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第308話 エメラルドの約束7
しおりを挟む──それから数日たった、ある日のこと。
私は兄さんの畑を手伝っていた。
暑い夏の日だ。
定期的に水を飲まないと熱中症で倒れてしまう。
直ぐ近くの森へと私はリョク兄さんの分も一緒に水筒に湧水を汲みに行く。
「〝世界樹〟いつ見ても大きいなぁ」
遠くに聳える、高い高い超巨大樹──
〝世界樹〟に目をやる。
あまりに大きいので木からはかなり離れた、この辺りからでもよく見える。
──ドコトゴドコ、ドコドコドコ。
砂煙を上げて高そうな竜車が近付いて来る。珍しいな? と思いながら、距離を取り、私は道を開ける。
私を少し過ぎた所で2台の竜車が止まる。
(──!? !!)
「ほぅ──いい感じのガキがいるじゃねぇか?」
じゅるりと唾をすすりながら、窓から小太りのエルフの男が顔を出す──
気持ちが悪い。その男への第一印象はそれだ。
逃げよう。この人には関わらない方がいい。
そう考えた私は脱兎のごとく走り出す。
「捕まえろ」
後方の竜車から現れた、鎧を着た兵士達に私はあっと言う間に囲まれる。
何、何!? と私の頭はパニックだ。
口を塞がれ、私は抵抗する間も無く捕まる。
「──ッ!! ッ!? !!」
(何、何!? 兄さん助けて! 怖い!)
暴れる私を兵士は取り押さえる。幼い私は、なすがままに竜車に乗せられ、何処かへと連れ去られた。
*
リョクが異変に気づいたのは、事件から30分程の時間が経った後だった。帰りの遅いエメレアを心配に思い様子を見にきていたのだ。
だが見つかったのは辺りに水が散乱した場所に不可解に落ちてる水筒が2つと竜車が通った形跡だけ。
──連れ去られた。
リョクの頭の中で最悪のシナリオが過る。
そこからのリョクの行動は迅速だった。急いで家に戻り、弓と有りっ丈の矢を持って、竜車の足跡を全速力で辿る。
だが、竜車と徒歩だ。
どんどん、離されて行くのが関の山だ。
それでも足を止めるわけにはいかない。
顔を蒼白にしながらリョクは走り続けた。
「──分かれ道!? くっ、どっちだ!」
竜車の後が二手に分かれている。
これでは追えない。
リョクは直感で右を選んだ。
そして更に足を急がせる。
「エメレア、エメレア、どうか無事であってくれ」
足を止めず、走ること約1時間──
リョクは漸く足を止める。
いや、正確には足を止めざるを得なかった。
門だ。リョクはエルフの国〝シルフディート〟の王宮門の門番に行く手を遮られる。
「妹が、妹が連れ去られたんです! 妹の行方を知りませんか! 金髪のロングの髪の7歳の子なんですが」
「貴様、この先は王宮だぞ? 不敬であろう! 今すぐ立ち去れ! そんな子供は断じて知らん!」
「そ、そうですか……」
ならば、もう1つの方だ!
と、リョクが来た道を引き返そうとした時──
「──どうした? 何かあったのか?」
兵士達が息を呑む。
「え、エルサリオン王子……!」
現れたのはエルフの国〝シルフディート〟第1王子──エルサリオン・シルフディートであった。
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