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第二章
森羅万象
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「森羅…万象…?」
その意味を尋ねようとした時、ズワースは火球を天井に向けて放った。
「な…!どこを…?」
私が左を向くと、あさっての方向に放たれた火球は天井に着弾し、爆発した。天井から生えていた鍾乳石が砕け散り、真下にいた戦車に降り注いだ。
「うわあぁぁぁ!」
不意をつかれた戦車は防御魔法を唱える間もなく落石の下敷きとなった。真上からの攻撃は想定していないのか落石は戦車の天井を容易く潰し、足元の隙間から乗員のものと思われる赤い血が流れだした。竜の頭はあらぬ方向に曲がり、使い物にならなくなっていた。
「…!…そういうことか…!」
「遠慮はいらん!思いっきりやれ!」
私が理解したことに呼応するかのようにズワースが叫んだ。目前の戦車は私に目もくれずに黒竜に火矢を放とうとしていた。私をシカトするつもりならば遠慮はしない。私は大剣を地面に思いきり突き刺した。
ズガンッ!
私を中心に周囲の地面は蜘蛛の巣状にひび割れ、隙間から黒い炎が勢いよく噴き出した。
「どわぁ!」
戦車は炎に吹き飛ばされて横転した。車両の底からさかさまにされた亀のように乗員が足をバタバタさせているのが見える。
「は、早く起こせ!」
乗員があわてふためいている。車両を起こすのを待つほど私は優しくない。中が丸見えになる位置に回り込み、魔法使いらしき男の尻に大剣を突き刺した。我ながらえげつない。そのまま力をこめると大剣から黒い炎が発生し、魔法使いの串焼きの調理を開始した。
「ひぃっ!」
横になったままその様子を見ていたスキンヘッドが悲鳴をあげた。私はそいつに串焼きを叩きつけた。黒い炎はスキンヘッドに燃え移り、車内はちょっとした火炎地獄と化した。ほどなくして炎が車内にあった火薬に引火し、戦車ははじけ飛んだ。飛んでくる破片を大剣で防ぎながら私は爆風から逃れるように後ろに飛びのいた。
「いいぞ!あと一台じゃ!」
「わかってる!」
最後の一台はしつこくズワースに火矢を放っている。『森羅万象を武器とせよ』。その言葉を頭の中に反芻させながら私は戦車に向かって駆け出した。思った通り、私から逃げるように戦車は離れていく。ある場所へ誘導するべく私は後を追った。
「今よ!炎を吐いて!」
望み通りの場所に誘導したところで私はズワースに指示した。
「承知!」
私の意図を理解したズワースは自分の足元に来た戦車めがけて勢いよく炎を放った。
「うおっ!ば、『バリア』!」
戦車は足を止めて青い壁を形成し、真上から降り注ぐ炎を妨げた。ズワースはそれを気にすることなく炎を吐き続けている。
「今だ!」
私は横一直線に大剣を思いきり振りかぶった。大剣は青い壁をすり抜け、戦車はその中身諸共真っ二つに寸断された。
思った通りだ。あの『バリア』という魔法はおそらくズワースの炎のような魔法の類を防ぐものだ。反対に剣のような物理攻撃は『シールド』という魔法で防ぐのであろう。そして、どういうわけか知らないがその二種類の魔法は同時に発動できない。ならば、一方の魔法で炎を防いでいる間に剣で攻撃すればよい。その私の目論見は見事当たった。学校の定期テストで世話になっている私のヤマ勘がここで役に立ったわけだ。
魔法の主の意識が途絶えたことで青い壁は消失し、ズワースの炎を阻むものはなくなった。炎に包まれた戦車の残骸はその中身と共に消し炭と化した。
その意味を尋ねようとした時、ズワースは火球を天井に向けて放った。
「な…!どこを…?」
私が左を向くと、あさっての方向に放たれた火球は天井に着弾し、爆発した。天井から生えていた鍾乳石が砕け散り、真下にいた戦車に降り注いだ。
「うわあぁぁぁ!」
不意をつかれた戦車は防御魔法を唱える間もなく落石の下敷きとなった。真上からの攻撃は想定していないのか落石は戦車の天井を容易く潰し、足元の隙間から乗員のものと思われる赤い血が流れだした。竜の頭はあらぬ方向に曲がり、使い物にならなくなっていた。
「…!…そういうことか…!」
「遠慮はいらん!思いっきりやれ!」
私が理解したことに呼応するかのようにズワースが叫んだ。目前の戦車は私に目もくれずに黒竜に火矢を放とうとしていた。私をシカトするつもりならば遠慮はしない。私は大剣を地面に思いきり突き刺した。
ズガンッ!
私を中心に周囲の地面は蜘蛛の巣状にひび割れ、隙間から黒い炎が勢いよく噴き出した。
「どわぁ!」
戦車は炎に吹き飛ばされて横転した。車両の底からさかさまにされた亀のように乗員が足をバタバタさせているのが見える。
「は、早く起こせ!」
乗員があわてふためいている。車両を起こすのを待つほど私は優しくない。中が丸見えになる位置に回り込み、魔法使いらしき男の尻に大剣を突き刺した。我ながらえげつない。そのまま力をこめると大剣から黒い炎が発生し、魔法使いの串焼きの調理を開始した。
「ひぃっ!」
横になったままその様子を見ていたスキンヘッドが悲鳴をあげた。私はそいつに串焼きを叩きつけた。黒い炎はスキンヘッドに燃え移り、車内はちょっとした火炎地獄と化した。ほどなくして炎が車内にあった火薬に引火し、戦車ははじけ飛んだ。飛んでくる破片を大剣で防ぎながら私は爆風から逃れるように後ろに飛びのいた。
「いいぞ!あと一台じゃ!」
「わかってる!」
最後の一台はしつこくズワースに火矢を放っている。『森羅万象を武器とせよ』。その言葉を頭の中に反芻させながら私は戦車に向かって駆け出した。思った通り、私から逃げるように戦車は離れていく。ある場所へ誘導するべく私は後を追った。
「今よ!炎を吐いて!」
望み通りの場所に誘導したところで私はズワースに指示した。
「承知!」
私の意図を理解したズワースは自分の足元に来た戦車めがけて勢いよく炎を放った。
「うおっ!ば、『バリア』!」
戦車は足を止めて青い壁を形成し、真上から降り注ぐ炎を妨げた。ズワースはそれを気にすることなく炎を吐き続けている。
「今だ!」
私は横一直線に大剣を思いきり振りかぶった。大剣は青い壁をすり抜け、戦車はその中身諸共真っ二つに寸断された。
思った通りだ。あの『バリア』という魔法はおそらくズワースの炎のような魔法の類を防ぐものだ。反対に剣のような物理攻撃は『シールド』という魔法で防ぐのであろう。そして、どういうわけか知らないがその二種類の魔法は同時に発動できない。ならば、一方の魔法で炎を防いでいる間に剣で攻撃すればよい。その私の目論見は見事当たった。学校の定期テストで世話になっている私のヤマ勘がここで役に立ったわけだ。
魔法の主の意識が途絶えたことで青い壁は消失し、ズワースの炎を阻むものはなくなった。炎に包まれた戦車の残骸はその中身と共に消し炭と化した。
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