342 / 518
第341話 水と空と豚2
しおりを挟む食べ始めたら、美味しいから、と──もう一本ずつ買った、水豚のバラ串焼きを食べながら街を進む。
「美味しいね」
「ああ、それに機嫌が治ったようで良かった」
「──っ……/// 別に機嫌悪くなんてなってないよ!」
パク、パク、パクっと串焼きを食べるスピードが上がるクレハは顔が赤い。
うーん、何か言葉を間違えたかな? こういう時にキリッと何かカッコよく気の利いた言葉を言えるような大人になりたいもんだ。
「て、もう街は終わりか」
行き止まり、ってワケじゃないが、あるだけマシか? と、思う程度にはボロい木で作られた柵が街を囲んでいる。
「あ、うん、反対側行こっか、まだ見てないお店とかある筈だから」
「反対側っつーと、ミリアの世話になってたウララおばさんの団子屋がある場所だな?」
「そうだね、寄りたいけど、今は寄れないね」
名目上、俺とクレハは誘拐犯と被害者、顔を隠してヒッソりとなら問題ないが、知り合いの店に顔を出すのは遠分と言わず、話が片付く迄は無理な話だろう。
「悪いな」
「わ、そんな謝らないでよ。ユキマサ君は何も悪くないんだから。ていうか、今回の件、後で良いからちゃんと詳しく話を聞かせてよね」
「まず、話を聞くべきじゃないか? 悪くないって言った後に詳しく話を聞かせろって順序逆だろ? まあ、俺が言うのも何だけどさ?」
「ユキマサ君、私のユキマサ君に対する信頼度分かってる? 今の私はユキマサ君を誰よりも信じてる。極端な話、1+1=3って言われても信じるレベル」
「いや待て、崇拝と信頼は違うぜ? てか、どんだけ信頼度上がってんだよ」
「好きな人だもん。それぐらい信頼するよ」
少し先を歩くクレハがイタズラ気に微笑みながら振り返る。そうして徐々に顔が赤くなっていく。
「あ、ありがとう……でいいのか……?」
恐らくエメレアとかミリアとかの仲間として好きってことだろ? まあ、だとしても少し照れるな。
「ユキマサ君、どうせ的外れなこと考えてるでしょ?」
「? 何の話だ」
俺を見て、溜め息を吐くクレハ。
「もういいよ。私も自分の感情に覚悟は決めたけど、焦るつもりもないから──っと、早く行こ。私、何だか、またお腹空いてきちゃった」
そう言い俺の手を引くクレハは笑っている。
「いいねぇ、俺も空きっ腹に変に肉を入れたら、余計に腹が減って来た所だ」
「ふふ、ユキマサ君、食べるの好きだよね」
「ん、食べるのは誰だって好きだろ? まあ、数少ない俺の娯楽の一つとは言えるかな」
「うーん、確かに私も食べるのは好きだよ。ミリアも大好きだし、エメレアちゃんも好きだったな。あ、うん、みんな好きだね。食べるのは」
「ハハッ。だろ? 俺は異世界来てから食い過ぎな気もするがな。物珍しい物が沢山だ」
「私的にはユキマサ君の故郷の料理に興味あるな。お味噌汁も豚汁も凄く美味しかったし」
「他にもこの世界には無い出汁の利いた料理は色々とあるからな、今度作ってやるよ?」
「え、いいの? あ、じゃあ、お返しに私はこの世界の美味しい物、いっぱい紹介するね!」
「そりゃいい、異世界食文化交流だな!」
そんな他愛もない話に花を咲かせる。
異世界飯には驚かされてばかりだからな。
これからも楽しみだ。
だが、飽食の国、日本で育った俺としては異世界料理に負けじと紹介したい美味い料理も沢山ある。機会を見て振る舞ってみるかな。
そんな思いを抱きながら俺はクレハと歩いていく。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
1,623
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる