生まれる世界を間違えた俺は女神様に異世界召喚されました【リメイク版】

雪乃カナ

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第153話 第6隊

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 ──大都市エルクステン 
       ドラグライト孤児院前──

「《走れ・水の波・数多の龍》〝水龍の波ドラコ・ウーダ〟!!」

 水の魔法で作られた二匹の水の龍が、魔物を倒す。

「チッ、キリが無いな!」

 長い金髪の髪を揺らし、クシェリが舌打ちをする。

「クシェリさん、危ないっ!!」

 クシェラの背後から、大きな蛇の頭を二つ持つ魔物が噛みつこうとしている。茶髪のボブカットの少女──サラがクシェリに向かい、慌てて声をかける。
 そしてその直ぐ側には、何人かの武装した者達がおり、苦戦をしながらも、何とか攻防に耐えている。

「ふん、愚妹ぐまいめ、サラに心配をかけるな!」

 ザン! と、二つの魔物の頭をクシェラが斬る。

愚兄ぐけい!? 礼は言わんぞ? あれぐらい自分で対処できた」
「必要ない、それよりも愚妹、一時休戦といかんか? とてもじゃないが、今いがみ合っていては、家の中で怯える幼女達を心から安心させてはやれない」

「そうだな、私も尊き男児達を危険に晒すのは避けたい。構わんぞ、一時休戦だ! 子供達を守るぞ!」

 クシェラとクシェリは背中を合わせる。

「無論だ」
「それにサラ! お前達も家に入れ! まだまだお前達は私たちに守られていればいい!」

 クシェリが駆けつけた孤児院の卒業生達に声を張る。戦力は多いに越した事はないが、幾分いくぶん、まだ卒業生達の動きはクシェリ達から見れば危なっかしい。

「私達にも手伝わせてください!」
「そうです、俺達も役に立ちたいんです!」
「お願いします!」

「……だ、そうだ、どうする、愚兄?」
「……まあ、手が足りないのは事実だ。ならばありがたく手伝って貰おう、それと極力魔物とは複数人で戦うようにしろ!」

「「「「「「「「分かりました!」」」」」」」」

 クシェラが指示を出すと、卒業生達は嬉しそうに声を揃え返事を返す。

 *

 ──大都市エルクステン
         ギルド受付前付近──

「フォルタニアさん、戦場はどうなってますか?」

 ロキが神妙な表情でフォルタニアに質問する。
 だが、ロキの口調はいつもよりも重い。

「ウチの騎士隊だと、第1、第3、第6、第7隊は街の魔物と戦っています。第2、第8隊は魔族と交戦中、尚、同所には〝聖女〟ジューリア・クーロー様と〝こぶし拳聖けんせい〟マリア・アートハイム様がいらっしゃるようです」

「なるほど、それと魔王は?」
「魔王は大聖女様が食い止めてるようですが……」

「どうしました?」

「魔王ガリアペストから出る毒ガスや病原体により、少なくない数の人的被害が出ています、このままでは魔王を倒す以前に、下手をすれば毒で全滅かと」

 ──バタバタ、ドン!

「し、失礼します、ギルドマスター!!」

 すると、そこに〝鳥人族ハルピュリア〟の少女が、ギルドに駆け込んでくる。
 少女の身体は傷だらけで、あちこちから血が流れている。

 近くにいたフォルタニアが慌てて駆け寄り、ギルドの職員が急ぎポーションを運んで来る。

「ほ、報告します! 魔王ガリアペスト軍の魔族──愧火キビが現れました。第3隊と第6隊が交戦しましたが、劣勢。現在第3隊と第6隊はヴィエラ隊長とルドルフ隊長以外、まともに動ける者は無く、隊は壊滅状態です!」

「「「「「「!!」」」」」」

 報告を聞いたギルドの者達は驚きを見せるが、その中でただ一人、ロキだけが冷静に話を聞いていた。

「報告ご苦労様でした。あなたは怪我の治療をしてください。後は私にお任せください」
「あ、あと、街の城壁の外からも大量の魔物が来ています!」

「分かりました、合わせて確認します」

 ロキは視線アイコンタクトでフォルタニアに合図を送ると、報告を終え、気を失った少女を抱き上げると、ギルドの職員に「怪我の治療を。合わせて多くの怪我人が運び込まれて来ると思います。緊急体制を取って、ポーションも掻き集めてください」といい、少女を預ける。

 *

 ──大都市エルクステン 西部──

「はぁ、はぁ、何て速さなの!」
「防ぐのがやっとですね、反撃まで手が回りません」

 第3騎士隊長の長い緑髪の女性──ヴィエラ・フローリアと、その近くには猫人族キャットヒューマンの青年がいる。名はルドルフ・ロドライハ、ギルド第6騎士隊長である。
 その姿は猫耳だ。口には黒い口あてをしている。
 
 辺りには第3隊、第6隊の隊員が、ほぼ全滅状態で倒れている。

「ハハッ! 戦争は楽しいなぁ!」

 着崩した和服に刀を持った、顔にも体にも白い包帯をぐるぐる巻きに巻いている。赤い鋭い目の魔族だ。

 ──ヒュン!!

 愧火キビが動く、その動きは速い。

「くっ!?」

 目には自信のあるヴィエラだが、そのヴィエラでも目で追えず、刀の一振ひとふりの攻撃を受けてしまう。

 魔力を纏い、腕で庇うが僅かに押し負け、赤い鮮血を飛ばす。

「ヴィエラ殿!!」

 ルドルフが慌てて駆け寄るが、ヴィエラはそっと手でそれを制す。

「ご心配無く、かすり傷よ」

 その様子を見て魔族──愧火キビは不適に笑う。

「いいねぇ、そうこなくちゃ楽しくねぇよなァ?」

 空気が冷たく感じる、そんな感覚をヴィエラとルドルフは同時に強く感じた。

 そうして戦況は刻一刻と時を刻んでいく── 
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