魔法使いの弟子、のはず ~その依頼、魔法を使わず解決します~

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姿なき呪い

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「ほほいほいほい」

 ラファエロが軽く指を振るうと、明らかに指の動きに連動していない複雑な魔法陣が宙に浮かび上がりました。

「ほれ。やってみい」
「その間抜けなかけ声も再現しないといけませんか?」
「言葉に悪意を感じる!」
「すみません。クソダサいかけ声に訂正します」
「言い直した方が悪化しとる!」

 いつもの軽口ではなく本当に嫌だったようで、ミカエルは無言で魔法を展開しました。

「ううむ。修行の時は素直に魔法を使うのにのう」

 高い魔力以外にも。ミカエルには魔法使いとしてのセンスがあります。
 こまっしゃくれていますが根は勤勉なので、このまま成長すれば一流の魔法使いになるでしょう。

「どうして依頼時には、魔法を使おうとせんのじゃろうなあ」
「……必要ないからです」
「ぬお!? 聞こえとったんか」
「むしろこの距離で聞こえないはすがないでしょう。若作りを解除した師匠じゃあるまいし」
「のう、ミカエルさんや。今日はちょいと火力高くない? どうしたんじゃ。話聞くぞ」

 いつもより言葉に棘がある気がします。

「気のせいです。被害妄想は認知症の始まりらしいですよ」
「いや、気のせいじゃない! 今ので確信したわい!」

 修行そっちのけで二人が言い合っていると、玄関に取り付けた呼び鈴が鳴りました。



 訪問者は立派な出で立ちの紳士でした。三十代後半ということですが、もっと若く見えます。
 普段は上等なソファに座っているのでしょう。木枠にクッションを敷きつめただけのソファの座り心地が悪かったのか、僅かに顔を顰めると浅く腰掛け直しました。

「先日手紙を送ったロベルト・ボスコです。海辺の町で商会を営んでいます」

 商売をしているだけあり、人前で喋るのに慣れている様子です。

「もしかしてボスコ商会の会長かの?」
「ええ、そうです! 我が国が誇る【不滅】の魔法使い様に存じていただいていたなんて、大変光栄です!」

 ラファエロが商会の名を知っていたことに、ロベルトは大袈裟なくらい喜びました。
 彼の依頼は、自分に呪いがかけられているか調べて欲しいとのことでした。

「地元の魔法使いにも依頼しましたが、なんの成果も出しませんでした。なので、ご高名なラファエロ様ならばと。どうかわたしをお救いください」
「困ったのう」

 他の魔法使いが失敗しているのであれば、半人前のミカエルでは荷が重いかもしれません。
 とはいえ最初からラファエロが依頼を請けてしまうのは得策ではありません。あくまで依頼は弟子の修行の一環、ラファエロはフォローするというスタンスが揺らいでしまいます。
 一度例外ができれば、なし崩し的に本来であれば冒険者ギルドや国に陳情を出すべき難しい依頼を持ち込まれかねません。

「命が掛かっておりますので、報酬は惜しみません」
「そういう問題じゃないんじゃ。既にわしは引退した身、依頼をこなすのはあくまでこの子じゃ。それで構わんのなら引きうけよう」

 商人相手に隙を見せると、簡単に丸め込まれてしまうのがわかっているので、ラファエロはいつもより強固な態度をとりました。
「いざとなったら、わしが代わりに」だの「弟子が主体じゃが、わしもサポートに入る」なんて言おうものなら、いいようにされてしまうでしょう。

「……ラファエロ様が同行されるのでしたら是非」

 案の定ロベルトは条件を出してきました。
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