終末の運命。咲かないリナリアと特異点X

まんとる

文字の大きさ
3 / 11

第2話  は……?

しおりを挟む
いや、は…?
俺は今眼前にいる子の話の概要が全くもって理解出来ないでいた。
例え相手が美少女だろうと、初対面の人に抱きつかれ、剰え意味のわからないことを言われた挙句泣きじゃくられたら思考が停止するだろう。理解不能だと脳が判断して。
そんな俺の姿を見た幼馴染で前の席の唯が口を開いた。
「な、七花さん…!何してるの!はな…れ…てー!!」
力づくで俺と七花さんを引き離した。
「あなたは…。」
七花さんが静かに呟く。
「七花さん。私は翔の幼馴染の四谷唯。二人がどんな関係だろうと、私の前でそんなことしないで…!」
「…あなたが誰なのかは、わかっています。」
七花さんは冷たい声でそう言った。
そして、静かに睨むように唯を一瞥して、もう一度クラスメイトの前へと戻った。
「七花さん…どうしたの?」
美咲先生がこの状況を見かねて問う。
「…いえ、ごめんなさい。亡くなってしまった友人に、一ノ瀬君が似ていたもので、つい取り乱してしまいました。」
「そ、そうなの…?深くは聞かないけど、それは辛かっただろうね…。」
美咲先生は同情を示し、嘆息おいた後、手のひらをパンッ!と打ち合わせた。
「じゃあ、気を取り直して!七花さん、自己紹介をお願いします。」
「…はい。ご紹介に預かりました、七花唯と申します。先ほどはお見苦しいところをお見せしました…。そしてこれからの二年間、どうぞよろしくお願いします。」
七花さんは、明るい笑顔でそう言い放った。
先刻前は騒然としていたクラスだったが、美咲先生のおかげで何とか場は収まり、主に男子の歓声が鳴った。
そんな中、俺だけは違うことを思案していた。
…おかしい。美咲先生は追及していなかったが、そもそもなんで俺の苗字が一ノ瀬だということを知っている…?いや、苗字だけじゃない。翔という名前すらも知っていた。更に付け加えるなら、唯に放った言葉。
(「…あなたが誰なのかは、わかっています。」)
どういうことなのか、俺には正直全く分からなかったが、その場は静かに見守ることにした。
「それじゃ席は…一ノ瀬君の隣が空いてるけど、過去を思いださせちゃうよね。
 いっそのこと、七花さんを含めて、席替えでもする?」
クラスメイトが美咲先生のその言葉に反応するよりも前に、七花さんが答えた。
「いえ、先生。私は一ノ瀬君の隣がいいです。」
七花さんのその笑顔を見た美咲先生は、少し困惑した表情を見せた。
「ほんとに大丈夫…?いいんだよ?席替えをすれば済む話なんだから。」
「席替えをしても、どちらにせよ彼とは同じクラスなので、私も過去と向き合う良い機会にさせてもらいます。」
「な、なるほどね…。一ノ瀬君は、それで大丈夫…?」
美咲先生は俺にそう問う。
一瞬迷ったが、すぐに決断する。
今はわからないことが多すぎる、七花さんの近くになれば、どういうことか問いただせるかもしれない。
「…わかりました。どうぞ。」
「ありがとう…!翔くん…。」
七花さんはまた儚げにそう言った。
「本当に会ったことないの…?」
美咲先生がそう小さく呟いたのをまるで聞いていないかのように、七花さんは俺の隣の、空いていた席に座った。
「じゃあ、今日は時間が押しちゃったからこれで朝のホームルームは終わり!みんな、七花さんと仲良くするように!」
こうして、波乱の朝のホームルームが終わった。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

やり直すなら、貴方とは結婚しません

わらびもち
恋愛
「君となんて結婚しなければよかったよ」 「は…………?」  夫からの辛辣な言葉に、私は一瞬息をするのも忘れてしまった。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

失った真実の愛を息子にバカにされて口車に乗せられた

しゃーりん
恋愛
20数年前、婚約者ではない令嬢を愛し、結婚した現国王。 すぐに産まれた王太子は2年前に結婚したが、まだ子供がいなかった。 早く後継者を望まれる王族として、王太子に側妃を娶る案が出る。 この案に王太子の返事は?   王太子である息子が国王である父を口車に乗せて側妃を娶らせるお話です。

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

お嬢様はお亡くなりになりました。

豆狸
恋愛
「お嬢様は……十日前にお亡くなりになりました」 「な……なにを言っている?」

婚約破棄された令嬢が記憶を消され、それを望んだ王子は後悔することになりました

kieiku
恋愛
「では、記憶消去の魔法を執行します」 王子に婚約破棄された公爵令嬢は、王子妃教育の知識を消し去るため、10歳以降の記憶を奪われることになった。そして記憶を失い、退行した令嬢の言葉が王子を後悔に突き落とす。

強面夫の裏の顔は妻以外には見せられません!

ましろ
恋愛
「誰がこんなことをしろと言った?」 それは夫のいる騎士団へ差し入れを届けに行った私への彼からの冷たい言葉。 挙げ句の果てに、 「用が済んだなら早く帰れっ!」 と追い返されてしまいました。 そして夜、屋敷に戻って来た夫は─── ✻ゆるふわ設定です。 気を付けていますが、誤字脱字などがある為、あとからこっそり修正することがあります。

処理中です...