魔法使いの弟子、のはず ~その依頼、魔法を使わず解決します~

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姿なき呪い

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「――部屋の確認が終わりました。ロベルトさん、普段は何時頃までこの部屋でお仕事されているんですか?」

「ここで行うのは商会とは関係ない仕事だ。私個人に来た招待、融資の依頼などの手紙を処理した後は、家関係の書類があれば片付ける。今は税処理や予算を組む時期じゃないから、今日は手紙を片付けたらこの部屋でやることはない」

 親子のやり取りを遮るように報告したミカエルでしたが、二人の会話については口出ししませんでした。部屋に漂う微妙な空気をスルーして、依頼をこなすことを優先します。
 力になるどころか場の空気を悪くしそうなので、マリアは別行動することにしました。
 彼女が離脱した後、四人は商会に移動しました。



 ロベルトは一日の大半を商会長の執務室で過ごしています。

「現場に出たり、倉庫を見に行ったりはしないんですか?」
「それは私の仕事じゃない」

 部屋の確認を終えたラファエロとミカエルは、来客用のソファに座ってロベルトたちの仕事ぶりを眺めていました。
 たまに書類にサインが欲しいと職員がやってきましたが、滞在時間はごく短く、ロベルトとは事務的な会話のみ。
 険悪な雰囲気ではないものの、お互いに最低限のことしか口にしていませんでした。



 時刻を知らせる鐘が聞こえる度に、ロベルトは小休憩に入りました。
 正確にはミス・グリーンがお茶を淹れてくるので、強制的に手を止めることになるのです。

「定期的に休憩時間を組み込み、作業時間を区切っています。集中力が低下する前に休憩に入ることで、疲労を軽減しつつ、効率よく仕事をこなせるようになります」
「ああ。ぼくもその方法が書かれた本を読んだことがあります」

 しかしミカエルが読んだ本とは少し違います。
 彼が読んだのはもっと短い時間で作業と小休憩のサイクルを行い、四回繰り返したら一度長めの休憩をとるというものでした。
 ミス・グリーンが行っているのは、作業も休憩も記憶にある方法の倍の時間で行っています。

「昨日から思っていましたが、とても博識でいらっしゃいますね。そのくらいのレベルでないと、大魔法使い様の弟子にはなれないのでしょうか」
「ぼくが弟子になったのは単なる運です。師匠がお人好しなだけです」
「そんな言い方をするでない。数えきれんほど弟子入り希望者はおったが、この歳になるまで弟子にしたのはおぬし一人じゃ。運ではなく、縁じゃ」

 ラファエロの言葉に照れたのか、ミカエルの薄い耳が桜貝のように色づきました。



 昼を知らせる鐘が鳴りました。ラファエロの山小屋と違い、町中にある建物なので、鐘の音がよく聞こえます。

「お昼はいつもどうしているんですか?」

「繁忙期はこの部屋に持ってきてもらいますが、今はその時期ではありません。以前は外食されることが多かったようですが、今は取引先と約束があるときだけ外出されています。頻度としては月に二回程度でしょうか」

 ミカエルの問いに、本人よりも先んじてミス・グリーンが答えました。

「気分転換を兼ねて外に出ていたんだが、彼女に控えるよう提言されたんだ」
「店で出される料理は万人向けの味付けなので調味料が多く使われていたり、大量に調理するので酸化した油を使っているのです。栄養バランスも偏りますので」
「彼女の意見は、どれも私の体を案じてのものだ。無下にはできない」

(娘の提案は無下にするどころか、怒鳴り散らしていたのにな)と、ミカエルは内心でツッコミました。
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