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馴れ初め編 1
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今から数年前――
「将暉、早くしろ!」
僕(棗 将暉)の敏腕マネージャーの佐々木は、とても厳しい。
「将暉、聞いてんのか?」
そして、とても怖い。
「ん?何……」
「しっかりしろ。吹き替えの仕事の件。どこまで聞いてた?まぁ、全部聞いてなかったんだろうけどな」
はい、その通りです。寝起きの僕に、早口で捲し立てられても困ります。
「お前がやりたくなくても、もう契約しちゃってるから、やらないといけないの、分かってるよな?」
「分かってるよ……」
毎度毎度の事なんで。僕の意見なんて、一度も聞いてくれないくせに……
ハリウッドが某有名アニメの劇場版実写化を実現したそうで、その主人公の吹き替えを、僕が担当する事になった。
何でよ……何故に僕?吹き替え?やっぱり何で僕なんだ。プロ中のプロの声優さんに、やってもらいなさいよ。
ネームバリューだけでね、素人がやると炎上するんだから。もう鎮火出来ない燃え広がり、僕見てきましたから!
「やりたくないなぁ……」
ボソッと言ってみる。
「は?やるんだよ」
やっぱり佐々木は、僕に厳しすぎると思う……
佐々木に連れてこられたのは、ごく普通のスタジオ。促されるまま入ると、多分頑張ってオシャレしたんだろうな、という男性が一人ニコニコして待っていた。
「こちら声優の茂田井智貴さん。今日から収録終わるまで、講師としてアドバイスしてくれるそうだ」
そういうと、佐々木はその男性に歩み寄って、
「お忙しい所、お時間を割いていただき本当に感謝しております、茂田井さん」と、ペコペコお辞儀をした。
僕はと言うと、『誰ですか?このイケオジは』って感じで、一応お辞儀するだけの、今思い出しても、とても感じの悪い対応だった。
「初めまして茂田井です。いやぁ、やっぱり本物は背が高くてイケメンですね」
その時の智ちゃんは、愛想のない僕に対しても、やっぱり今と同じ笑顔で僕に挨拶してくれた。
「では茂田井さん、よろしくお願いします」
佐々木は智ちゃんに一礼し、僕を睨んでスタジオから出て行った。
「棗くん、吹き替えの仕事は初めてなんだってね」
この時、僕は不覚にも智ちゃんに嫌味を言われると思ったんだ。素人が、って。でも……
「大丈夫だよ、僕がついてるし、君の声は君が思ってる以上に人を惹きつける」
なんて言うんだもん、僕は調子狂うじゃないか。
「そ、そうですかね?僕、やっぱりこういうのって苦手で……」
「苦手?口の動きに合わせるのが、とか?」
「いや……それもそうですけど……人の褌で相撲を取る、みたいなのが……」
「あぁ…」
その時の智ちゃんの目が、凄く厳しくて今でも忘れられない。
「確かにそうかもしれないね。ネームバリューで勝ち取った役だもんね。でも、だからって君は適当な仕事をするのか?」
「まさか!僕は、ナメられたくないだけです」
その時の僕は、智ちゃんに足をすくわれているようで、目を合わせられなかった。
「良かった。じゃぁ厳しく指導するよ。棗くんの為にね」
それから、鬼のようなレッスンが……智ちゃん、仕事大好き人間だから、めちゃくちゃ厳しいんだもん。でも、おかげで吹き替えの苦手意識もなくなった。
それと、智ちゃんとすごく仲良くなった。レッスン終わりは必ず飯。
僕はアルコールがダメだから、飲み会って本当に苦痛で、必要性を感じない会は参加しないようにしているんだけど、智ちゃんとの飲みは嫌じゃなかった。智ちゃんの色んな話が聞けるから。もちろん、イケボでね。
でも、そんな厳しく楽しい日々も終わりが来る。
「茂田井さん……明日で収録終わるんだ」
智ちゃんに電話したんだけれども、言葉にするとすごく胸が痛くなったのを覚えている。何でこんなに苦しくなるんだろうって。
「え?そうか、お疲れ様だね。じゃぁ、明日は打ち上げしようか?」
智ちゃんの声は、相変わらず明るくて優しくて、すごくセクシーなイケボで……
「うん……会いたい……」
僕は今すぐにでも会いたかったんだよ、智ちゃんに……
「将暉、早くしろ!」
僕(棗 将暉)の敏腕マネージャーの佐々木は、とても厳しい。
「将暉、聞いてんのか?」
そして、とても怖い。
「ん?何……」
「しっかりしろ。吹き替えの仕事の件。どこまで聞いてた?まぁ、全部聞いてなかったんだろうけどな」
はい、その通りです。寝起きの僕に、早口で捲し立てられても困ります。
「お前がやりたくなくても、もう契約しちゃってるから、やらないといけないの、分かってるよな?」
「分かってるよ……」
毎度毎度の事なんで。僕の意見なんて、一度も聞いてくれないくせに……
ハリウッドが某有名アニメの劇場版実写化を実現したそうで、その主人公の吹き替えを、僕が担当する事になった。
何でよ……何故に僕?吹き替え?やっぱり何で僕なんだ。プロ中のプロの声優さんに、やってもらいなさいよ。
ネームバリューだけでね、素人がやると炎上するんだから。もう鎮火出来ない燃え広がり、僕見てきましたから!
「やりたくないなぁ……」
ボソッと言ってみる。
「は?やるんだよ」
やっぱり佐々木は、僕に厳しすぎると思う……
佐々木に連れてこられたのは、ごく普通のスタジオ。促されるまま入ると、多分頑張ってオシャレしたんだろうな、という男性が一人ニコニコして待っていた。
「こちら声優の茂田井智貴さん。今日から収録終わるまで、講師としてアドバイスしてくれるそうだ」
そういうと、佐々木はその男性に歩み寄って、
「お忙しい所、お時間を割いていただき本当に感謝しております、茂田井さん」と、ペコペコお辞儀をした。
僕はと言うと、『誰ですか?このイケオジは』って感じで、一応お辞儀するだけの、今思い出しても、とても感じの悪い対応だった。
「初めまして茂田井です。いやぁ、やっぱり本物は背が高くてイケメンですね」
その時の智ちゃんは、愛想のない僕に対しても、やっぱり今と同じ笑顔で僕に挨拶してくれた。
「では茂田井さん、よろしくお願いします」
佐々木は智ちゃんに一礼し、僕を睨んでスタジオから出て行った。
「棗くん、吹き替えの仕事は初めてなんだってね」
この時、僕は不覚にも智ちゃんに嫌味を言われると思ったんだ。素人が、って。でも……
「大丈夫だよ、僕がついてるし、君の声は君が思ってる以上に人を惹きつける」
なんて言うんだもん、僕は調子狂うじゃないか。
「そ、そうですかね?僕、やっぱりこういうのって苦手で……」
「苦手?口の動きに合わせるのが、とか?」
「いや……それもそうですけど……人の褌で相撲を取る、みたいなのが……」
「あぁ…」
その時の智ちゃんの目が、凄く厳しくて今でも忘れられない。
「確かにそうかもしれないね。ネームバリューで勝ち取った役だもんね。でも、だからって君は適当な仕事をするのか?」
「まさか!僕は、ナメられたくないだけです」
その時の僕は、智ちゃんに足をすくわれているようで、目を合わせられなかった。
「良かった。じゃぁ厳しく指導するよ。棗くんの為にね」
それから、鬼のようなレッスンが……智ちゃん、仕事大好き人間だから、めちゃくちゃ厳しいんだもん。でも、おかげで吹き替えの苦手意識もなくなった。
それと、智ちゃんとすごく仲良くなった。レッスン終わりは必ず飯。
僕はアルコールがダメだから、飲み会って本当に苦痛で、必要性を感じない会は参加しないようにしているんだけど、智ちゃんとの飲みは嫌じゃなかった。智ちゃんの色んな話が聞けるから。もちろん、イケボでね。
でも、そんな厳しく楽しい日々も終わりが来る。
「茂田井さん……明日で収録終わるんだ」
智ちゃんに電話したんだけれども、言葉にするとすごく胸が痛くなったのを覚えている。何でこんなに苦しくなるんだろうって。
「え?そうか、お疲れ様だね。じゃぁ、明日は打ち上げしようか?」
智ちゃんの声は、相変わらず明るくて優しくて、すごくセクシーなイケボで……
「うん……会いたい……」
僕は今すぐにでも会いたかったんだよ、智ちゃんに……
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