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第6話 勇者の部屋
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薄暗い部屋でロランは眠っていた。
シャツがはだけた腹部には包帯が巻かれ、ところどころ血がにじみ出している。
「あの、勇者寝てるみたいだし、勝手に入ったりしちゃまずいんじゃ?」
「大丈夫大丈夫」
戸惑うアメリを、ヴィルジールは半ば無理やり奥へと引き入れた。
かと思うと、自分はすぐに部屋を出ていこうとする。
「じゃあアメリ、ロランのことしっかり癒してあげて」
「え? 癒すってどうやって?」
慌ててヴィルジールを引き留めた。
アメリは医者でもなければ、サラのように治癒魔法も使えない。
「官能だよ」
「カン……ノウ?」
うまく言葉を変換できなくて、アメリは頭を傾ける。
「だから官能だってば。なぁに、簡単だよ。アメリが女性として性的快楽を得れば、ロランの怪我は綺麗さっぱり治るから」
「はぁ!?」
「そんな訳で、頑張って気持ちよくなって」
そう言い残すと、その場からパッとヴィルジールの姿がかき消えた。
「頑張って気持ちよくなる……?」
呆然と残された部屋の中、ロランのうめき声が小さく漏れた。
「勇者……?」
恐る恐る覗き込むと、ロランは苦しげに目を閉じていた。
額に浮かぶ玉のような汗にその辛さが伺える。
ヴィルジールの言うことなど、まるで意味が分からなかった。
何しろアメリに男性経験はない。恋人すらできたことはなくて、何をどうしたらいいのかさっぱりだ。
とりあえず看病といえばと思い、枕元にあった布で汗を拭ってみた。
「熱い……」
その熱さに驚いて、自分の冷えた手をおでこに添える。
アメリの掌が気持ちよかったのか、ロランの表情がいく分か和らいだ。
端正な顔を覗きこむ。そんな場合ではないというのに、アメリは思わずロランに見惚れてしまった。
「ほりが深くて鼻筋も通ってて……まつ毛もすごい長い……」
勇者でなくとも女たちが群がるのがよく分かる。
恋をしたことがないアメリでも、見ているだけでドキドキしてきてしまった。
身じろいだロランに驚いて、乗せた手を思わず離す。それを制するように、ロランの大きな手がつかみ取ってきた。
握ったままのアメリの掌を自分の頬に当て、ロランはひとつ息をついた。続けてすぅと穏やかな寝息が聞こえてくる。
「ちょっと楽になったみたい……?」
冷たい手で楽になったのだろうか。ベッドのふちに腰掛け、アメリは両手でロランの頬を包み込んだ。
しばらくそのままでいたが、ロランはずっと眠ったままだ。
苦しそうだった表情が和らいでいるように思えても、体はまだまだ熱かった。
傷が癒える様子もなくて、これ以上何をすればいいのかとアメリは途方に暮れてしまった。
「やっぱりサラさんを呼んでこよう」
このまま自分がこうしていても、ロランが回復するようには思えない。
頬から手を離して立ちあがろうとした瞬間、手首をつかまれアメリは強く引き寄せられた。
シャツがはだけた腹部には包帯が巻かれ、ところどころ血がにじみ出している。
「あの、勇者寝てるみたいだし、勝手に入ったりしちゃまずいんじゃ?」
「大丈夫大丈夫」
戸惑うアメリを、ヴィルジールは半ば無理やり奥へと引き入れた。
かと思うと、自分はすぐに部屋を出ていこうとする。
「じゃあアメリ、ロランのことしっかり癒してあげて」
「え? 癒すってどうやって?」
慌ててヴィルジールを引き留めた。
アメリは医者でもなければ、サラのように治癒魔法も使えない。
「官能だよ」
「カン……ノウ?」
うまく言葉を変換できなくて、アメリは頭を傾ける。
「だから官能だってば。なぁに、簡単だよ。アメリが女性として性的快楽を得れば、ロランの怪我は綺麗さっぱり治るから」
「はぁ!?」
「そんな訳で、頑張って気持ちよくなって」
そう言い残すと、その場からパッとヴィルジールの姿がかき消えた。
「頑張って気持ちよくなる……?」
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「勇者……?」
恐る恐る覗き込むと、ロランは苦しげに目を閉じていた。
額に浮かぶ玉のような汗にその辛さが伺える。
ヴィルジールの言うことなど、まるで意味が分からなかった。
何しろアメリに男性経験はない。恋人すらできたことはなくて、何をどうしたらいいのかさっぱりだ。
とりあえず看病といえばと思い、枕元にあった布で汗を拭ってみた。
「熱い……」
その熱さに驚いて、自分の冷えた手をおでこに添える。
アメリの掌が気持ちよかったのか、ロランの表情がいく分か和らいだ。
端正な顔を覗きこむ。そんな場合ではないというのに、アメリは思わずロランに見惚れてしまった。
「ほりが深くて鼻筋も通ってて……まつ毛もすごい長い……」
勇者でなくとも女たちが群がるのがよく分かる。
恋をしたことがないアメリでも、見ているだけでドキドキしてきてしまった。
身じろいだロランに驚いて、乗せた手を思わず離す。それを制するように、ロランの大きな手がつかみ取ってきた。
握ったままのアメリの掌を自分の頬に当て、ロランはひとつ息をついた。続けてすぅと穏やかな寝息が聞こえてくる。
「ちょっと楽になったみたい……?」
冷たい手で楽になったのだろうか。ベッドのふちに腰掛け、アメリは両手でロランの頬を包み込んだ。
しばらくそのままでいたが、ロランはずっと眠ったままだ。
苦しそうだった表情が和らいでいるように思えても、体はまだまだ熱かった。
傷が癒える様子もなくて、これ以上何をすればいいのかとアメリは途方に暮れてしまった。
「やっぱりサラさんを呼んでこよう」
このまま自分がこうしていても、ロランが回復するようには思えない。
頬から手を離して立ちあがろうとした瞬間、手首をつかまれアメリは強く引き寄せられた。
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