7 / 32
馴れ初め編 6
しおりを挟む
「上がって」
エレベーターに乗った所までは覚えている。凄いドキドキして汗が止まらなくて……
あれ?っと気付いたら、玄関先に立っていた。
「上がりなよ」と、智ちゃんが手招きする。
「お……お邪魔しまぁす」
チラチラ辺りを見ながら、智ちゃんの部屋に上がる僕。誰かの気配を探していた。
誰か……
女……
彼女……
奥さん……
「適当に座ってよ」
智ちゃんが、リビングのテーブルに促し、
「キョロキョロしてるけど、俺一人暮らしだよ」と、言った。
『!!!』
バレバレですか……僕の心の中、バレバレでしたか……
「そ、そうなんだぁ」
なんて素っ頓狂な声で答える僕。カッコ悪かったな。
「一度失敗してんだよ、俺」
『はははぁ』と、笑いながら言う智ちゃん。
「失敗?」
「うん。三年前に離婚した。まぁ、結婚生活も一年持たなかったけどね」
『茂田井さん……結婚してたんだ……』
「俺、風呂入ってくるね」
智ちゃんはそう言って、僕をリビングに残して行っちゃった。
その時の僕の心はトドメを刺された感じになっちゃって、もうズタズタで、失恋ソングがエンドレスで流れていた。
心の中で傷心に浸っていると、
「棗くん。正座して、律儀なの?君」と、風呂から上がった智ちゃんが声を掛けてきた。
「へぇ?」
また素っ頓狂な声で、多分情けない顔で僕が振り返ったもんだから、智ちゃんはゲラゲラ大笑いした。
「棗くん、どうしたんだよ?夜中に大スターがさ、下向いてトボトボ歩いてちゃダメだろ?」
智ちゃんの中では、あの日の事は無かった事になってるのかな?と思っちゃって……
「どうして、普通に僕と話せるんですか?」って聞いちゃったんだよね。
智ちゃんは少し困ったような顔になって、
「だってさ……俺、君に酷い事しただろ……」って言ったんだ。
「酷い事?酷い事したのは僕だよ!」
ふぅっ、と溜め息をついて智ちゃんは話し出した。
「君に会う度に、君の俺を見る目が変わっていくのが分かったよ。最初は気のせいだと思ったけど。まぁ、君がゲイなら、俺みたいなオジサンが好みなのも有り得るのかなってさ」
智ちゃん、僕の気持ち分かってたんだ。まぁ、その時はゲイじゃかったんですけどね、僕。
「分かっててさ、あの日ホテルに行ったんだよ。行くか行かないか凄い悩んだよ。でも俺もさ、君に会いたいって思っちゃったからさ」と、照れくさそうな智ちゃん。
「分かってて会いに行って、君にキスされて、突き飛ばして逃げちゃった……本当にごめん。ごめんな」
『謝んなよ!』って叫びたかった。謝らないといけないのは僕の方なのに……
しばらく重苦しい沈黙が続いて、
「棗くんもシャワー浴びてくれば?」って智ちゃんが言ったんだ。
「え?」
「うん、汗かいてるだろ?トボトボ歩いてたから」
「……はい……」
シャワーを浴びながら『僕何してんだろ』って気持ちになった。これからセックスする訳でもないし。
『僕、何で好きな男の家でシャワー浴びてんだ……』
「上がりましたぁ」
何となく、ぶっきらぼうに言ってしまった僕。
「おう」
振り返る智ちゃんは胡座をかいて、何をするでもなく座っていた。
僕も座る。やっぱり正座しちゃった。
沈黙が続く――
「んー……遠いなぁ」と智ちゃんが言った。
「とおい?」
「遠いよ」と智ちゃんは、自分が座ってる隣をトントンと叩いた。
察した僕は智ちゃんの隣に座る。やっぱり正座で。
「あの時さ……俺何で逃げたかって言うとね……」
『怖くなったからでしょ……』
「俺もさ、勃っちゃったんだよね……それに驚いちゃってさ。自分自身に驚いて、逃げ出しちゃったんだよ」
そう言って僕を見る智ちゃん。
何も言えない僕。
そっかぁ……
智ちゃんも感じてくれてたんだね……
エレベーターに乗った所までは覚えている。凄いドキドキして汗が止まらなくて……
あれ?っと気付いたら、玄関先に立っていた。
「上がりなよ」と、智ちゃんが手招きする。
「お……お邪魔しまぁす」
チラチラ辺りを見ながら、智ちゃんの部屋に上がる僕。誰かの気配を探していた。
誰か……
女……
彼女……
奥さん……
「適当に座ってよ」
智ちゃんが、リビングのテーブルに促し、
「キョロキョロしてるけど、俺一人暮らしだよ」と、言った。
『!!!』
バレバレですか……僕の心の中、バレバレでしたか……
「そ、そうなんだぁ」
なんて素っ頓狂な声で答える僕。カッコ悪かったな。
「一度失敗してんだよ、俺」
『はははぁ』と、笑いながら言う智ちゃん。
「失敗?」
「うん。三年前に離婚した。まぁ、結婚生活も一年持たなかったけどね」
『茂田井さん……結婚してたんだ……』
「俺、風呂入ってくるね」
智ちゃんはそう言って、僕をリビングに残して行っちゃった。
その時の僕の心はトドメを刺された感じになっちゃって、もうズタズタで、失恋ソングがエンドレスで流れていた。
心の中で傷心に浸っていると、
「棗くん。正座して、律儀なの?君」と、風呂から上がった智ちゃんが声を掛けてきた。
「へぇ?」
また素っ頓狂な声で、多分情けない顔で僕が振り返ったもんだから、智ちゃんはゲラゲラ大笑いした。
「棗くん、どうしたんだよ?夜中に大スターがさ、下向いてトボトボ歩いてちゃダメだろ?」
智ちゃんの中では、あの日の事は無かった事になってるのかな?と思っちゃって……
「どうして、普通に僕と話せるんですか?」って聞いちゃったんだよね。
智ちゃんは少し困ったような顔になって、
「だってさ……俺、君に酷い事しただろ……」って言ったんだ。
「酷い事?酷い事したのは僕だよ!」
ふぅっ、と溜め息をついて智ちゃんは話し出した。
「君に会う度に、君の俺を見る目が変わっていくのが分かったよ。最初は気のせいだと思ったけど。まぁ、君がゲイなら、俺みたいなオジサンが好みなのも有り得るのかなってさ」
智ちゃん、僕の気持ち分かってたんだ。まぁ、その時はゲイじゃかったんですけどね、僕。
「分かっててさ、あの日ホテルに行ったんだよ。行くか行かないか凄い悩んだよ。でも俺もさ、君に会いたいって思っちゃったからさ」と、照れくさそうな智ちゃん。
「分かってて会いに行って、君にキスされて、突き飛ばして逃げちゃった……本当にごめん。ごめんな」
『謝んなよ!』って叫びたかった。謝らないといけないのは僕の方なのに……
しばらく重苦しい沈黙が続いて、
「棗くんもシャワー浴びてくれば?」って智ちゃんが言ったんだ。
「え?」
「うん、汗かいてるだろ?トボトボ歩いてたから」
「……はい……」
シャワーを浴びながら『僕何してんだろ』って気持ちになった。これからセックスする訳でもないし。
『僕、何で好きな男の家でシャワー浴びてんだ……』
「上がりましたぁ」
何となく、ぶっきらぼうに言ってしまった僕。
「おう」
振り返る智ちゃんは胡座をかいて、何をするでもなく座っていた。
僕も座る。やっぱり正座しちゃった。
沈黙が続く――
「んー……遠いなぁ」と智ちゃんが言った。
「とおい?」
「遠いよ」と智ちゃんは、自分が座ってる隣をトントンと叩いた。
察した僕は智ちゃんの隣に座る。やっぱり正座で。
「あの時さ……俺何で逃げたかって言うとね……」
『怖くなったからでしょ……』
「俺もさ、勃っちゃったんだよね……それに驚いちゃってさ。自分自身に驚いて、逃げ出しちゃったんだよ」
そう言って僕を見る智ちゃん。
何も言えない僕。
そっかぁ……
智ちゃんも感じてくれてたんだね……
1
あなたにおすすめの小説
従僕に溺愛されて逃げられない
大の字だい
BL
〈従僕攻め×強気受け〉のラブコメ主従BL!
俺様気質で傲慢、まるで王様のような大学生・煌。
その傍らには、当然のようにリンがいる。
荷物を持ち、帰り道を誘導し、誰より自然に世話を焼く姿は、周囲から「犬みたい」と呼ばれるほど。
高校卒業間近に受けた突然の告白を、煌は「犬として立派になれば考える」とはぐらかした。
けれど大学に進学しても、リンは変わらず隣にいる。
当たり前の存在だったはずなのに、最近どうも心臓がおかしい。
居なくなると落ち着かない自分が、どうしても許せない。
さらに現れた上級生の熱烈なアプローチに、リンの嫉妬は抑えきれず――。
主従なのか、恋人なのか。
境界を越えたその先で、煌は思い知らされる。
従僕の溺愛からは、絶対に逃げられない。
兄弟カフェ 〜僕達の関係は誰にも邪魔できない〜
紅夜チャンプル
BL
ある街にイケメン兄弟が経営するお洒落なカフェ「セプタンブル」がある。真面目で優しい兄の碧人(あおと)、明るく爽やかな弟の健人(けんと)。2人は今日も多くの女性客に素敵なひとときを提供する。
ただし‥‥家に帰った2人の本当の姿はお互いを愛し、甘い時間を過ごす兄弟であった。お店では「兄貴」「健人」と呼び合うのに対し、家では「あお兄」「ケン」と呼んでぎゅっと抱き合って眠りにつく。
そんな2人の前に現れたのは、大学生の幸成(ゆきなり)。純粋そうな彼との出会いにより兄弟の関係は‥‥?
定時後、指先が覚えている
こさ
BL
職場で長く反目し合ってきた二人。
それでも定時後の時間だけは、少しずつ重なっていく。
触れるはずのなかった指先。
逸らさなかった視線。
何も始まっていないのに、
もう偶然とは呼べなくなった距離。
静かなオフィスでゆっくりと近づいていく、
等身大の社会人BL。
美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜
飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。
でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。
しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。
秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。
美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。
秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。
鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。
不夜島の少年~兵士と高級男娼の七日間~
四葉 翠花
BL
外界から隔離された巨大な高級娼館、不夜島。
ごく平凡な一介の兵士に与えられた褒賞はその島への通行手形だった。そこで毒花のような美しい少年と出会う。
高級男娼である少年に何故か拉致されてしまい、次第に惹かれていくが……。
※以前ムーンライトノベルズにて掲載していた作品を手直ししたものです(ムーンライトノベルズ削除済み)
■ミゼアスの過去編『きみを待つ』が別にあります(下にリンクがあります)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる