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第八話 剣の道
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「何? その盾がいいの?」
アイーシャの質問に、ブレンは黙って頷いた。
「それは……カイトシールドですね。うちではもう取り扱って無いと思ったけど、そんなところに埋もれていたのか。随分古いな……」
店員はブレンから盾を受け取りしげしげと眺める。埃は被っているが錆などはなく、磨けば問題はなさそうだった。
「じゃあ兜は……これは?」
アイーシャが棚に置いてある兜を指さした。頭頂部が少し尖っており、額から顎にかけて顔を保護する骨が入っているものだった。
ブレンは兜についても何かピンとくるものがあるかとおもったが、こちらに関しては何も感じなかった。どうやら過去の自分は兜を身につけていなかったかこだわりがなかったらしい。
特にどれでもいいので、ブレンはアイーシャを見て頷く。
「じゃ、その兜とこの盾をお願い」
「はい、かしこまりました。装備されていきますか? それともお包みしますか?」
「そのままでいいわ。着けてくから」
「はい。では軽く磨いてからお渡しします」
店員は慣れた手つきで盾と兜を磨きピカピカにしてくれた。そして代金を聞いてブレンはぎょっとした。盾は三万、兜は六万で合計九万。さっき手に入れた金の大半を支払うことになった。
しかしアイーシャは涼しい顔で支払いを済ませ、ブレンは真新しい装備を身につけて店を後にした。
「随分高いんだな」
小声でブレンがアイーシャに言った。
「何? 盾と兜の事? 当たり前でしょ、命を守るものなんだから。まああんたには過ぎた装備かも知れないけど……」
「ふむ。必要な経費という事か。しかし……何だか金を使わせてしまって悪いな」
「暴れ狼はあんたがいなけりゃ仕留められなかった。あんたの稼ぎなんだから、黙って受け取っておきなさい」
ブレンはその言葉を聞いて小さく頷いた。そしてそれ以上金のことをいう事はしなかった。これはアイーシャなりの誠意なのだろうと思ったからだ。
「……家の方角は反対じゃないか?」
しばらく歩いてブレンは気づいた。街の構造はまだよく分かっていないが、太陽と山の位置関係からすると東に向かっている。家は大まかに西の方向だ。
「そうよ。まだちょっと用があるの……昨日のあんたの様子からすると、ひょっとするともう必要ないのかもしれないけど……客観的なあんたの強さを知っておきたい」
「強さ? 何をするんだ?」
「何って……そこの建物よ! 何だと思う?」
アイーシャが歩く先を指さした。そこには一際大きな構えの門があり、掲げられている看板も大きなものだった。板に文字を書いているのではなく、木を彫って文字の形にした凝った看板だった。
「……ローリック剣術道場? 剣術だって?!」
「そう! あんたのへっぴり剣術がどこまで通用するのかここで確認するのよ! 怪しまれるから黙ってなさい」
「うむ」
そう答えてブレンは改めて口をつむぐ。
アイーシャについて道場の門をくぐると、奥の道場の入口までに広間があり、そこで多くの男たちが練習をしているようだった。時折気合の声が聞こえ、木と木が激しくぶつかる音が響いている。
皆集中しているようだったが、突然入ってきたアイーシャとブレンにちらちらと視線が集まっていた。
「おお、アイーシャ! 本当に来たのか? そいつがエルデンさんの言ってた魔導人形か?!」
奥の道場の中からしっかりした体躯の男がやってきた。腕も脚も太く、左の腰には剣を佩いている。笑顔でアイーシャを出迎えながら、こちらに近づいてくる。
「ローリックさん。よろしくお願いします」
アイーシャは軽くお辞儀をする。
「はははは! まさか本当にやってくるとはな。で、彼をぶっ壊して欲しいんだって?」
ローリックと呼ばれた男はブレンの方に手を置いた。重く、力強い手。ブレンはただならぬ力を感じ、恐怖のような感覚を味わっていた。
アイーシャの質問に、ブレンは黙って頷いた。
「それは……カイトシールドですね。うちではもう取り扱って無いと思ったけど、そんなところに埋もれていたのか。随分古いな……」
店員はブレンから盾を受け取りしげしげと眺める。埃は被っているが錆などはなく、磨けば問題はなさそうだった。
「じゃあ兜は……これは?」
アイーシャが棚に置いてある兜を指さした。頭頂部が少し尖っており、額から顎にかけて顔を保護する骨が入っているものだった。
ブレンは兜についても何かピンとくるものがあるかとおもったが、こちらに関しては何も感じなかった。どうやら過去の自分は兜を身につけていなかったかこだわりがなかったらしい。
特にどれでもいいので、ブレンはアイーシャを見て頷く。
「じゃ、その兜とこの盾をお願い」
「はい、かしこまりました。装備されていきますか? それともお包みしますか?」
「そのままでいいわ。着けてくから」
「はい。では軽く磨いてからお渡しします」
店員は慣れた手つきで盾と兜を磨きピカピカにしてくれた。そして代金を聞いてブレンはぎょっとした。盾は三万、兜は六万で合計九万。さっき手に入れた金の大半を支払うことになった。
しかしアイーシャは涼しい顔で支払いを済ませ、ブレンは真新しい装備を身につけて店を後にした。
「随分高いんだな」
小声でブレンがアイーシャに言った。
「何? 盾と兜の事? 当たり前でしょ、命を守るものなんだから。まああんたには過ぎた装備かも知れないけど……」
「ふむ。必要な経費という事か。しかし……何だか金を使わせてしまって悪いな」
「暴れ狼はあんたがいなけりゃ仕留められなかった。あんたの稼ぎなんだから、黙って受け取っておきなさい」
ブレンはその言葉を聞いて小さく頷いた。そしてそれ以上金のことをいう事はしなかった。これはアイーシャなりの誠意なのだろうと思ったからだ。
「……家の方角は反対じゃないか?」
しばらく歩いてブレンは気づいた。街の構造はまだよく分かっていないが、太陽と山の位置関係からすると東に向かっている。家は大まかに西の方向だ。
「そうよ。まだちょっと用があるの……昨日のあんたの様子からすると、ひょっとするともう必要ないのかもしれないけど……客観的なあんたの強さを知っておきたい」
「強さ? 何をするんだ?」
「何って……そこの建物よ! 何だと思う?」
アイーシャが歩く先を指さした。そこには一際大きな構えの門があり、掲げられている看板も大きなものだった。板に文字を書いているのではなく、木を彫って文字の形にした凝った看板だった。
「……ローリック剣術道場? 剣術だって?!」
「そう! あんたのへっぴり剣術がどこまで通用するのかここで確認するのよ! 怪しまれるから黙ってなさい」
「うむ」
そう答えてブレンは改めて口をつむぐ。
アイーシャについて道場の門をくぐると、奥の道場の入口までに広間があり、そこで多くの男たちが練習をしているようだった。時折気合の声が聞こえ、木と木が激しくぶつかる音が響いている。
皆集中しているようだったが、突然入ってきたアイーシャとブレンにちらちらと視線が集まっていた。
「おお、アイーシャ! 本当に来たのか? そいつがエルデンさんの言ってた魔導人形か?!」
奥の道場の中からしっかりした体躯の男がやってきた。腕も脚も太く、左の腰には剣を佩いている。笑顔でアイーシャを出迎えながら、こちらに近づいてくる。
「ローリックさん。よろしくお願いします」
アイーシャは軽くお辞儀をする。
「はははは! まさか本当にやってくるとはな。で、彼をぶっ壊して欲しいんだって?」
ローリックと呼ばれた男はブレンの方に手を置いた。重く、力強い手。ブレンはただならぬ力を感じ、恐怖のような感覚を味わっていた。
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