうも言っていられない程の鳥の魔獣の大群が襲ってきていた。
張り巡らせた糸に引っ掛かる遺骸のせいで、糸の切断効果も鈍くなっている。
トートは糸を巻く魔道具で瞬時に糸を回収してから、どかりと地面に胡坐をかいて座る。そして両手を振り上げ、地面へと強く叩き付けた。
それを見たラルムとサルムがぎょっと目を見開き、慌てて前線から退却する。
「退避ー! 総員退避ー!!」
「身体に穴開けたくなかったら、死ぬ気で走れぇー!!」
「おまえらなぁ…! もっと計画的にやってくれ!!」
突然の退避行動に、バルドは子供達を両脇に二人ずつ抱え全力で走る。
ホビット達の脚力には適わないが、今日のバルドはピピ角牛狩りに出た時のように、なんだか調子が良かった。
トートの叩いた地面が、まるでバチで打った太鼓の打面のように震え、その上にある礫をビンと上に跳ね上げさせる。トートが左右の手でリズム良く叩く度に、その振動は偉力を増していった。
トートの叩くリズムが段々と早く、強くなる。そして一際大きく叩いた瞬間に、石の礫は弾丸のように空へと跳ね上がっていく。
トートに鋭い爪を引っ掛ける寸前だった大烏の魔物も、嘴で貫こうと迫っていたものも、旋回して速さを増していたものも、空を埋め尽くしていた鳥の魔獣全てが礫で貫かれた。蜂の巣状に穴を開けられた大量の鳥の遺骸が、血を噴き出しながら地面へと落ちていく。
鋼蜘蛛の糸を使っても土魔法を使っても、トートの戦い方は変わらずグロかった。
「もー! 素材また取れないじゃん!」
「なんだよー。おまえらだって似たようなものだろー?」
「魔石も壊れてるの多いしもー…。」
ラルムとサルムに大変不評なトートの土魔法。魔物の群れも一気に始末出来るが、辺りは大惨事になるのが偶に瑕だ。
「にいちゃんたち、強いけどなんか…。」
「冒険者としてどうなんだ?」
「これじゃあ素材売ることも出来ないよ…。」
「…うっぷ。」
そして子供達にも大変不評のようだ。
あげくに冒険者として先輩面をしていたのに、心配までされていた。
これには居心地悪く、ホビット達は唇を尖らせる。
「まいったな…。こう頻繁に鳥に襲われていたら、目的の月桂樹を探せん。」
「もういっそ、魔物出てきたら焼き払っちゃえば?」
「そうだよ、ギルマス。何もしてないじゃん。ギルマスのくせに。」
「そうだよ。素材駄目にする筆頭のくせに。」
「「「「…。」」」」
先輩冒険者達の醜い非難合戦が始まり、子供達も呆れた様にそれを眺めた。付いて来たのは誤りだったかと、行きたいと言ってしまった事を早くも後悔していた。
ふと、ティーヨが何か嗅いだ事の無い嫌な匂いを嗅ぎつける。僅かに風に乗って漂ってくるその匂いは、とても不快な匂いだった。
「…ねえ、なんか変な匂いする。」
「ティーヨ?」
ティーヨが眉間に皺を寄せながら鼻をひくひくと動かして、匂いの元を懸命に辿る。
マルクもビートもクリルも、それにホビット達も同じように鼻をひくつかせて、そして一様に顔を顰めた。
「…ほんとだ。なんだ? この匂い。」
「嗅いだ事ある…腐臭だ。」
「「「「!?」」」」
「…子供達を頼む。俺が見てくる。」
「気をつけて、ギルマス。」
バルドが匂いを辿り近づいていけば、鼻が曲がるような強烈な匂いと、百合の花のような強い香りが混ざり濃くなっていく。枝を掻き分けさらに奥へと進み、その先に見えた光景に、バルドは目を瞠った。
木に磔にされた人と、既に腐りはじめている馬や人の遺骸が山と積まれていた。その死肉を獣や魔獣達が群がり貪っている。バルドが一歩近づくと、バルドの持つ獣避けの布玉に反応したのか、獣と魔獣がじりじりと後退り離れていった。
バルドはゆっくりと磔にされた人へと近付く。その首には何かの袋が掛けられていた。
バルドは恐る恐る腕を伸ばし、その人の心臓に手を当てる。
「…ハウノ…。」
何の反応も返さないその人の胸は、命が終わっている事を示していた。
「…っおかしいって! これスタンピードの前兆か何かじゃないか!?」
「トート! 鋼蜘蛛の糸で遊んでないで、ちゃんと戦えって!」
「俺これ好きなんだよ。 なんかかっこいいじゃん?」
「「きれいに素材取れないし、無駄!」」
「え~…? しょうがないなーもう。」
ラルムとサルムのようにしょっぱなから土魔法で倒していれば、魔力の自然回復が追い付かなくなる。トートは考えて鋼蜘蛛の糸で戦っていたのだが、そうも言っていられない程の鳥の魔獣の大群が襲ってきていた。
張り巡らせた糸に引っ掛かる遺骸のせいで、糸の切断効果も鈍くなっている。
トートは糸を巻く魔道具で瞬時に糸を回収してから、どかりと地面に胡坐をかいて座る。そして両手を振り上げ、地面へと強く叩き付けた。
それを見たラルムとサルムがぎょっと目を見開き、慌てて前線から退却する。
「退避ー! 総員退避ー!!」
「身体に穴開けたくなかったら、死ぬ気で走れぇー!!」
「おまえらなぁ…! もっと計画的にやってくれ!!」
突然の退避行動に、バルドは子供達を両脇に二人ずつ抱え全力で走る。
ホビット達の脚力には適わないが、今日のバルドはピピ角牛狩りに出た時のように、なんだか調子が良かった。
トートの叩いた地面が、まるでバチで打った太鼓の打面のように震え、その上にある礫をビンと上に跳ね上げさせる。トートが左右の手でリズム良く叩く度に、その振動は偉力を増していった。
トートの叩くリズムが段々と早く、強くなる。そして一際大きく叩いた瞬間に、石の礫は弾丸のように空へと跳ね上がっていく。
トートに鋭い爪を引っ掛ける寸前だった大烏の魔物も、嘴で貫こうと迫っていたものも、旋回して速さを増していたものも、空を埋め尽くしていた鳥の魔獣全てが礫で貫かれた。蜂の巣状に穴を開けられた大量の鳥の遺骸が、血を噴き出しながら地面へと落ちていく。
鋼蜘蛛の糸を使っても土魔法を使っても、トートの戦い方は変わらずグロかった。
「もー! 素材また取れないじゃん!」
「なんだよー。おまえらだって似たようなものだろー?」
「魔石も壊れてるの多いしもー…。」
ラルムとサルムに大変不評なトートの土魔法。魔物の群れも一気に始末出来るが、辺りは大惨事になるのが偶に瑕だ。
「にいちゃんたち、強いけどなんか…。」
「冒険者としてどうなんだ?」
「これじゃあ素材売ることも出来ないよ…。」
「…うっぷ。」
そして子供達にも大変不評のようだ。
あげくに冒険者として先輩面をしていたのに、心配までされていた。
これには居心地悪く、ホビット達は唇を尖らせる。
「まいったな…。こう頻繁に鳥に襲われていたら、目的の月桂樹を探せん。」
「もういっそ、魔物出てきたら焼き払っちゃえば?」
「そうだよ、ギルマス。何もしてないじゃん。ギルマスのくせに。」
「そうだよ。素材駄目にする筆頭のくせに。」
「「「「…。」」」」
先輩冒険者達の醜い非難合戦が始まり、子供達も呆れた様にそれを眺めた。付いて来たのは誤りだったかと、行きたいと言ってしまった事を早くも後悔していた。
ふと、ティーヨが何か嗅いだ事の無い嫌な匂いを嗅ぎつける。僅かに風に乗って漂ってくるその匂いは、とても不快な匂いだった。
「…ねえ、なんか変な匂いする。」
「ティーヨ?」
ティーヨが眉間に皺を寄せながら鼻をひくひくと動かして、匂いの元を懸命に辿る。
マルクもビートもクリルも、それにホビット達も同じように鼻をひくつかせて、そして一様に顔を顰めた。
「…ほんとだ。なんだ? この匂い。」
「嗅いだ事ある…腐臭だ。」
「「「「!?」」」」
「…子供達を頼む。俺が見てくる。」
「気をつけて、ギルマス。」
バルドが匂いを辿り近づいていけば、鼻が曲がるような強烈な匂いと、百合の花のような強い香りが混ざり濃くなっていく。枝を掻き分けさらに奥へと進み、その先に見えた光景に、バルドは目を瞠った。
木に磔にされた人と、既に腐りはじめている馬や人の遺骸が山と積まれていた。その死肉を獣や魔獣達が群がり貪っている。バルドが一歩近づくと、バルドの持つ獣避けの布玉に反応したのか、獣と魔獣がじりじりと後退り離れていった。
バルドはゆっくりと磔にされた人へと近付く。その首には何かの袋が掛けられていた。
バルドは恐る恐る腕を伸ばし、その人の心臓に手を当てる。
「…ハウノ…。」
何の反応も返さないその人の胸は、命が終わっている事を示していた。
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