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第1章 ふたつ名の令嬢と龍の託宣
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やがて、ドアが開く音がして、リーゼロッテは目的地にたどり着いたことを知り、安堵のため息をついた。ぽすんと椅子に降ろされる。見ると、昨日の応接室だった。
「あの、王子殿下とカイ様はいらっしゃらないのですか?」
ジークヴァルトとふたりきりであることに気づき、リーゼロッテは聞いた。
「ふたりは公務だ」
そう言って、ジークヴァルトは昨日と同じように、リーゼロッテを閉じ込めるように覆いかぶさった。ひとりがけのソファは逃げ場がなく、昨日のあの場面がよみがえる。
いくら婚約者とはいえ、これはまずいのではないのだろうか。リーゼロッテの危惧におかまいなしに、ジークヴァルトは胸のペンダントに手を伸ばした。
「一晩で、随分くすんだな」
石をつまみあげ、ひとりごちる。そのまま、石に口づけようとした。
慌てたリーゼロッテが、その肩を両方の手でぐいと押す。昨日の二の舞になったら、いろんな意味でもたないと思ったのだ。
「あの、ジークヴァルト様っ」
リーゼロッテの呼びかけにジークヴァルトは、その動きを止めて「なんだ?」と返した。
「あの、この守り石とは何なのですか? 子供の頃に頂いたときも青く輝いていましたが、時間と共に青銅色になりましたわ」
何とか気を逸らそうとそんなことを聞いてみる。夕べ一晩考えて、知りたいと思ったことではあるが、ひとりがけのソファに閉じ込められたこの状態を、リーゼロッテは何とか脱したかった。
「守り石とは、力ある者のみがその力を込めることができる特殊な鉱物だ。力が消費されれば元の色に戻る」
そう言いながら、ジークヴァルトはリーゼロッテの胸元の石に顔を寄せてきた。
「あの、ジークヴァルト様っ」
あわてたリーゼロッテが、再びジークヴァルトの肩に手を置いた。
「なんだ?」
「ペンダントは外しますから、直接、近づくのはおやめいただきたいのです」
「なぜだ? 問題ない」
そう言うとジークヴァルトは、あっさり石に唇を寄せた。
(なぜって、問題ありすぎです!!!)
力の限り、ジークヴァルトの肩を押すが、びくともしない。
(あああ、ジークヴァルト様の髪が、く、くすぐったいっ)
噛みついてひっぱったら、やめてくれるだろうか。そんなことを思っていると、ジークヴァルトが顔を上げた。昨日より時間が短かった気がする。
リーゼロッテは、ほっと息をついた。胸元を見ると、石が青くゆらりと輝いていた。
「もしかして……毎日、やるのですか……?」
「もしかしなくても、だ」
無表情で返すジークヴァルトに、リーゼロッテは大幅にHPを奪われたのであった。
『いや~みせつけるねー』
不意に横から言葉が紡がれた。
人の気配が全くなかった分、驚きが大きく、リーゼロッテはびくりと体を震わせた。
恐る恐る首を横に向けると、ジークヴァルトが斜め横の長椅子の上であぐらをかいて座っていた。
しかし、左右のひじ掛けにいまだ両手がつかれ、正面を見ると、自分を囲うようにしている無表情のジークヴァルトと目が合った。
再び横を見る。ジークヴァルトだ。
正面を見た。やはり無表情のジークヴァルトがいる。
再度横を見ると、あぐらをかいたジークヴァルトが笑顔を作った。それはもうにっこりと。あまりのさわやかな笑顔に、リーゼロッテは小さく悲鳴を上げた。
「ジークヴァルト様が、笑った……!」
その一言に、あぐらのジークヴァルトは、さらに相好を崩した。
「ジークヴァルト様、あちらのジークヴァルト様のお顔がおかしくて気味が悪いです!」
リーゼロッテはニコニコ顔のジークヴァルトを指さしながら、正面の不愛想なジークヴァルトに助けを求めるように訴えかけた。
「おかしいのはお前の方だ」
あきれたように、無表情のジークヴァルトが言った。
「あれはオレではない」
そう言いながら体を起こすと、ジークヴァルトはリーゼロッテの手を引いて立ち上がらせた。
「あいつはジークハルト。生きた人間ではない」
リーゼロッテの手を取り、ジークヴァルトが前に突き出すように導いた。突き出された手は、あぐらの男の体を突き抜け、長椅子の背もたれに置いてあったクッションにふれた。
「遠い祖先らしいが、とにかくこいつはオレの守護者だ」
突き抜けた手を、リーゼロッテはさっと引っ込める。
『まあ、そんなわけだから、よろしくね。リーゼロッテ』
ひらひらとリーゼロッテに手を振った守護者は、よくみるとうっすらと透けて見えた。しかも、座っているようにみえた椅子から、少し浮いたところであぐらをかいている。
『あはは、こういう反応、新鮮だなー』
固まって動かないリーゼロッテを青い瞳でのぞき込みながら、ジークハルトはあぐらをかいた姿勢のまま、ぐるんと一回転して見せた。
(う、う〇ろの百太郎、出た――――っ!!)
リーゼロッテは、無意識にまたジークヴァルトにしがみつくのであった。
【次回予告】
はーい、わたしリーゼロッテ。ますますオカルトめいてきた展開にもうドン引きです! 殿下に励まされつつ、ヴァルト様の仕打ちにHPはガリガリと削られまくり! 一方、王女殿下を探してアンネマリーは、王城の奥に迷いこんでしまって!?
次回、第9話「殿下の寵愛」 幽霊コワイ、助けて、プリーズ!!
「あの、王子殿下とカイ様はいらっしゃらないのですか?」
ジークヴァルトとふたりきりであることに気づき、リーゼロッテは聞いた。
「ふたりは公務だ」
そう言って、ジークヴァルトは昨日と同じように、リーゼロッテを閉じ込めるように覆いかぶさった。ひとりがけのソファは逃げ場がなく、昨日のあの場面がよみがえる。
いくら婚約者とはいえ、これはまずいのではないのだろうか。リーゼロッテの危惧におかまいなしに、ジークヴァルトは胸のペンダントに手を伸ばした。
「一晩で、随分くすんだな」
石をつまみあげ、ひとりごちる。そのまま、石に口づけようとした。
慌てたリーゼロッテが、その肩を両方の手でぐいと押す。昨日の二の舞になったら、いろんな意味でもたないと思ったのだ。
「あの、ジークヴァルト様っ」
リーゼロッテの呼びかけにジークヴァルトは、その動きを止めて「なんだ?」と返した。
「あの、この守り石とは何なのですか? 子供の頃に頂いたときも青く輝いていましたが、時間と共に青銅色になりましたわ」
何とか気を逸らそうとそんなことを聞いてみる。夕べ一晩考えて、知りたいと思ったことではあるが、ひとりがけのソファに閉じ込められたこの状態を、リーゼロッテは何とか脱したかった。
「守り石とは、力ある者のみがその力を込めることができる特殊な鉱物だ。力が消費されれば元の色に戻る」
そう言いながら、ジークヴァルトはリーゼロッテの胸元の石に顔を寄せてきた。
「あの、ジークヴァルト様っ」
あわてたリーゼロッテが、再びジークヴァルトの肩に手を置いた。
「なんだ?」
「ペンダントは外しますから、直接、近づくのはおやめいただきたいのです」
「なぜだ? 問題ない」
そう言うとジークヴァルトは、あっさり石に唇を寄せた。
(なぜって、問題ありすぎです!!!)
力の限り、ジークヴァルトの肩を押すが、びくともしない。
(あああ、ジークヴァルト様の髪が、く、くすぐったいっ)
噛みついてひっぱったら、やめてくれるだろうか。そんなことを思っていると、ジークヴァルトが顔を上げた。昨日より時間が短かった気がする。
リーゼロッテは、ほっと息をついた。胸元を見ると、石が青くゆらりと輝いていた。
「もしかして……毎日、やるのですか……?」
「もしかしなくても、だ」
無表情で返すジークヴァルトに、リーゼロッテは大幅にHPを奪われたのであった。
『いや~みせつけるねー』
不意に横から言葉が紡がれた。
人の気配が全くなかった分、驚きが大きく、リーゼロッテはびくりと体を震わせた。
恐る恐る首を横に向けると、ジークヴァルトが斜め横の長椅子の上であぐらをかいて座っていた。
しかし、左右のひじ掛けにいまだ両手がつかれ、正面を見ると、自分を囲うようにしている無表情のジークヴァルトと目が合った。
再び横を見る。ジークヴァルトだ。
正面を見た。やはり無表情のジークヴァルトがいる。
再度横を見ると、あぐらをかいたジークヴァルトが笑顔を作った。それはもうにっこりと。あまりのさわやかな笑顔に、リーゼロッテは小さく悲鳴を上げた。
「ジークヴァルト様が、笑った……!」
その一言に、あぐらのジークヴァルトは、さらに相好を崩した。
「ジークヴァルト様、あちらのジークヴァルト様のお顔がおかしくて気味が悪いです!」
リーゼロッテはニコニコ顔のジークヴァルトを指さしながら、正面の不愛想なジークヴァルトに助けを求めるように訴えかけた。
「おかしいのはお前の方だ」
あきれたように、無表情のジークヴァルトが言った。
「あれはオレではない」
そう言いながら体を起こすと、ジークヴァルトはリーゼロッテの手を引いて立ち上がらせた。
「あいつはジークハルト。生きた人間ではない」
リーゼロッテの手を取り、ジークヴァルトが前に突き出すように導いた。突き出された手は、あぐらの男の体を突き抜け、長椅子の背もたれに置いてあったクッションにふれた。
「遠い祖先らしいが、とにかくこいつはオレの守護者だ」
突き抜けた手を、リーゼロッテはさっと引っ込める。
『まあ、そんなわけだから、よろしくね。リーゼロッテ』
ひらひらとリーゼロッテに手を振った守護者は、よくみるとうっすらと透けて見えた。しかも、座っているようにみえた椅子から、少し浮いたところであぐらをかいている。
『あはは、こういう反応、新鮮だなー』
固まって動かないリーゼロッテを青い瞳でのぞき込みながら、ジークハルトはあぐらをかいた姿勢のまま、ぐるんと一回転して見せた。
(う、う〇ろの百太郎、出た――――っ!!)
リーゼロッテは、無意識にまたジークヴァルトにしがみつくのであった。
【次回予告】
はーい、わたしリーゼロッテ。ますますオカルトめいてきた展開にもうドン引きです! 殿下に励まされつつ、ヴァルト様の仕打ちにHPはガリガリと削られまくり! 一方、王女殿下を探してアンネマリーは、王城の奥に迷いこんでしまって!?
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