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馴れ初め編 6
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「上がって」
エレベーターに乗った所までは覚えている。凄いドキドキして汗が止まらなくて……
あれ?っと気付いたら、玄関先に立っていた。
「上がりなよ」と、智ちゃんが手招きする。
「お……お邪魔しまぁす」
チラチラ辺りを見ながら、智ちゃんの部屋に上がる僕。誰かの気配を探していた。
誰か……
女……
彼女……
奥さん……
「適当に座ってよ」
智ちゃんが、リビングのテーブルに促し、
「キョロキョロしてるけど、俺一人暮らしだよ」と、言った。
『!!!』
バレバレですか……僕の心の中、バレバレでしたか……
「そ、そうなんだぁ」
なんて素っ頓狂な声で答える僕。カッコ悪かったな。
「一度失敗してんだよ、俺」
『はははぁ』と、笑いながら言う智ちゃん。
「失敗?」
「うん。三年前に離婚した。まぁ、結婚生活も一年持たなかったけどね」
『茂田井さん……結婚してたんだ……』
「俺、風呂入ってくるね」
智ちゃんはそう言って、僕をリビングに残して行っちゃった。
その時の僕の心はトドメを刺された感じになっちゃって、もうズタズタで、失恋ソングがエンドレスで流れていた。
心の中で傷心に浸っていると、
「棗くん。正座して、律儀なの?君」と、風呂から上がった智ちゃんが声を掛けてきた。
「へぇ?」
また素っ頓狂な声で、多分情けない顔で僕が振り返ったもんだから、智ちゃんはゲラゲラ大笑いした。
「棗くん、どうしたんだよ?夜中に大スターがさ、下向いてトボトボ歩いてちゃダメだろ?」
智ちゃんの中では、あの日の事は無かった事になってるのかな?と思っちゃって……
「どうして、普通に僕と話せるんですか?」って聞いちゃったんだよね。
智ちゃんは少し困ったような顔になって、
「だってさ……俺、君に酷い事しただろ……」って言ったんだ。
「酷い事?酷い事したのは僕だよ!」
ふぅっ、と溜め息をついて智ちゃんは話し出した。
「君に会う度に、君の俺を見る目が変わっていくのが分かったよ。最初は気のせいだと思ったけど。まぁ、君がゲイなら、俺みたいなオジサンが好みなのも有り得るのかなってさ」
智ちゃん、僕の気持ち分かってたんだ。まぁ、その時はゲイじゃかったんですけどね、僕。
「分かっててさ、あの日ホテルに行ったんだよ。行くか行かないか凄い悩んだよ。でも俺もさ、君に会いたいって思っちゃったからさ」と、照れくさそうな智ちゃん。
「分かってて会いに行って、君にキスされて、突き飛ばして逃げちゃった……本当にごめん。ごめんな」
『謝んなよ!』って叫びたかった。謝らないといけないのは僕の方なのに……
しばらく重苦しい沈黙が続いて、
「棗くんもシャワー浴びてくれば?」って智ちゃんが言ったんだ。
「え?」
「うん、汗かいてるだろ?トボトボ歩いてたから」
「……はい……」
シャワーを浴びながら『僕何してんだろ』って気持ちになった。これからセックスする訳でもないし。
『僕、何で好きな男の家でシャワー浴びてんだ……』
「上がりましたぁ」
何となく、ぶっきらぼうに言ってしまった僕。
「おう」
振り返る智ちゃんは胡座をかいて、何をするでもなく座っていた。
僕も座る。やっぱり正座しちゃった。
沈黙が続く――
「んー……遠いなぁ」と智ちゃんが言った。
「とおい?」
「遠いよ」と智ちゃんは、自分が座ってる隣をトントンと叩いた。
察した僕は智ちゃんの隣に座る。やっぱり正座で。
「あの時さ……俺何で逃げたかって言うとね……」
『怖くなったからでしょ……』
「俺もさ、勃っちゃったんだよね……それに驚いちゃってさ。自分自身に驚いて、逃げ出しちゃったんだよ」
そう言って僕を見る智ちゃん。
何も言えない僕。
そっかぁ……
智ちゃんも感じてくれてたんだね……
エレベーターに乗った所までは覚えている。凄いドキドキして汗が止まらなくて……
あれ?っと気付いたら、玄関先に立っていた。
「上がりなよ」と、智ちゃんが手招きする。
「お……お邪魔しまぁす」
チラチラ辺りを見ながら、智ちゃんの部屋に上がる僕。誰かの気配を探していた。
誰か……
女……
彼女……
奥さん……
「適当に座ってよ」
智ちゃんが、リビングのテーブルに促し、
「キョロキョロしてるけど、俺一人暮らしだよ」と、言った。
『!!!』
バレバレですか……僕の心の中、バレバレでしたか……
「そ、そうなんだぁ」
なんて素っ頓狂な声で答える僕。カッコ悪かったな。
「一度失敗してんだよ、俺」
『はははぁ』と、笑いながら言う智ちゃん。
「失敗?」
「うん。三年前に離婚した。まぁ、結婚生活も一年持たなかったけどね」
『茂田井さん……結婚してたんだ……』
「俺、風呂入ってくるね」
智ちゃんはそう言って、僕をリビングに残して行っちゃった。
その時の僕の心はトドメを刺された感じになっちゃって、もうズタズタで、失恋ソングがエンドレスで流れていた。
心の中で傷心に浸っていると、
「棗くん。正座して、律儀なの?君」と、風呂から上がった智ちゃんが声を掛けてきた。
「へぇ?」
また素っ頓狂な声で、多分情けない顔で僕が振り返ったもんだから、智ちゃんはゲラゲラ大笑いした。
「棗くん、どうしたんだよ?夜中に大スターがさ、下向いてトボトボ歩いてちゃダメだろ?」
智ちゃんの中では、あの日の事は無かった事になってるのかな?と思っちゃって……
「どうして、普通に僕と話せるんですか?」って聞いちゃったんだよね。
智ちゃんは少し困ったような顔になって、
「だってさ……俺、君に酷い事しただろ……」って言ったんだ。
「酷い事?酷い事したのは僕だよ!」
ふぅっ、と溜め息をついて智ちゃんは話し出した。
「君に会う度に、君の俺を見る目が変わっていくのが分かったよ。最初は気のせいだと思ったけど。まぁ、君がゲイなら、俺みたいなオジサンが好みなのも有り得るのかなってさ」
智ちゃん、僕の気持ち分かってたんだ。まぁ、その時はゲイじゃかったんですけどね、僕。
「分かっててさ、あの日ホテルに行ったんだよ。行くか行かないか凄い悩んだよ。でも俺もさ、君に会いたいって思っちゃったからさ」と、照れくさそうな智ちゃん。
「分かってて会いに行って、君にキスされて、突き飛ばして逃げちゃった……本当にごめん。ごめんな」
『謝んなよ!』って叫びたかった。謝らないといけないのは僕の方なのに……
しばらく重苦しい沈黙が続いて、
「棗くんもシャワー浴びてくれば?」って智ちゃんが言ったんだ。
「え?」
「うん、汗かいてるだろ?トボトボ歩いてたから」
「……はい……」
シャワーを浴びながら『僕何してんだろ』って気持ちになった。これからセックスする訳でもないし。
『僕、何で好きな男の家でシャワー浴びてんだ……』
「上がりましたぁ」
何となく、ぶっきらぼうに言ってしまった僕。
「おう」
振り返る智ちゃんは胡座をかいて、何をするでもなく座っていた。
僕も座る。やっぱり正座しちゃった。
沈黙が続く――
「んー……遠いなぁ」と智ちゃんが言った。
「とおい?」
「遠いよ」と智ちゃんは、自分が座ってる隣をトントンと叩いた。
察した僕は智ちゃんの隣に座る。やっぱり正座で。
「あの時さ……俺何で逃げたかって言うとね……」
『怖くなったからでしょ……』
「俺もさ、勃っちゃったんだよね……それに驚いちゃってさ。自分自身に驚いて、逃げ出しちゃったんだよ」
そう言って僕を見る智ちゃん。
何も言えない僕。
そっかぁ……
智ちゃんも感じてくれてたんだね……
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