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第一部 家庭教師と教え子編
第6話 最強の魔術師1
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魔術師長に呼ばれた部屋で、一緒に待っていたのはマリカ王女だった。
面倒事の予感しかない。
とりあえずシルヴェステルは普段通りの態度で相手の出方を伺った。
「シルヴェステルよ、今日呼び出したのは他でもない……」
「あなたをわたくしの家庭教師に格上げしてあげるわ。光栄に思いなさい」
魔術師長の言葉にかぶせ気味でマリカが言った。
その顔には受けて当然と書いてある。
「お断りします」
間髪入れずに返事をした。
あまりの即答加減にマリカの口がパクパクとなっている。
(どんなくだらないことかと思ったら……)
内心やれやれとなりながら、シルヴェステルは魔術師長を見やった。
こちらの顔にはそう言うと思ったと書いてある。
(だったら始めから話を通さないでほしいものですね)
シルヴェステルはその優秀さゆえに多忙を極める毎日だ。
こと防壁の修理・修復に関してはほかの魔術師では手に負えず、あちこちからヘルプ要請が後を絶たないでいる。
「話はそれだけですか? ではわたしはこれで失礼させていただきます」
「ちょっと、待ちなさい!」
まさか断られるとは思ってもみなかったのだろう。
立ちふさがったマリカは憤怒の形相だ。
「このわたくしが言っているのよ! 素直にはいとだけ返事なさい!」
「そうおっしゃられましても、お受けできないものはお受けできません」
「受ける受けないの問題じゃないでしょう!? 王女であるわたくしが命令しているの! これは決定事項よ!」
「恐れながら、わたしが雇われているのは国の機関である魔導院です。マリカ王女に従う義務などわたしにはありませんね」
「なんですって!」
真っ赤になったマリカとは対照的に、涼しげな顔のシルヴェステルは平常運転だ。
苦虫をかみつぶしたような表情で、魔術師長は黙ってふたりのやりとりを見守っている。
「そんなに命令をしたければ、王族に忠誠を誓った貴族相手になさってください。皆よろこんでマリカ王女に従うでしょう」
「生意気を……お父様に言えば解雇だってできるのよ? それとも国外追放にでもされたいかしら?」
「どうぞご自由に」
国から放り出されたところで、シルヴェステルならどうとでも生きていけるだろう。
それにあの抜け目のないユハ王が、こんな幼稚な我が儘を聞き入れるとは思えない。
「わたくしにそんな口を利いて……後悔しても知らないわよ」
「ですからご自由にと申し上げています」
慇懃無礼な態度のまま、シルヴェステルはマリカを見下ろした。
マリカが言い返しそうになったところを魔術師長が割って入ってくる。
「マリカ王女、国の防壁の維持にシルヴェステルは欠かせない人材ですぞ。それを追放するなど正気の沙汰ではございませんな」
「だってこの男、わたくし相手にあんまりにも無礼だわ! 従わないなら死刑にしたって構わないのよ!?」
「王女はスロ王の暗黒時代を再現なさるおつもりか!」
ぴしゃりと言われたマリカは口ごもった。
この国ではかつて暴君による恐怖政治が行われていた。王の命令に従わない多くの者が見せしめで処刑された黒歴史だ。
特に魔力を持つ女性にとっては過酷な時勢で、子を産む道具のように扱われていたという記録が残っている。
魔に対抗するために産めよ増やせよで、複数人の男の子供を身ごもらされた者が大勢いたと言う。
「アレクサンドラ様の偉業でようやく訪れた平和ですぞ。マリカ王女はもう一度歴史の勉強をやり直す必要があるようですな」
「な、なによ。そこまで大袈裟に言ってないでしょう。不愉快だわ!」
そう吐き捨てて、マリカは部屋を飛び出して行った。
傍若無人なマリカに日々手を焼いているのだろう。魔術師長は長く重い息を吐いた。
面倒事の予感しかない。
とりあえずシルヴェステルは普段通りの態度で相手の出方を伺った。
「シルヴェステルよ、今日呼び出したのは他でもない……」
「あなたをわたくしの家庭教師に格上げしてあげるわ。光栄に思いなさい」
魔術師長の言葉にかぶせ気味でマリカが言った。
その顔には受けて当然と書いてある。
「お断りします」
間髪入れずに返事をした。
あまりの即答加減にマリカの口がパクパクとなっている。
(どんなくだらないことかと思ったら……)
内心やれやれとなりながら、シルヴェステルは魔術師長を見やった。
こちらの顔にはそう言うと思ったと書いてある。
(だったら始めから話を通さないでほしいものですね)
シルヴェステルはその優秀さゆえに多忙を極める毎日だ。
こと防壁の修理・修復に関してはほかの魔術師では手に負えず、あちこちからヘルプ要請が後を絶たないでいる。
「話はそれだけですか? ではわたしはこれで失礼させていただきます」
「ちょっと、待ちなさい!」
まさか断られるとは思ってもみなかったのだろう。
立ちふさがったマリカは憤怒の形相だ。
「このわたくしが言っているのよ! 素直にはいとだけ返事なさい!」
「そうおっしゃられましても、お受けできないものはお受けできません」
「受ける受けないの問題じゃないでしょう!? 王女であるわたくしが命令しているの! これは決定事項よ!」
「恐れながら、わたしが雇われているのは国の機関である魔導院です。マリカ王女に従う義務などわたしにはありませんね」
「なんですって!」
真っ赤になったマリカとは対照的に、涼しげな顔のシルヴェステルは平常運転だ。
苦虫をかみつぶしたような表情で、魔術師長は黙ってふたりのやりとりを見守っている。
「そんなに命令をしたければ、王族に忠誠を誓った貴族相手になさってください。皆よろこんでマリカ王女に従うでしょう」
「生意気を……お父様に言えば解雇だってできるのよ? それとも国外追放にでもされたいかしら?」
「どうぞご自由に」
国から放り出されたところで、シルヴェステルならどうとでも生きていけるだろう。
それにあの抜け目のないユハ王が、こんな幼稚な我が儘を聞き入れるとは思えない。
「わたくしにそんな口を利いて……後悔しても知らないわよ」
「ですからご自由にと申し上げています」
慇懃無礼な態度のまま、シルヴェステルはマリカを見下ろした。
マリカが言い返しそうになったところを魔術師長が割って入ってくる。
「マリカ王女、国の防壁の維持にシルヴェステルは欠かせない人材ですぞ。それを追放するなど正気の沙汰ではございませんな」
「だってこの男、わたくし相手にあんまりにも無礼だわ! 従わないなら死刑にしたって構わないのよ!?」
「王女はスロ王の暗黒時代を再現なさるおつもりか!」
ぴしゃりと言われたマリカは口ごもった。
この国ではかつて暴君による恐怖政治が行われていた。王の命令に従わない多くの者が見せしめで処刑された黒歴史だ。
特に魔力を持つ女性にとっては過酷な時勢で、子を産む道具のように扱われていたという記録が残っている。
魔に対抗するために産めよ増やせよで、複数人の男の子供を身ごもらされた者が大勢いたと言う。
「アレクサンドラ様の偉業でようやく訪れた平和ですぞ。マリカ王女はもう一度歴史の勉強をやり直す必要があるようですな」
「な、なによ。そこまで大袈裟に言ってないでしょう。不愉快だわ!」
そう吐き捨てて、マリカは部屋を飛び出して行った。
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