黒帝~伝説の悪魔殺し~

まんとる

文字の大きさ
11 / 29
第一章 全日本魔法剣技大会

第10話 幸島 錬の独白

しおりを挟む
俺は幸島こうじま れん

桜ケ丘高校二年生で、新条 輝とは長い付き合いだ。

はっきりとは言ってないけど、俺はあいつと親友同士だと思っている。

長い付き合いだからわかる、あいつは高校に入ったと同時に性格が変わったんだ。

悪い変わり方じゃない。むしろ内向的な性格から、積極的とは言い難くても誰かが喋りかけると笑顔で応答してくれるようになった。でも、その笑顔からはいつも、なにか哀愁のようなものを俺は感じていた。

普段は無気力な輝だが、俺が遊びに誘えばほぼ毎回嫌そうにしながらも来てくれて、一日中共にいてくれる。

そんなあいつが、日本が主催する高校魔法剣技大会の選手に選ばれたことが、ネットのニュースでわかった。その時の俺は、これは単なる偶然だろうと思っていた。

初戦のクライスト=メルカリウスとかいう最強に手も足も出ず負けて、俺が励ましてやろうと、そう思っていたんだ。

試合当日、初戦はいきなり輝の出番だから、クラスのみんなと作った輝の名前入りのタオルとか、うちわを生徒全体で掲げる準備をした。

東側から金髪の美少年が入ってくる。聞いたことのないぐらい大きな歓声が場内に響き渡った。

凄まじいイケメンだが、顔だけなら輝だって負けていないはずだ。

その後、担当アイドルも入場。

続いて輝の入場が始まる。俺たちは叫ぶ準備をした。

「続いては、西コーナー!今回唯一の無名選手!新条 輝!」

実況の人がそう言うと、西側から輝が入場してきた。

さっきの金髪とは違い、歓声が全く起きない。

すこししりすぼみしたが、150万人の前とはいえこちらも1200人だ。

俺が「せーの!!」というと、

生徒全員が「輝頑張れー!」と言った。

そのあとにも俺は「頑張れ!!!」と大きな声で叫び、クラスのみんなは思い思いの激励の言葉を叫んでいた。

あいつは「俺は友達が少ない」とか言っていたが、いろんな人が支えてくれているのだと再認識して、親友の俺もうれしくなった。

輝が、そんな俺たちの言葉に反応してくれて、こっちに手を掲げてきた。

ありがとう、とそう伝えたいのだと俺はわかった。

輝のほうの担当アイドルの入場も終わり、実況解説が俺たちのことを少し褒めたあと、戦闘場の二人は会話を始めた

「はじめまして、新条くん。私はクライストだ。よろしく。」

「よろしくお願いします。僕は新条 輝です。正々堂々と、手加減なしでお願いします。」

「ああ、もちろん。手を抜くのは相手に対する侮辱だからね。君が例え、無名の選手であっても私が加減をすることはないよ。」

「そう言ってもらえてありがたいです。それでは、始めましょう。」

そう二人が言い終わった後、

「それでは、第一試合クライスト=メルカリウスvs新条 輝の試合、開始!」

という合図で試合が始まった。



本当に驚いた。一気に距離を詰めた輝は、見せたことないような技量で金髪を押しているように見える。金髪も凄まじいが、俺は普段の輝を知っている分余計に輝が凄く思えた。

そんな二人を見て、観客達の目の色が完全に変わったのがわかった。

空気も一変し、なんなら少しだけざわついていた会場が静まり返り、今は強者vs強者の圧倒的な戦いを、固唾をのんで見守っているように見えた。

輝が金髪に突撃する。凄まじい轟音とここまで届くような衝撃波を放ちながら、二人が連撃の打ち合いをしている。俺には全く二人の剣先、槍先が見えないほどのスピードで打ち合っている。

輝が仕掛ける。しかしそれを見切った金髪はフェイントをかけた後に突きを放った。

それをさらに見切った輝は、金髪を追い詰めたように見えたが、金髪の必殺技のようなもので攻撃され、輝は後方に飛ばされた。

「悔しいが、私の純粋な槍術ではお前には遠く及ばないようだ。新条、どういうわけかお前の剣筋からはまだ余裕が感じられる・・。お前は一体何者なんだ?」

「僕はただのそこら辺にいる高校生ですよ。」

「そこら辺にいる高校生に私の槍術が見切られるはずがないだろう・・。まぁいい。答える気がないんだったら、こちらはさらに本気を出すしかあるまい。柳生流槍術奥義の数々と、私の『魔法槍』を以て、その余裕を打ち砕こう。」

その問答の後

「『魔法槍』、発動」

金髪のその言葉によって噂の最強と呼ばれる技が発動された。

視るのは初めてだが、この技と槍によって彼はここまで上り詰めたと聞いたことがある。

三度始まる斬りあい、金髪が技を出すが、輝は聞いたことのない技名を口にし、金髪を圧倒した。

金髪も負けじと大技をだすが、それも輝に躱されてしまう。

「さっきの技、、。私でも見たことのないものだった。私も、奥の手を使わないと、お前に勝てないようだ。どうか、死んでくれるなよ。」

そう金髪が言った瞬間、この巨大な競技場が揺れた。地震かと思うくらいだったが、どうやら原因は金髪のようで、

俺の周りのクラスメイトたちも「何だ!?」とか「キャーー!!」と悲鳴を上げている女子だっていた。会場内の別の観客も同じようで場内が、かなりざわつくのがわかった。

見たこともない濃密な魔力がこもった槍を持った男は、眼前に輝を見据えていた。

「魔法槍奥義『グングニル』」

金髪はそう言う。これはまずい、こんなものくらったら輝が死んでしまう。俺の大事な親友が、幼稚園からの腐れ縁のあいつが、死んでしまう。とっさに俺は立ち、この階層の一番前の席まで行き。手すりにつかまって、

「輝!!死ぬな!!」

そう叫んだ。だがこの言葉は周囲の喧騒によってかき消され、いつの間にか来た警備員に捕まり、俺の元の席へと戻されてしまった。

クラスメイトを見る。

瞳の中が絶望に染まっている奴や、輝のことを好きな女子なんかは、もう泣いてしまっていた。

輝、どうかしなないでくれ・・!

俺はそう願うくらいしかできない自分の無力さを呪った。



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

無魔力の令嬢、婚約者に裏切られた瞬間、契約竜が激怒して王宮を吹き飛ばしたんですが……

タマ マコト
ファンタジー
王宮の祝賀会で、無魔力と蔑まれてきた伯爵令嬢エリーナは、王太子アレクシオンから突然「婚約破棄」を宣告される。侍女上がりの聖女セレスが“新たな妃”として選ばれ、貴族たちの嘲笑がエリーナを包む。絶望に胸が沈んだ瞬間、彼女の奥底で眠っていた“竜との契約”が目を覚まし、空から白銀竜アークヴァンが降臨。彼はエリーナの涙に激怒し、王宮を半壊させるほどの力で彼女を守る。王国は震え、エリーナは自分が竜の真の主であるという運命に巻き込まれていく。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

スライム退治専門のさえないおっさんの冒険

守 秀斗
ファンタジー
俺と相棒二人だけの冴えない冒険者パーティー。普段はスライム退治が専門だ。その冴えない日常を語る。

【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました

いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。 子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。 「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」 冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。 しかし、マリエールには秘密があった。 ――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。 未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。 「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。 物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立! 数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。 さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。 一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて―― 「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」 これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、 ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー! ※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。

神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

ブラック国家を制裁する方法は、性癖全開のハーレムを作ることでした。

タカハシヨウ
ファンタジー
ヴァン・スナキアはたった一人で世界を圧倒できる強さを誇り、母国ウィルクトリアを守る使命を背負っていた。 しかし国民たちはヴァンの威を借りて他国から財産を搾取し、その金でろくに働かずに暮らしている害悪ばかり。さらにはその歪んだ体制を維持するためにヴァンの魔力を受け継ぐ後継を求め、ヴァンに一夫多妻制まで用意する始末。 ヴァンは国を叩き直すため、あえてヴァンとは子どもを作れない異種族とばかり八人と結婚した。もし後継が生まれなければウィルクトリアは世界中から報復を受けて滅亡するだろう。生き残りたければ心を入れ替えてまともな国になるしかない。 激しく抵抗する国民を圧倒的な力でギャフンと言わせながら、ヴァンは愛する妻たちと甘々イチャイチャ暮らしていく。

冤罪で退学になったけど、そっちの方が幸せだった

シリアス
恋愛
冤罪で退学になったけど、そっちの方が幸せだった

処理中です...