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Sonya ②
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「散々この街を荒らしてくれやがったな!」
「このメスガキが……ブッ殺してやるぜ!」
武器を構えた『弱者』たちが喚く
人間とは何と愚かな生き物なのだろうか
この世界には必ず『どうにもならぬこと』がある
法則や運命は圧倒的な力で全てを捩じ伏せる
人間は必ずそれに抗う
自由であることを求め───
平穏であることを求め───
そのために自らを犠牲にすることも厭わない
理不尽なものを嫌い───
圧倒的な絶望を嫌い───
全ての邪悪は滅ぼされる運命だと信じている
「ぐァァァ!」
「ごふッ!!」
「だッ───!!」
キャシィの目の前で愚か者たちが死んでいく
バタバタと人形のように倒れていく
「何やってんの、早くソイツを倒して!!」
「お前がやるんだ!」
「うるせェェ───!!
ワンパンで沈んだくせに……偉そうに命令してんじゃねーよ!!
おい、ローレントてめぇ───ッ!
不死身のウォールを殺せるくらいの技術力があンだろ!
てめぇがどうにかしろよ!!」
「……無理を……言うな!」
「───くそ、こうなりゃ当たって砕けてやる……
だがそれでも……結果が分かりきった戦いってのはやる気が出ねーよ……
特にその結果が『敗北』ってんだからなァ……」
ナイフを構え、深呼吸
鼓動が激しく刻まれ、五感が研ぎ澄まされる
全身の血液が滾り、頭髪の一本にまで力が入る
「……悪く思うなよ……」
この言葉はソーニャに対して吐いたわけではない
これから無茶をやって死ぬ自分に対して吐いたのだ
「らぁァ───ッ!!」
闇雲に正面突破しようとするキャシィにソーニャは腕をライフルに変化させ、銃口を向ける
それで良い
キャシィは銃口を蹴って逸らし、更に頭部めがけてナイフを突き立てようとする
そのナイフは呆気なく掴まれ、キャシィ自身も腹に一撃殴打を叩き込まれる
「ぐがァ……!」
そのまま撃たれようものなら……
そんなことを考えている暇はない
既にソーニャの脅威的な握力はナイフをひん曲げてしまっている
「……畜生ッ愛用品だぜ!
そう簡単に握りつぶしてくれてンじゃねーよ!」
ソーニャは戦う手段を失ったキャシィの腹にそのまま弾を撃ち込む
「ぐはッ!!
おッ……ぐぉぉ……ッげェ!」
やはり駄目だった
「はァ……こんなにも激しい痛みを味わったのは……何年ぶりだろうな……」
この状態では素早く動き回ることも不可能だろう
いっそ死んでしまった方が楽なほどの痛み
傷口から血が溢れ、腹部が冷たくなる
思い出す
まだ幼い頃のこと
光の当たらない路地裏で孤独に暮らしていた頃のこと
テリトリーに侵入してきた不良グループと殺し合い、深手を負った過去の記憶
光を知らないから、暖かさも理解出来なかった
一生薄暗く冷たい世界を生き続けるのだろうと思っていた
それが理想的なのだと思っていた
「……」
暖かさ
そうだ
常にそれが欠けていた
今も『馬鹿馬鹿しい』としか思えない
だが
「……そうだな、もうやめだ……
倒すなんてふざけたことはやめだ……
取り憑かれたようにひとつの道に執着したって答えは見えねーよな……
もう分かったぜ……アタシは理解した……!
……なぁ、ソーニャ……お前に……足りねーモンを……教えてやるよ……
ソイツは過去のアタシにも足りてなかったやつさ……」
キャシィはゆっくりとソーニャに向かって歩きだす
ソーニャはその言葉を理解することが出来ず、攻撃を再開する
「ぐッ、おおおッ───!
あ、穴だらけになっちまうぜ……
通気性は……良くなるかもだがなッ!!」
体に傷を負いながらもキャシィは進み続け、
「……お前にくれてやる」
何と
あろうことか
あろうことか、ソーニャに抱きついた
「……何……その行動は理解不能……だよ、キャシィ……」
「キャシィ……お前ッ……ふざけるな
ガキ……だからといってッ
な……情けでも……かけているのか……!?
武装して戦場に立っていれば……ソイツは兵士だ
お前は戦場にいて……今まさに自分を殺そうとしている兵士を……
子供だからと言って見逃すのか……!?」
「……マフィアのアマが……知ったようなこと言ってんじゃねーよ……
フレイラ……アタシらに足りなかったもの……お前も解らねーってのか?
地べたを這いずる……ネズミは……一生そのままだ……
アタシらとコイツは仲間だ……同じネズミなんだ……
この心の中の……言葉にするのも難しいような……理不尽を……
それをどうにかする方法……アタシはこれしか知らねーんだ……
コイツが何万人殺そうが……地球を滅ぼそうが……関係ねーんだよ……
アタシは……殺人鬼だからな……クソみてーな道徳なんざ……マリアナ海溝に捨てたさ」
「正気じゃないわ……ああ、狂ったのね……」
「こうやって抱きついてやりゃあ……良かったんだ、初めから
ソーニャ……人間みてーに笑いやがって……
こっちは傷だらけで……笑えねーってのに……」
ソーニャは明らかに安らいでいた
彼女にはその理屈は分からないが、とにかく安らいでいた
心の穴を塞いでくれるような心地好い感覚
「ア……ァァァァ……」
まるで仔猫のように甘い声をあげるソーニャ
いつの間にか彼女の腕は武器化を解除していた
そしてその体は小刻みに震えていた
「……あー、ホント……柄でもねーこと……やっちまったよ……
お前らなんかと……出会わなきゃ良かったぜ……傷とか痛ェし……」
愚痴を溢しながらも、キャシィはソーニャから離れない
「……そうか……頑なに……語りたがらなかったのは……そういうことか
お前も……フレイラやソーニャと同じ……だったのか、なるほどな……
実に不本意だが、もう何も言うまい……だが手当てが必要だ」
ローレントが立ち上がろうとする
それと同時に
キャシィは膝から崩れ落ち、地面に倒れた
「このメスガキが……ブッ殺してやるぜ!」
武器を構えた『弱者』たちが喚く
人間とは何と愚かな生き物なのだろうか
この世界には必ず『どうにもならぬこと』がある
法則や運命は圧倒的な力で全てを捩じ伏せる
人間は必ずそれに抗う
自由であることを求め───
平穏であることを求め───
そのために自らを犠牲にすることも厭わない
理不尽なものを嫌い───
圧倒的な絶望を嫌い───
全ての邪悪は滅ぼされる運命だと信じている
「ぐァァァ!」
「ごふッ!!」
「だッ───!!」
キャシィの目の前で愚か者たちが死んでいく
バタバタと人形のように倒れていく
「何やってんの、早くソイツを倒して!!」
「お前がやるんだ!」
「うるせェェ───!!
ワンパンで沈んだくせに……偉そうに命令してんじゃねーよ!!
おい、ローレントてめぇ───ッ!
不死身のウォールを殺せるくらいの技術力があンだろ!
てめぇがどうにかしろよ!!」
「……無理を……言うな!」
「───くそ、こうなりゃ当たって砕けてやる……
だがそれでも……結果が分かりきった戦いってのはやる気が出ねーよ……
特にその結果が『敗北』ってんだからなァ……」
ナイフを構え、深呼吸
鼓動が激しく刻まれ、五感が研ぎ澄まされる
全身の血液が滾り、頭髪の一本にまで力が入る
「……悪く思うなよ……」
この言葉はソーニャに対して吐いたわけではない
これから無茶をやって死ぬ自分に対して吐いたのだ
「らぁァ───ッ!!」
闇雲に正面突破しようとするキャシィにソーニャは腕をライフルに変化させ、銃口を向ける
それで良い
キャシィは銃口を蹴って逸らし、更に頭部めがけてナイフを突き立てようとする
そのナイフは呆気なく掴まれ、キャシィ自身も腹に一撃殴打を叩き込まれる
「ぐがァ……!」
そのまま撃たれようものなら……
そんなことを考えている暇はない
既にソーニャの脅威的な握力はナイフをひん曲げてしまっている
「……畜生ッ愛用品だぜ!
そう簡単に握りつぶしてくれてンじゃねーよ!」
ソーニャは戦う手段を失ったキャシィの腹にそのまま弾を撃ち込む
「ぐはッ!!
おッ……ぐぉぉ……ッげェ!」
やはり駄目だった
「はァ……こんなにも激しい痛みを味わったのは……何年ぶりだろうな……」
この状態では素早く動き回ることも不可能だろう
いっそ死んでしまった方が楽なほどの痛み
傷口から血が溢れ、腹部が冷たくなる
思い出す
まだ幼い頃のこと
光の当たらない路地裏で孤独に暮らしていた頃のこと
テリトリーに侵入してきた不良グループと殺し合い、深手を負った過去の記憶
光を知らないから、暖かさも理解出来なかった
一生薄暗く冷たい世界を生き続けるのだろうと思っていた
それが理想的なのだと思っていた
「……」
暖かさ
そうだ
常にそれが欠けていた
今も『馬鹿馬鹿しい』としか思えない
だが
「……そうだな、もうやめだ……
倒すなんてふざけたことはやめだ……
取り憑かれたようにひとつの道に執着したって答えは見えねーよな……
もう分かったぜ……アタシは理解した……!
……なぁ、ソーニャ……お前に……足りねーモンを……教えてやるよ……
ソイツは過去のアタシにも足りてなかったやつさ……」
キャシィはゆっくりとソーニャに向かって歩きだす
ソーニャはその言葉を理解することが出来ず、攻撃を再開する
「ぐッ、おおおッ───!
あ、穴だらけになっちまうぜ……
通気性は……良くなるかもだがなッ!!」
体に傷を負いながらもキャシィは進み続け、
「……お前にくれてやる」
何と
あろうことか
あろうことか、ソーニャに抱きついた
「……何……その行動は理解不能……だよ、キャシィ……」
「キャシィ……お前ッ……ふざけるな
ガキ……だからといってッ
な……情けでも……かけているのか……!?
武装して戦場に立っていれば……ソイツは兵士だ
お前は戦場にいて……今まさに自分を殺そうとしている兵士を……
子供だからと言って見逃すのか……!?」
「……マフィアのアマが……知ったようなこと言ってんじゃねーよ……
フレイラ……アタシらに足りなかったもの……お前も解らねーってのか?
地べたを這いずる……ネズミは……一生そのままだ……
アタシらとコイツは仲間だ……同じネズミなんだ……
この心の中の……言葉にするのも難しいような……理不尽を……
それをどうにかする方法……アタシはこれしか知らねーんだ……
コイツが何万人殺そうが……地球を滅ぼそうが……関係ねーんだよ……
アタシは……殺人鬼だからな……クソみてーな道徳なんざ……マリアナ海溝に捨てたさ」
「正気じゃないわ……ああ、狂ったのね……」
「こうやって抱きついてやりゃあ……良かったんだ、初めから
ソーニャ……人間みてーに笑いやがって……
こっちは傷だらけで……笑えねーってのに……」
ソーニャは明らかに安らいでいた
彼女にはその理屈は分からないが、とにかく安らいでいた
心の穴を塞いでくれるような心地好い感覚
「ア……ァァァァ……」
まるで仔猫のように甘い声をあげるソーニャ
いつの間にか彼女の腕は武器化を解除していた
そしてその体は小刻みに震えていた
「……あー、ホント……柄でもねーこと……やっちまったよ……
お前らなんかと……出会わなきゃ良かったぜ……傷とか痛ェし……」
愚痴を溢しながらも、キャシィはソーニャから離れない
「……そうか……頑なに……語りたがらなかったのは……そういうことか
お前も……フレイラやソーニャと同じ……だったのか、なるほどな……
実に不本意だが、もう何も言うまい……だが手当てが必要だ」
ローレントが立ち上がろうとする
それと同時に
キャシィは膝から崩れ落ち、地面に倒れた
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