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第一章

戦場へご案内

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「任務って…まだそんなに訓練してないわよ?」
 人形に向かってちょこっと武器を振るった程度よ?そんな私がいきなり実践?
『アウルからその辺は聞いた。それだけ動ければ十分だ。それに、今回の任務は大したものではない』
 本当かしら?もしどぎつい目にあったら後でひっぱたいてやる。
「…ちなみにどんな任務なの?」
『うむ、それについては現地で担当が説明する。場所はファイン大陸にあるルロウ洞窟だ』
「ファイン大陸?」
「この魔大陸の海の向こうにある大陸です。人間達はそことクラウディ大陸、レイニィ諸島を主に活動の拠点にしているのです」
 アウルが解説を入れた。
「でもどうやってそこまで行けばいいの?まさかワープ魔法があるとか?」
『そうだ』
 あるのかよ!
『今回はアウルも同行する。担当からの情報によると装備は今のままで問題ないとのことだ』
 ずいぶん親切に教えてくれるわね。というかいつの間にその担当と情報のやり取りをしていたのよ…?
「その他必要な荷物は今回私が携行いたします。万が一の処置は私にお任せ下さい」
 アウルは荷物が入っていると思われる鞄を見せびらかした。本当、用意周到ねこのメイド。
「では、現地まで私がお送りします。手を握ってください。できれば恋人つなぎで」
「するかバカ!」
 アウルの冗談はほっといて私は彼女の左手をとった。
「では、参りましょう…『ワール』!」
 魔法らしきワードを口にしながらアウルが右手を上げると、周辺につむじ風が巻き起こり、私達を包み込んだ。

「…グッドラック…」

 つむじ風の外側ではクロムが敬礼していた。つむじ風はやがて強くなり、その勢いに視界を奪われた。
「うおっ!」
 
 恐る恐る目を開くとそこは訓練場ではなかった。辺りを見回すと周辺には新緑の葉をつけた木々が林立しており、足元には様々な野草が生い茂る大地が広がっていた。どうやらどこかの森のようだ。
「こ…これはワープに成功したの…?」
「はい。ルロウの森に到着しました」
 ルロウの森ってことはこの近くに例の洞窟があるということか。
「『ワール』だっけ…?どういう仕組みの魔法なの?」
 私は気になって尋ねてみた。
「説明してもよろしいのですが…上級魔法ですので一晩ぐらいはかかりますよ?」
「あ。やっぱいいです」
 長い話はご勘弁。
「洞窟はこの先にあります。こちらです」
「お、おう」
 向こうを指し示しアウルは歩きだした。というか…

「…はよ手を放せ!」

 いつの間にか恋人つなぎになってるし!
 
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