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第十二章
偽ゴブリン
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「どうしてゴブリンがここに?」
「てことは…魔王軍の仕業?」
足元に倒れている二人のゴブリンを見下ろしながらリエルとビオラは首を傾げた。
「周りは大騒ぎになってます!他の場所でも爆発があったみたいです!」
表通りの方の様子を見てきたアズキが戻って来た。
「ずいぶんえらいことになってるみてぇだな」
「ヤベーなオイ」
店長とトニーが店から出てきた。
「こいつらに似た奴とかいた?」
ゴブリンの手を縛りながらビオラはアズキに尋ねた。
「いいえ。ですが、この様子だとおそらくこの二人だけの犯行ではないと思います」
首を横に振りながらアズキは答えた。
「そうね。とりあえず、この二人から――ん?」
もう一人のゴブリンの手を縛ろうとしたリエルは何かに気づいた。
「どうしたの?」
ビオラの言葉を気にすることなくリエルはゴブリンの黒い手袋を外した。
「…これは!」
その手はゴブリン特有の緑色の肌ではなかった。リエルよりもやや黄色がかった肌の色。オウカ公国の領域で最も多数を占めるオウカ人種の肌であった。
「てことは…!」
リエルはおもむろにゴブリンの頭を掴んだ。思った通り、生物の皮の感触ではない。そのまま頭を上に引っ張ると、その下から人間の男の顔があらわになった。
「魔族じゃない…!」
「は?じゃあこっちも…?」
ビオラは自分が縛った方のゴブリンの頭を引っぺがした。同じようにその下から人間の男の顔が出てきた。
「こ、この人達は…!」
ゴブリンの皮を被った男二人の顔を見たアヤカが何かに気づいた。
「え?知ってんの?」
「いいえ」
即答で否定したアヤカに対し、ビオラは肩透かしをくらった。
「何なのよもう!」
「ですが、見たことはあります。このお二人はオウカ公国軍のサムライです」
「何ですって?」
突発的な情報にビオラとリエルは目を丸くした。
「この刀は公国の一般サムライ全員に支給されるタイプのものです」
アヤカは偽ゴブリンが落とした刀を拾った。
「それじゃあ…サムライが魔族のふりをしていたってこと?」
「ヤベーなおい」
トニーは偽ゴブリンの臀部に近づき、その臭いを嗅いだ。
「とにかく、話を聞いてみなくちゃ」
リエルは二人の偽ゴブリンの身体を起こし、近くの壁に寄りかからせた。
「おい起きろコラ!」
ビオラは片方の偽ゴブリンの頬を叩き、意識を呼び戻した。
「う、うう…」
「…はっ!お、おま…」
二人の偽ゴブリンの視界に映ったのは自分達を見下ろす少女達の姿であった。
「気がついたみたいね」
「さて、洗いざらいしゃべってもらおうかしら」
ビオラは二人の偽ゴブリンに杖を突き付けた。
「バカめ!我らオウカのサムライに手を出してただで済むと思っているのか!」
「そうだ!無礼者は斬り捨て御免だぞ!」
偽ゴブリンの二人はサムライの名を盾にして強気に出た。
「はぁ?どの口がぬかしてんのよ!」
まさかの逆切れにビオラは呆れかえった。
「ごめんなさい。手荒な真似をして。でも、私達は知りたいの。さっきの爆発は何なのかを」
気が立っているビオラに代わりリエルが話をした。
「さっきの話声。あなた達は知ってるんでしょ?」
「……」
二人はだんまりを決め込んだ。
「サムライはオウカの国と民を守る戦士。私はそう聞かされていたんだけど――」
「けっ!あんな大将軍が治める国など守る価値があるものかよ!」
右の偽ゴブリンが食い気味で否定した。
「なっ――」
「ならば教えていただけますか?」
リエルの発言を遮り、アヤカが前に出た。
「アヤカ?」
アヤカがしゃがみこみ、偽ゴブリン達に視線を合わせた。
「あなた方は大将軍様の政に不満を抱えているのですか?」
「…そうだ。あの大将軍のせいで多くのサムライや家臣、貴族が職を失った。俺らもそうだ」
アヤカの穏やかな雰囲気に当てられ、左の偽ゴブリンは口を開いた。
「ああ。奴の政策でこの国が良くなるとは思えねぇ。だから俺達はあの人の計画に参加したんだ」
右の偽ゴブリンも口を開いた。
「そうですか…あなた方は国や仲間を思ってこのようなことを…」
「…」
アヤカの言葉に二人は静かに頷いた。
「でも、『あの人』って…?」
気になる単語を聞いたリエルがそれについて尋ねようとした途端、偽ゴブリン二人の背後の壁に大きな亀裂が走った。
「…アヤカ!」
リエルは屈んだままのアヤカを真横に思いきり突き飛ばした。そのまま彼女はアヤカを飛んできたがれきから守るように覆いかぶさった。
「てことは…魔王軍の仕業?」
足元に倒れている二人のゴブリンを見下ろしながらリエルとビオラは首を傾げた。
「周りは大騒ぎになってます!他の場所でも爆発があったみたいです!」
表通りの方の様子を見てきたアズキが戻って来た。
「ずいぶんえらいことになってるみてぇだな」
「ヤベーなオイ」
店長とトニーが店から出てきた。
「こいつらに似た奴とかいた?」
ゴブリンの手を縛りながらビオラはアズキに尋ねた。
「いいえ。ですが、この様子だとおそらくこの二人だけの犯行ではないと思います」
首を横に振りながらアズキは答えた。
「そうね。とりあえず、この二人から――ん?」
もう一人のゴブリンの手を縛ろうとしたリエルは何かに気づいた。
「どうしたの?」
ビオラの言葉を気にすることなくリエルはゴブリンの黒い手袋を外した。
「…これは!」
その手はゴブリン特有の緑色の肌ではなかった。リエルよりもやや黄色がかった肌の色。オウカ公国の領域で最も多数を占めるオウカ人種の肌であった。
「てことは…!」
リエルはおもむろにゴブリンの頭を掴んだ。思った通り、生物の皮の感触ではない。そのまま頭を上に引っ張ると、その下から人間の男の顔があらわになった。
「魔族じゃない…!」
「は?じゃあこっちも…?」
ビオラは自分が縛った方のゴブリンの頭を引っぺがした。同じようにその下から人間の男の顔が出てきた。
「こ、この人達は…!」
ゴブリンの皮を被った男二人の顔を見たアヤカが何かに気づいた。
「え?知ってんの?」
「いいえ」
即答で否定したアヤカに対し、ビオラは肩透かしをくらった。
「何なのよもう!」
「ですが、見たことはあります。このお二人はオウカ公国軍のサムライです」
「何ですって?」
突発的な情報にビオラとリエルは目を丸くした。
「この刀は公国の一般サムライ全員に支給されるタイプのものです」
アヤカは偽ゴブリンが落とした刀を拾った。
「それじゃあ…サムライが魔族のふりをしていたってこと?」
「ヤベーなおい」
トニーは偽ゴブリンの臀部に近づき、その臭いを嗅いだ。
「とにかく、話を聞いてみなくちゃ」
リエルは二人の偽ゴブリンの身体を起こし、近くの壁に寄りかからせた。
「おい起きろコラ!」
ビオラは片方の偽ゴブリンの頬を叩き、意識を呼び戻した。
「う、うう…」
「…はっ!お、おま…」
二人の偽ゴブリンの視界に映ったのは自分達を見下ろす少女達の姿であった。
「気がついたみたいね」
「さて、洗いざらいしゃべってもらおうかしら」
ビオラは二人の偽ゴブリンに杖を突き付けた。
「バカめ!我らオウカのサムライに手を出してただで済むと思っているのか!」
「そうだ!無礼者は斬り捨て御免だぞ!」
偽ゴブリンの二人はサムライの名を盾にして強気に出た。
「はぁ?どの口がぬかしてんのよ!」
まさかの逆切れにビオラは呆れかえった。
「ごめんなさい。手荒な真似をして。でも、私達は知りたいの。さっきの爆発は何なのかを」
気が立っているビオラに代わりリエルが話をした。
「さっきの話声。あなた達は知ってるんでしょ?」
「……」
二人はだんまりを決め込んだ。
「サムライはオウカの国と民を守る戦士。私はそう聞かされていたんだけど――」
「けっ!あんな大将軍が治める国など守る価値があるものかよ!」
右の偽ゴブリンが食い気味で否定した。
「なっ――」
「ならば教えていただけますか?」
リエルの発言を遮り、アヤカが前に出た。
「アヤカ?」
アヤカがしゃがみこみ、偽ゴブリン達に視線を合わせた。
「あなた方は大将軍様の政に不満を抱えているのですか?」
「…そうだ。あの大将軍のせいで多くのサムライや家臣、貴族が職を失った。俺らもそうだ」
アヤカの穏やかな雰囲気に当てられ、左の偽ゴブリンは口を開いた。
「ああ。奴の政策でこの国が良くなるとは思えねぇ。だから俺達はあの人の計画に参加したんだ」
右の偽ゴブリンも口を開いた。
「そうですか…あなた方は国や仲間を思ってこのようなことを…」
「…」
アヤカの言葉に二人は静かに頷いた。
「でも、『あの人』って…?」
気になる単語を聞いたリエルがそれについて尋ねようとした途端、偽ゴブリン二人の背後の壁に大きな亀裂が走った。
「…アヤカ!」
リエルは屈んだままのアヤカを真横に思いきり突き飛ばした。そのまま彼女はアヤカを飛んできたがれきから守るように覆いかぶさった。
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