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第六章 初恋は時空を超えて
魔法試験と山田の毛布
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衝撃の一夜が明けて。
階段から落ちたショックで、ゲームのハナコと中身が入れ替わっただとか。
その上、華子になった向こうのハナコが、山田選んで結婚しただなんてさ。本名・山田華子とか、区役所の記入見本かっつうの。
もうシャレにならないの連続で、消化するのに時間がかかりそう。
とにかく、今言えるのはこれだけかな。
あっちのハナコには悪いけど、こっちでハナコになった華子は、ハナコ・ヤーマダになるつもりはこれっぽっちもなくってよ。
ってか、ややこしいな。
そんな後戻りできない世界線で、それでも最近は平和な毎日を送れてる。
山田とは学園ですれ違う程度なんだけど、どこまでも視線を感じるのは相変わらずで。
今学期が終わって、冬休みと三学期を過ごしたら、卒業を迎えるって流れは日本式なんだよね。
最後の最後は卒業パーティーが待っていて、王子が結婚相手を選ぶシーンで晴れてゲームのエンディング。
これさえ乗り切っちゃえば、ゲームの世界はそこで終了するはずなんだ。
今の状況で山田がわたしを指名することはあり得ないし、卒業後は未知のワンダフルライフが待っている!
とりあえず目下の目標はそこって感じ。
そのためには無事に単位を取らないといけなくて。
いろいろあってハナコは休みがちだったから、真面目に授業を受けないとなんだよね。
「では、次はハナコ・モッリ君。日々の成果を見せてもらおうか」
「はい、先生」
で、今日は魔法学の試験の日。二学期にある中間テスト。
自分の魔力の特性を生かして、オリジナルの技を披露するって課題。それを先生が採点してその場で合否が確定するんだ。
順番に呼ばれて、みんなの前でやらなくちゃなんなくて。一発勝負だし、緊張も半端ない。
「ハナコ様、ご健闘をお祈りしております!」
「普段通りになされば大丈夫に決まっていますわ!」
「そうですわ、ハナコ様ならやり遂げられます!」
う、あんまり煽らないどいて。
余計に緊張しちゃうからっ。
先生に眼光鋭く見つめられながら、用意しておいたティッシュを一枚取り出した。
軽く丸めてから教壇の机の上に置く。
ふぅーっと長い息を吐いて精神統一。それからティッシュに向けて手をかざした。
異様に静まり返った教室で、みんなが固唾を飲んで見守っている。
(焦らない、集中集中……)
手のひらがじんわりしてきて、魔力がたまってきたのを感じ取った。
(よし、今よっ!)
魔力を一気に解き放つと、丸めたティッシュがポンと斜めに跳ね上がる。
机のはしっこを越えて、その先にあったゴミ箱へとティッシュはぽすんと飛び込んだ。
(っしゃあ……!!)
見事なホールインワンに、思わず心の中でガッツポーズ。
もちろん表向きはちゃんと令嬢然としてたけど。
「さすがはハナコ様、お見事ですわっ!」
「なんて華麗な魔法なんでしょう!」
「あのティッシュの動き、誰にも真似はできませんわ!」
見え透いたヨイショを当然のように受け取って。
内心は虚しさでいっぱいだよっ。
「このくらいの魔法、わたくしの手にかかれば造作もなくってよ」
なのに気づけば、おほほほほって高笑いしてた。
やだ、ハナコってば。悪役令嬢は廃業したんだから、条件反射みたいに顔出さないでよっ。
「ふむ、ずいぶんと努力したようだね」
「いえ、先生。わたくしの魔力ではこの程度が精いっぱいで……」
「いいや、前回よりも格段に進歩している。生まれついた素養はどうにもならないが、持てる能力を伸ばせるかどうかは個々の頑張り次第だ」
「では、先生……」
「うむ、君は試験合格だ。おめでとう、ハナコ・モッリ君」
やった! 評価が公文式でよかったって感じだし。
にしても腐らずに頑張った甲斐はあったよね。
「次回は卒業試験、さらなる高みを期待しているよ」
って、これ以上は無理ですってば、先生っ。
とほほってなりつつも、拍手喝采を浴びながら席に戻った。
その放課後、取り巻き令嬢たちと学園の庭でティータイム。
今日未希はいないけど、今残ってる取り巻きたちはみんないい子ばっかり。何の問題もなく平和そのもので。
小春日和な感じでポカポカ陽気が心地いいな。試験で魔力を使ったからか、なんだかウトウトしちゃって眠気が抑えられないや。
「あら、ハナコ様、眠っていらっしゃるわ」
「今日の試験でお疲れになったのね」
「そうね。このままそっとしておいてさしあげましょう」
小声で会話しながら、取り巻き令嬢が静かに微笑みあっている。
なんかまだ起きてるよって言い出しにくい雰囲気なんですけど。
「ハナコ様、最近変わられましたわよね」
「あなたもそうお思いになる? わたくしも以前よりおやさしくなられたなって」
「というより、元々お持ちだった令嬢の誇りに、慈愛が加わってさらに強くなられたような……」
ちょっと、むずがゆいこと言わないでっ。
でもいい人キャンペーン、地道に続けた結果が順調に芽を出してるな。わたしに聞こえてないと思ってる分だけ、この会話はウソ偽りのない本音だろうし。
「それにしても寝姿もお美しくていらっしゃいますこと」
「本当に。まるで地に降り立った女神のようですわ」
やだ、もっと言って!
じゃなくて、ますます起きづらくなっちゃった。
起きるタイミングを見失ってたら、囁き合っていた令嬢たちが一斉に口をつぐんだ。
ん? なんかあったのかな?
みんなからやけに緊張感が伝わって来るんですけど。
「しっ、大きな声を立てないでくれ」
げっこの声、山田じゃない?
ひとが寝こけてるからって、しめしめって近づいて来たんか。
起きたら顔合わせて会話しなきゃなんないし、寝顔を見られたままなのもなんかシャクだし。
追い払うか、タヌキ寝入りを続けるか。
どっちにするか迷っていたら、体にふわっと毛布みたいな布がかけられた。
「体を冷やすのは良くないからな。目覚めたら、このブランケットは君たちがかけたことにしておいてくれ」
「仰せのままに、王子殿下」
誰かがそう返事して。
みんなの緊張感が解けたのを感じて、山田がいなくなったことが分かった。
多分、転移魔法で突然現れたんだな。
ってか、まだわたしの動向見張ってたのか。
あきらめが悪すぎて、ため息しか出ないんですけど。
「シュン王子もお可哀そうよね。いつもハナコ様を目で追っていらっしゃいますもの」
「この前なんかハナコ様に見惚れたまま、廊下の壁にぶつかってらしたわ」
「生徒会のお仕事も手に付かないそうで、ダンジュウロウ様たちがお忙しくされているって話も聞きましたし」
何とかして差し上げたいわねって、そんなこと言われても。
わたしにはどうすることもできないし、失恋の傷ってさ、時間が癒してくれるもんなんじゃない?
「むしろお可哀そうなのはハナコ様ですわ。大勢の前であんな不埒な行いをされたんですもの」
お、いいコト言ってくれるね。援護射撃、大歓迎。
「ご婚姻前は貞淑であるべきと、きっとハナコ様はそうお考えなのですわ」
「そうね、誇り高い方ですものね」
「シュン王子もきちんとした手順を踏んでくださらないと。ハナコ様がお気の毒でならないわ」
いや、手順を踏まれても困るんですけど。
王様の命令で婚約とかなったら、モッリ公爵家としては断ることができなくなっちゃうし。
「なんにせよ、未来の王妃様はハナコ様になっていただきたいものですわね」
「わたくしもそう思いますわ。ハナコ様以上にふさわしい方はいらっしゃいませんもの」
ハナコってば、世間ではそんなふうに思われてるの?
公爵令嬢の立場的には鼻高だけど。
だからと言って王妃になんてなりたくないし。
ようやく断罪ざまぁを回避できそうってとこまでこぎつけたんだから、これ以上邪魔なんてされたくないよ。
やだやだ、山田のせいで暗くなっちゃった。
せっかく試験もパスできたし、ここは理想のイケメンでも想像して明るい気分をとりもどそうっと。
「あら? ハナコ様、何か良い夢でも見てらっしゃるのかしら?」
「ふふ、本当。とっても楽しそうな寝顔をされてますこと」
ってか、起きるタイミング、完全に見失っちゃったしっ。
なんて、割とのんきに過ごせてたんだけど。
外の圧力と山田の悪あがき。
その両方に苦しめられることになるだなんて、このときは夢にも思わなかったんだよね。
まったく、クソデカため息だよっ。
階段から落ちたショックで、ゲームのハナコと中身が入れ替わっただとか。
その上、華子になった向こうのハナコが、山田選んで結婚しただなんてさ。本名・山田華子とか、区役所の記入見本かっつうの。
もうシャレにならないの連続で、消化するのに時間がかかりそう。
とにかく、今言えるのはこれだけかな。
あっちのハナコには悪いけど、こっちでハナコになった華子は、ハナコ・ヤーマダになるつもりはこれっぽっちもなくってよ。
ってか、ややこしいな。
そんな後戻りできない世界線で、それでも最近は平和な毎日を送れてる。
山田とは学園ですれ違う程度なんだけど、どこまでも視線を感じるのは相変わらずで。
今学期が終わって、冬休みと三学期を過ごしたら、卒業を迎えるって流れは日本式なんだよね。
最後の最後は卒業パーティーが待っていて、王子が結婚相手を選ぶシーンで晴れてゲームのエンディング。
これさえ乗り切っちゃえば、ゲームの世界はそこで終了するはずなんだ。
今の状況で山田がわたしを指名することはあり得ないし、卒業後は未知のワンダフルライフが待っている!
とりあえず目下の目標はそこって感じ。
そのためには無事に単位を取らないといけなくて。
いろいろあってハナコは休みがちだったから、真面目に授業を受けないとなんだよね。
「では、次はハナコ・モッリ君。日々の成果を見せてもらおうか」
「はい、先生」
で、今日は魔法学の試験の日。二学期にある中間テスト。
自分の魔力の特性を生かして、オリジナルの技を披露するって課題。それを先生が採点してその場で合否が確定するんだ。
順番に呼ばれて、みんなの前でやらなくちゃなんなくて。一発勝負だし、緊張も半端ない。
「ハナコ様、ご健闘をお祈りしております!」
「普段通りになされば大丈夫に決まっていますわ!」
「そうですわ、ハナコ様ならやり遂げられます!」
う、あんまり煽らないどいて。
余計に緊張しちゃうからっ。
先生に眼光鋭く見つめられながら、用意しておいたティッシュを一枚取り出した。
軽く丸めてから教壇の机の上に置く。
ふぅーっと長い息を吐いて精神統一。それからティッシュに向けて手をかざした。
異様に静まり返った教室で、みんなが固唾を飲んで見守っている。
(焦らない、集中集中……)
手のひらがじんわりしてきて、魔力がたまってきたのを感じ取った。
(よし、今よっ!)
魔力を一気に解き放つと、丸めたティッシュがポンと斜めに跳ね上がる。
机のはしっこを越えて、その先にあったゴミ箱へとティッシュはぽすんと飛び込んだ。
(っしゃあ……!!)
見事なホールインワンに、思わず心の中でガッツポーズ。
もちろん表向きはちゃんと令嬢然としてたけど。
「さすがはハナコ様、お見事ですわっ!」
「なんて華麗な魔法なんでしょう!」
「あのティッシュの動き、誰にも真似はできませんわ!」
見え透いたヨイショを当然のように受け取って。
内心は虚しさでいっぱいだよっ。
「このくらいの魔法、わたくしの手にかかれば造作もなくってよ」
なのに気づけば、おほほほほって高笑いしてた。
やだ、ハナコってば。悪役令嬢は廃業したんだから、条件反射みたいに顔出さないでよっ。
「ふむ、ずいぶんと努力したようだね」
「いえ、先生。わたくしの魔力ではこの程度が精いっぱいで……」
「いいや、前回よりも格段に進歩している。生まれついた素養はどうにもならないが、持てる能力を伸ばせるかどうかは個々の頑張り次第だ」
「では、先生……」
「うむ、君は試験合格だ。おめでとう、ハナコ・モッリ君」
やった! 評価が公文式でよかったって感じだし。
にしても腐らずに頑張った甲斐はあったよね。
「次回は卒業試験、さらなる高みを期待しているよ」
って、これ以上は無理ですってば、先生っ。
とほほってなりつつも、拍手喝采を浴びながら席に戻った。
その放課後、取り巻き令嬢たちと学園の庭でティータイム。
今日未希はいないけど、今残ってる取り巻きたちはみんないい子ばっかり。何の問題もなく平和そのもので。
小春日和な感じでポカポカ陽気が心地いいな。試験で魔力を使ったからか、なんだかウトウトしちゃって眠気が抑えられないや。
「あら、ハナコ様、眠っていらっしゃるわ」
「今日の試験でお疲れになったのね」
「そうね。このままそっとしておいてさしあげましょう」
小声で会話しながら、取り巻き令嬢が静かに微笑みあっている。
なんかまだ起きてるよって言い出しにくい雰囲気なんですけど。
「ハナコ様、最近変わられましたわよね」
「あなたもそうお思いになる? わたくしも以前よりおやさしくなられたなって」
「というより、元々お持ちだった令嬢の誇りに、慈愛が加わってさらに強くなられたような……」
ちょっと、むずがゆいこと言わないでっ。
でもいい人キャンペーン、地道に続けた結果が順調に芽を出してるな。わたしに聞こえてないと思ってる分だけ、この会話はウソ偽りのない本音だろうし。
「それにしても寝姿もお美しくていらっしゃいますこと」
「本当に。まるで地に降り立った女神のようですわ」
やだ、もっと言って!
じゃなくて、ますます起きづらくなっちゃった。
起きるタイミングを見失ってたら、囁き合っていた令嬢たちが一斉に口をつぐんだ。
ん? なんかあったのかな?
みんなからやけに緊張感が伝わって来るんですけど。
「しっ、大きな声を立てないでくれ」
げっこの声、山田じゃない?
ひとが寝こけてるからって、しめしめって近づいて来たんか。
起きたら顔合わせて会話しなきゃなんないし、寝顔を見られたままなのもなんかシャクだし。
追い払うか、タヌキ寝入りを続けるか。
どっちにするか迷っていたら、体にふわっと毛布みたいな布がかけられた。
「体を冷やすのは良くないからな。目覚めたら、このブランケットは君たちがかけたことにしておいてくれ」
「仰せのままに、王子殿下」
誰かがそう返事して。
みんなの緊張感が解けたのを感じて、山田がいなくなったことが分かった。
多分、転移魔法で突然現れたんだな。
ってか、まだわたしの動向見張ってたのか。
あきらめが悪すぎて、ため息しか出ないんですけど。
「シュン王子もお可哀そうよね。いつもハナコ様を目で追っていらっしゃいますもの」
「この前なんかハナコ様に見惚れたまま、廊下の壁にぶつかってらしたわ」
「生徒会のお仕事も手に付かないそうで、ダンジュウロウ様たちがお忙しくされているって話も聞きましたし」
何とかして差し上げたいわねって、そんなこと言われても。
わたしにはどうすることもできないし、失恋の傷ってさ、時間が癒してくれるもんなんじゃない?
「むしろお可哀そうなのはハナコ様ですわ。大勢の前であんな不埒な行いをされたんですもの」
お、いいコト言ってくれるね。援護射撃、大歓迎。
「ご婚姻前は貞淑であるべきと、きっとハナコ様はそうお考えなのですわ」
「そうね、誇り高い方ですものね」
「シュン王子もきちんとした手順を踏んでくださらないと。ハナコ様がお気の毒でならないわ」
いや、手順を踏まれても困るんですけど。
王様の命令で婚約とかなったら、モッリ公爵家としては断ることができなくなっちゃうし。
「なんにせよ、未来の王妃様はハナコ様になっていただきたいものですわね」
「わたくしもそう思いますわ。ハナコ様以上にふさわしい方はいらっしゃいませんもの」
ハナコってば、世間ではそんなふうに思われてるの?
公爵令嬢の立場的には鼻高だけど。
だからと言って王妃になんてなりたくないし。
ようやく断罪ざまぁを回避できそうってとこまでこぎつけたんだから、これ以上邪魔なんてされたくないよ。
やだやだ、山田のせいで暗くなっちゃった。
せっかく試験もパスできたし、ここは理想のイケメンでも想像して明るい気分をとりもどそうっと。
「あら? ハナコ様、何か良い夢でも見てらっしゃるのかしら?」
「ふふ、本当。とっても楽しそうな寝顔をされてますこと」
ってか、起きるタイミング、完全に見失っちゃったしっ。
なんて、割とのんきに過ごせてたんだけど。
外の圧力と山田の悪あがき。
その両方に苦しめられることになるだなんて、このときは夢にも思わなかったんだよね。
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