魔法使いの弟子、のはず ~その依頼、魔法を使わず解決します~

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脱サラ爺さん赤ん坊を拾う

やるなよ!絶対にやるなよ! 2

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「わしが母乳で育てるんじゃ」

 母乳が一番だというなら、そうすればいいのです。

「……」

 反射的にラファエロの胸元を凝視してしまった副院長でしたが、我に返ると「止めてください。というか無理です」と、表情の抜け落ちた顔で即答しました。

「特異体質でもない限り、母乳は出産前後の女性しか出ません」
「その辺も上手く再現できんかのう」

 本物の授乳婦を鑑定して、体内の状態を模倣すればいけるんじゃないか、とラファエロは続けました。

「止・め・て・く・だ・さ・い」

 安易にライン越えしようとするラファエロを、副院長はすかさずブロックしました。

「でも、」
「出産後に母乳が出なくて苦しんでいる女性も沢山いるんです。そんなに簡単なものではありません。それに子どもの気持ちも考えてください」

 女体化した養父に授乳されていたなんて、成長したミカエルが知れば心に傷を負うか、性癖が歪んでしまうかの二択です。

「小さな村ですが山羊なら市場で買えます。判断に困ったら、相談してください。離乳食も段階があるので、都度お教えしますから」
「……はい」

 先ほどまでの穏やかな雰囲気はどこへやら。無表情で説教されて、ラファエロは縮こまりました。
 こうして副院長のファインプレーにより、ミカエルはトラウマを回避したのでした。



 オズテリアの正式な国民として生きていくなら、洗礼は欠かせません。
 村長の家を出たラファエロは、村の中央にある教会へと足を運びました。
 そこは耳の遠い老司祭と、恰幅の良い修道女しかいない古びた教会でした。

「アンタ! 洗礼式ってのは夫婦揃って参加するもんだよ! 子育ては両親が協力して行うもんなんだ。最初から躓いてどうするんだい!」

 恰幅だけでなく威勢も良い修道女です。

「ええと、……妻はおらんのだ」
「アンタ! その外見で嫁に逃げられるなんて、どんだけ甲斐性無しなんだい!」
「その、……わしは未婚で。この子は、このたび引き子取ることにした子じゃ」
「男手一つで子どもを育てる気かい!? まだ結婚を諦めるには早いよ!」
「ううむ、……わし、こう見えて結構歳いっとるんじゃが」

 目算ですが、彼女の二倍は生きているでしょう。

「そうかい。覚悟が決まっているならアタシはもう何も言わないよ。もし結婚して実子ができても、差別したら許さないからね」

 何も言わないと言った舌の根の乾かぬうちに、滅茶苦茶口出ししてきました。

「それに関しては心配無用じゃ」

 ラファエロはキッパリと言い切りました。七十余年何もなかったのですから、今更そんなことになるとは思いません。

「決めつけるんじゃないよ、何があるかわからないのが人生だからね。……それはそうと、ずいぶん綺麗な子だね。修道女として長年洗礼式を執り行ってきたけど、こんなに可愛い赤ん坊は初めて見るよ。この道三十年のアタシが保証するけど、この子は傾国の美女になるだろうよ!」

「……」

「父親になるなら、悪い虫が寄ってこないよう守ってやんな!」

「……うむ」

 自信満々で力説する修道女に「男の子なんじゃが」とは言えず、ラファエロは曖昧に頷いたのでした。
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