2 / 11
第1話 新しい始まり
しおりを挟む
透き通った青い空、夜露に濡れた桜、春を感じさせる心地の良い風。
俺はその全てに感慨を抱きながら、ぼんやりと外を見ていた。
2020年4月8日。
俺、一ノ瀬 翔《かける》は、高校二年生へと上がり、さらなる一歩を踏み出そうとしていた。
予鈴が鳴り、2年A組のクラスメイト達が席に着く。
今日は始業式。春休みを経た、最初の登校日だ。
といっても変わるのは学年だけであり、クラスメイトは変わらない。
一年生の時から、このメンバーで学校生活を送っている。
理由は、この高校の入学試験の点数だ。
この私立桜ケ丘高校は、入学試験の点数で、A~D組までクラス分けがなされる。
俺の数少ない特技の一つである勉学のおかげで、俺は一番成績のよいA組に入ることができた。
…しかし、一年経った今でも、あまりクラスメイトとは馴染めなかった。
誰と喋っても壁を感じるのだ。何か余所余所しい雰囲気を感じずにはいられないため、俺ももう、クラスメイトに喋りかけるのは辞めた。
だが、唯一例外がある。
「翔、また前後ろの席だね。」
俺の唯一の友人、兼幼馴染の四谷《よつや》 唯《ゆい》が、そう喋りかけてくる。
「……まぁ、昔から腐れ縁だからな」
「また勉強教えてね!」
「お前も成績悪くないだろうに」
「いや、だって!翔この前の全国模試ベスト10入りしてたじゃない。私はただの、この学校の八位。所詮、井の中の蛙なのよ」
「……ただ運がいいだけだから。そ勉強は、数少ない俺の特技だからっていうのもある」
「ふぅ~ん。…どこが数少ないんだか」
「何か言ったか?」
「美咲先生来たって言ったんだよ~」
唯の言う通り、女教師が入ってきた。
しかし、先生の後ろには見慣れない制服を着た少女がいた。
異国風というか、この日本では珍しい美く長い金髪。そして、青い瞳。所謂金髪碧眼というやつだろう。それは、俺の目から見ても明らかに美少女だった。
別の高校の制服を着た彼女は、静かにうつむいていた。
「紹介しましょう。この子は、転校生の七花《ななはな》 莢《さや》さん。聞いたことあるかもしれないけど、あの名門七花家の跡取りで、英国人の血が四分の一岳混ざっています。だから、この金髪は生まれつき、ということです」
「七花さん、自己紹介を」
七花さんはうつむいていた状態からクラスメイトの方を見る。
そして、ふと、俺と目が合った。
「……!!」
「…ん?」
反応を示された、気がした。
「…や、やっと…やっと会えた…。…ぐすんっ。…だめ、泣かないって決めてたのに…」
「な、七花さん…?」
美咲先生が突如泣き出した七花さんの方を見て心配する。
クラス中は騒然とする。
その瞬間、七花さんは駆け出した。
クラスの窓際まできて、さらに奥まで走る。
……まるで、俺めがけて走ってきているように。
そして七花さんは……俺に勢いよく抱きついた。
「ちょっ…は?」
俺はもちろん茫然とする。
「……翔くん……私は、ずっと、ずっとこの時を待ちわびて……!!
よかった……本当に……また会えて良かったよぉぉ……!!」
七花さんは、そう言いながら俺の胸の中で泣きじゃくる。
全く状況が理解できない。またって言われても、俺はこの子に会ったことなんてない。断言できる。
心の中で様々なことを推理してしまう癖のある俺でも、全く推理する余地がないほどに、その状況は意味不明だった。
「……人違いですよ?」
「……翔くんは翔くんだよ……。どんな世界線でも、翔くんは翔くんなんだよ……」
七花さんは消えそうなほど儚げな声で、俺にそう告げた。
俺はその全てに感慨を抱きながら、ぼんやりと外を見ていた。
2020年4月8日。
俺、一ノ瀬 翔《かける》は、高校二年生へと上がり、さらなる一歩を踏み出そうとしていた。
予鈴が鳴り、2年A組のクラスメイト達が席に着く。
今日は始業式。春休みを経た、最初の登校日だ。
といっても変わるのは学年だけであり、クラスメイトは変わらない。
一年生の時から、このメンバーで学校生活を送っている。
理由は、この高校の入学試験の点数だ。
この私立桜ケ丘高校は、入学試験の点数で、A~D組までクラス分けがなされる。
俺の数少ない特技の一つである勉学のおかげで、俺は一番成績のよいA組に入ることができた。
…しかし、一年経った今でも、あまりクラスメイトとは馴染めなかった。
誰と喋っても壁を感じるのだ。何か余所余所しい雰囲気を感じずにはいられないため、俺ももう、クラスメイトに喋りかけるのは辞めた。
だが、唯一例外がある。
「翔、また前後ろの席だね。」
俺の唯一の友人、兼幼馴染の四谷《よつや》 唯《ゆい》が、そう喋りかけてくる。
「……まぁ、昔から腐れ縁だからな」
「また勉強教えてね!」
「お前も成績悪くないだろうに」
「いや、だって!翔この前の全国模試ベスト10入りしてたじゃない。私はただの、この学校の八位。所詮、井の中の蛙なのよ」
「……ただ運がいいだけだから。そ勉強は、数少ない俺の特技だからっていうのもある」
「ふぅ~ん。…どこが数少ないんだか」
「何か言ったか?」
「美咲先生来たって言ったんだよ~」
唯の言う通り、女教師が入ってきた。
しかし、先生の後ろには見慣れない制服を着た少女がいた。
異国風というか、この日本では珍しい美く長い金髪。そして、青い瞳。所謂金髪碧眼というやつだろう。それは、俺の目から見ても明らかに美少女だった。
別の高校の制服を着た彼女は、静かにうつむいていた。
「紹介しましょう。この子は、転校生の七花《ななはな》 莢《さや》さん。聞いたことあるかもしれないけど、あの名門七花家の跡取りで、英国人の血が四分の一岳混ざっています。だから、この金髪は生まれつき、ということです」
「七花さん、自己紹介を」
七花さんはうつむいていた状態からクラスメイトの方を見る。
そして、ふと、俺と目が合った。
「……!!」
「…ん?」
反応を示された、気がした。
「…や、やっと…やっと会えた…。…ぐすんっ。…だめ、泣かないって決めてたのに…」
「な、七花さん…?」
美咲先生が突如泣き出した七花さんの方を見て心配する。
クラス中は騒然とする。
その瞬間、七花さんは駆け出した。
クラスの窓際まできて、さらに奥まで走る。
……まるで、俺めがけて走ってきているように。
そして七花さんは……俺に勢いよく抱きついた。
「ちょっ…は?」
俺はもちろん茫然とする。
「……翔くん……私は、ずっと、ずっとこの時を待ちわびて……!!
よかった……本当に……また会えて良かったよぉぉ……!!」
七花さんは、そう言いながら俺の胸の中で泣きじゃくる。
全く状況が理解できない。またって言われても、俺はこの子に会ったことなんてない。断言できる。
心の中で様々なことを推理してしまう癖のある俺でも、全く推理する余地がないほどに、その状況は意味不明だった。
「……人違いですよ?」
「……翔くんは翔くんだよ……。どんな世界線でも、翔くんは翔くんなんだよ……」
七花さんは消えそうなほど儚げな声で、俺にそう告げた。
0
あなたにおすすめの小説
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
失った真実の愛を息子にバカにされて口車に乗せられた
しゃーりん
恋愛
20数年前、婚約者ではない令嬢を愛し、結婚した現国王。
すぐに産まれた王太子は2年前に結婚したが、まだ子供がいなかった。
早く後継者を望まれる王族として、王太子に側妃を娶る案が出る。
この案に王太子の返事は?
王太子である息子が国王である父を口車に乗せて側妃を娶らせるお話です。
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
恩知らずの婚約破棄とその顛末
みっちぇる。
恋愛
シェリスは婚約者であったジェスに婚約解消を告げられる。
それも、婚約披露宴の前日に。
さらに婚約披露宴はパートナーを変えてそのまま開催予定だという!
家族の支えもあり、婚約披露宴に招待客として参加するシェリスだが……
好奇にさらされる彼女を助けた人は。
前後編+おまけ、執筆済みです。
【続編開始しました】
執筆しながらの更新ですので、のんびりお待ちいただけると嬉しいです。
矛盾が出たら修正するので、その時はお知らせいたします。
強面夫の裏の顔は妻以外には見せられません!
ましろ
恋愛
「誰がこんなことをしろと言った?」
それは夫のいる騎士団へ差し入れを届けに行った私への彼からの冷たい言葉。
挙げ句の果てに、
「用が済んだなら早く帰れっ!」
と追い返されてしまいました。
そして夜、屋敷に戻って来た夫は───
✻ゆるふわ設定です。
気を付けていますが、誤字脱字などがある為、あとからこっそり修正することがあります。
私が愛する王子様は、幼馴染を側妃に迎えるそうです
こことっと
恋愛
それは奇跡のような告白でした。
まさか王子様が、社交会から逃げ出した私を探しだし妃に選んでくれたのです。
幸せな結婚生活を迎え3年、私は幸せなのに不安から逃れられずにいました。
「子供が欲しいの」
「ごめんね。 もう少しだけ待って。 今は仕事が凄く楽しいんだ」
それから間もなく……彼は、彼の幼馴染を側妃に迎えると告げたのです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる