10コ上のイケボと付き合ってます

マカリ

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同棲編 1

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 晴れて僕たちは一緒に暮らしだしたけれども……

 やっぱりお互い忙し過ぎて、ひとつ屋根の下とはいえ、一人でいる事が多かったし、寝る時はどちらかが爆睡していた。

 智ちゃんは基本的に朝も早いけど夜も遅い。
 僕は昼前くらいから仕事で夜中まで撮影する事も多かった。だから同棲始めた直後から既にすれ違った生活をしていた。

『会いたい』
『俺も』
『寂しすぎて寝てる智ちゃん起こしちゃいそう』
『起こせよ』

 同棲してるのに、こんな感じで毎日スマホでやり取りしてるのが虚しかった。
 事務所は依然として仕事を減らしてくれない。辞める事に同意してくれなくて、軽く揉めていた。終いには智ちゃんを悪く言うもんだから、言い合いになってしまって、佐々木が仲裁に入るくらいだった。こんな事、絶対に智ちゃんには言えない……

 マンションに戻り寝室を覗くと、智ちゃんが眠っていた。
 寝顔に癒される。さっきまでの胸糞悪い感じが飛んでいく。
 智ちゃんに触れたい。でも疲れて眠ってるのに、起こしてしまうから手を引っ込めてしまう。

 軽くため息をついてリビングのソファーに座る。東京タワーが涙で霞んで見えた。メソメソしても仕方ないのに。一緒に居るのに、僕たち愛し合ってるのに、どうしてこんなにもどかしくて苦しいんだろうか。凄く辛かった。

 しっかりしないと、と立ち上がろうとした時クラっと目眩がして再びソファーに座り込んでしまった。目が回って暫く動けなかった。
 どうしたんだろう、と焦った。
 様子を見て起き上がってみたが、やはりぐるぐる目が回る。
 
 ヤバい……
 
 スマホをズボンのポケットに入れておいてよかった。佐々木に電話する。真夜中だったが、すぐ佐々木は出てくれた。
「佐々木だ、どうした?」
「悪い夜中に」
「何かあったんだろ。早く用件を言え」
「目が回って動けない。ちょっと普通じゃない感じがするんだよ」
「分かった。すぐ迎えに行く。茂田井さん…」
「智ちゃんは起こさない。何も言わない。原因が分かるまでは」
「…………分かった」

 電話を切って、ゆっくり体を動かしながら壁伝いに玄関に向かい佐々木の連絡を待つ。どうしちゃったんだ、僕……

 佐々木からの着信でエレベーターに乗り、エントランスに行くと佐々木が駆け寄って来て僕を支えた。
「悪いね」
「仕事だから……」
 佐々木はそう言うと人目に付かない地下駐車場まで黙って僕を支えて運んだ。バックシートに倒れ込むように乗ると、
「○‪○総合病院に連絡してある」
 佐々木はそう言うと法定速度ギリギリで車を走らせた。

 ◇◆◇◆

 病院に着くと、CTとMRI、血液検査と一通りの検査を行った。
 特別個室が空いていたので、一晩様子を見る事になった。
 僕は今すぐにでも帰りたかったが、病院側も佐々木も許さなかった。
「疲れたんだよ。疲れが出たの」
 そう言っても佐々木は何も言わない。
「怒るなよ。体調管理はしてるんだけど……」
「………」
「無視かよ……」
「俺のせいかもな……」
「は?」
「辞めたがってるお前に無茶させてる」
「いや、入っちゃってるスケジュールは仕方ないし」
「キャンセル出来る仕事もあったんだ。社長が許さないから、埋まってる仕事はやらせろって。でも……」
「らしくないね」
「お前が自分の意見言うの初めてだろ」
「え?」
「辞めたいって。あの人の為に生きたい、って」
「まぁ、言ったけどもぉ」
「お前を守るのも俺の仕事なのにな」
「おいおい」
 
 止めてくれよ、と思った。佐々木のそんな弱気な所、気味が悪いとも思った。
「社長はご立腹なんだよ。単にお前がワガママ言ってるって思ってる。散々ワガママ聞いてくれていたのは将暉の方なのに」
 何だよ、本当に何だよ、どうしたんだよ、と僕は心の中で思っていた。
「長年お前は何一つ文句言わないで仕事をこなして来た。そしてお前のお陰で事務所はデカくなった。お前のお陰で他のタレントにも仕事が回ってきているのも事実だ。散々お前に働かせておいて、お前がやりたい事は受け入れないって、事務所の上層部は、本当に情けねぇなって思ってさ」
「……ふーん……」
「将暉、仕事辞めたら、ちゃんと茂田井さんと幸せになれよ。別れたらボコすからな」
 佐々木はそう言うと病室から出て行った。
 取り残された僕は、いったい今何が起こったのか理解が追いつかなくて、思考が停止していた。

 いつの間にか眠っていて、気が付いたら夜が明けていた。
 担当の医師が佐々木と一緒にやって来て、説明を始めた。
「検査の結果ですが……」
 僕は検査で見つかった腫瘍のせいで、ある病気だと判明した。めまいもそのせいだった。医師に説明される内容が最近の体の不調とマッチしていて納得した。ストレスが一番この病気の毒だとも言われた。最悪手術も必要になるが、幸い今は腫瘍も大きくなく悪性ではないので経過観察となった。
 正直、腫瘍があると言わてれ頭が真っ白になった。この腫瘍の殆どが進行が遅く悪性になるのは、ごく一部だと説明されたが、腫瘍であるには違いないわけで……
 仕事の内容も見直すよう指示された。薬も毎日欠かさず飲むようにも言われた。何より、この病気は休む事が一番です、とも言われた。

 帰りの車で佐々木が、
「なるようになってるんだなぁ」と言った。
「どういう事?」
「病気は俺もショックだけれど、お前がこれで仕事辞められる。そうなるようになってるんだって、ちょっと思ったんだよ。お前に失礼だけどな」
 確かに。病気になっちゃったけど、これで仕事を辞められる。
「けどさ。智ちゃんは……悲しむよ……病気だって知ったら、ショック受けると思う」
「そんなの当たり前だろ。だから支え合って生きろよ」
「……たまにいい事言うなよ」

 マンションに着いて玄関を開けると智ちゃんが走って来た。
「将暉……心配したんだぞ。起きたら隣に居ないし。帰った形跡もないし。メッセージ送っても既読にならないし、電話しても出ないし」
 僕は捲し立てる智ちゃんに抱きつく。
「将暉?」
「智ちゃん、時間ある?話があるんだけどさ。ちょっと長くなるんだよ」
「俺が将暉の話聞かなかった事あるか?」
「一度もないよ」

 僕と智ちゃんはソファーにくっ付いて座った。
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