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第488話 奴隷オークション
しおりを挟む奴隷オークション、俺の知る限りじゃ最悪のオークションだな。異世界にはこういう場所もあるのか。
暗い路地には似つかない王族のような連中も、盗賊のような奴から、酒瓶を持った小汚ない乞食のような奴も、こぞってオークション会場に入っていく。
その流れで入れるかなと足を進めたが──
「止まれ。ここは会員制だ。会員証か紹介状を出しな」
「なら、お前の紹介だ」
と、俺は金貨を5枚取り出し、男の掌に置く。
「おっと、困りますよ。旦那、私が怒られてしまう」
あからさまに態度と言葉遣いが変わる。
もう5枚、俺は金貨を渡す。
「なら、見なかったことにしてくれ」
「……そうですね。私は何も見てなかった。誰もここを通らなかった。そう記憶しておきます。金払いの良い人間が増えるのは主催者側としても+ですしね」
ヒヒヒと10枚の金貨を嬉しそうに数える男。
「助かる」
金貨10枚、日本円にして100万。
無職の俺には痛い出費だが、仕方ない。棚ぼたのロキとジャンの大盤振る舞いの賞金と礼金に感謝しよう。
行くぞと桜に声を掛け。いざ、奴隷オークションの中へと足を運ぶ。
入場さえしてしまえば後はセキリュティは激ゆる。怪しげなスーツの男に席まで案内されたよ。しかも飲み物まで出るのね。俺はこの世界でもあったアイスコーヒーと桜はオレンジジュースを頼んだ。
桜は、喉が渇いてたので嬉しいです。と、ご満悦だった。一応、毒や睡眠薬の類いの物を警戒したが、その心配はなさそうだ。それに俺には〝状態異常耐性(極)〟というスキルがあるので、スプーンでカレーを食べるが如く毒をもりもり食ったとしても多分何も問題ない。
桜の方も何か盛られてても俺がいるしな、回復魔法で一発で治る。
にしても、人、結構いるな。サーカスのような作りのテントの中は満員に近い。
最前列にVIP席なのか少し広めに取られた空間に、玉座のようなゴージャスな椅子が置かれている。
それが等間隔に四席ある。いつもはどうなのかは知らないが、今日は全席埋まってるようだ。
──ん?
あれはさっきのギンたちを奴隷にしてた、王族じゃねぇか。何処に逃げたかと思えば、奴隷がいなくなれば奴隷をまた買うという傍迷惑な考えだな。
このまま狙撃してやろうか? そう考えたが、その瞬間、会場の観客席の電気が落ち、ステージ中央に黒スーツの男が現れると会場は歓声に包まれた──
「始まりますね……」
本当に喉が渇いてたのだろう、オレンジジュースを飲み干した桜が、始まる奴隷オークションを見て息を呑むのだった──。
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