10コ上のイケボと付き合ってます

マカリ

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恋人編 END

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 結局お互い引越しが済んだのは、その年の年末。初めての二人きりでの年越し。

「智ちゃん、実家に帰らなくていいの?」
「うん、今年は昨日まで仕事だったし、飛行機のチケット取れなかったし」
 智ちゃんの実家は東京からだと結構遠い。
「帰ろうと思えば帰れたでしょ」
 とか何とか言ってるけど、本当は二人きりで年越ししたかった僕。だから、実家に帰らないで、僕と過ごす事を選択してくれた智ちゃんに感謝していた。
「同棲してすぐ、実家帰るのもどうかなって思うしな」と智ちゃんが冗談を言う。
「何それ……」
 意味不明だ。
「佐々木さん、怒ってたな……」
 唐突に智ちゃんに言われて、ちょっと動揺してしまった僕。

 佐々木には悪い事をしたと思っている。
 彼を通さず、直接事務所に仕事を辞める事を相談したからだ。その事でさっき佐々木から電話があり、延々と怒鳴られた。
 別に僕が辞める選択をした事に怒っていた訳ではない。義理堅い奴だから……僕は佐々木を信頼していないわけじゃない。寧ろ一番信用している。ただ、佐々木を通すと割を食わせてしまうから、直接事務所に掛け合ったわけで……
 まぁ、それも佐々木は分かってるんだろうけど、とにかく延々と僕を怒鳴り散らして電話を切られた。

「佐々木は別に反対してる訳じゃないよ。あの人の口癖、『お前を守るのも仕事だから』だし。でも肝心な時に僕が頼らないから、それが気に障るんだよ」
「将暉、本当に辞めるのか?」
 智ちゃんは相変わらず、僕が仕事を完全に辞める事に納得していない。
「本当にやりたい事が見つかったって思ってよ」
 僕はもう智ちゃんとの人生しか考えられなくなっていた。この仕事を続ける限り、私生活とのバランスなんて取れるわけが無い。
「将暉……やっぱり俺と暮らしてから決めても良かったんじゃないのか?」
「しつこい……何回も僕の気持ち言ってんのに、智ちゃんしつこい」
「だって、お前みたいな大スターが何もかも手放すなんて勿体ない。最近じゃ世界にも認められて、これからだろ」
 智ちゃんは僕が海外の仕事をするようになったのが、本当に嬉しかったみたいで……
「僕の実力だけじゃない……優秀な佐々木が仕事取ってきてくれただけ」
「でもそれは将暉の才能を認められてるからだぞ」
「智ちゃんはさ、本当はやりたくないのに吹き替えの仕事が来たから、やらないといけない僕を見てムカついたでしょ」
 ついつい言ってしまう僕。初めて智ちゃんと会ったあの日。僕はとにかく吹き替えの仕事をしたくなかったから。
「まぁ、少しは……」
 智ちゃんは正直に言う。
 智ちゃんは意外と仕事の話をしない人だけれど、たまに零す。どれだけ色々人気キャラの声を演じたからって向こうから役が来るのは稀な方だと。向こうから声が掛かっても、基本必ずオーディション。だから、役が取れた時は凄く嬉しい。俺はいつも初心でいられるんだ、と。
「僕もだよ。こんな仕事の貰い方、嫌だなって思ってたから。智ちゃんも言ったじゃん。僕は運も強いって」
「だけどさ……運が強いっつーか、引きが強いのも才能のうちだろ。人を惹きつけるものを人より持ってるんだし。演技だって上手い。この間の吹き替えた映画も、大ヒットしたじゃないか。大河ドラマも視聴率良かったし」
「何言われても僕の気持ちは変わらない。智ちゃん、迷惑なの?」
 また余計な事を言う僕。
「は?」
「やっぱり面倒だなって、思ってるんじゃないの?」
 口を閉じろ僕。
「すぐそういう事を言う」
 智ちゃんの怒りスイッチ、メモリ3。
「だって……僕と一緒に居たくないんじゃないの?」
 面倒臭い僕、メモリ8。
「そんな訳ないだろ!」
 智ちゃん、怒りスイッチ壊れて、僕を押し倒してキス。

「んッ……んッ……」
「もうバカな事言うな。俺も、もう何も言わないから」
 智ちゃんにキスされながらそう言われて、
「……うん」と頷く僕。
「エッチしちゃうぞ」と言いながら智ちゃんはキスを続ける。
「んッ……はぁ……あん……智ちゃん……年越しはエッチしないって言った」
「じゃ予定変更してもいい?」
 僕の服を脱がせながら言う智ちゃん。
「ベッドでしたい……」
「あぁ……セックス部屋行く?」
 意地悪く智ちゃんが言う。

 今のマンションを買う時に間取りをコーディネーターと考えたんだけど、智ちゃんと一緒に暮らす事を決めてから、一旦白紙にして一からコーディネーターとやり直し。
 結構いい感じの間取りになったんだけど……
 
 うちには二つ寝室がある。一つは眠るための寝室。もう一つは智ちゃんが言う『セックス部屋』。ローションや何やらで汚れるから、寝室の隣に作ったんだけど、智ちゃんは、
「そこまでするか」って驚いて、そして僕をイジる。
「そんなにエッチな事ばっかり考えてるの?将暉くん」って……ちょっとイラッとする。
 コーディネーターにも、
「この寝室の奥の空間の意味は何ですか?」って、説明出来るわけが無い!

 六畳の窓の無い部屋。セミダブルのベッド。男二人が並んで横になるには狭いが、重なり合うには丁度いい。
 智ちゃんに愛撫されながら、年始早々シーツの洗濯しないと、って考えている僕。それがとても嬉しくて、幸せで。
 智ちゃんの肌を撫でると、智ちゃんは顔を上げた。
「幸せ……」と僕が囁くと、
「俺も」と言って優しくキスしてくれた。

「ずっと一緒……」
「ずっと一緒」

 そして再び僕たちは激しく愛し合った。

〈恋人編 終〉
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