34 / 40
第九話 身支度
9-2
しおりを挟む
「ブレン。もう一度確認のために聞いておくわ。あんたの役割は?」
アイーシャがソファに腰かけお茶を飲みながら聞く。
「役割か。前衛、だろう? 君と魔物の間に立ち、攻撃を引きつけ君を守る」
「そう。その辺の森でもダンジョンでもそれは同じ。練習したようにやればいい」
ブレンが前衛。アイーシャが後衛。ブレンは具体的に何のための魔導人形か不明のままだが、しいて言えば剣使いの戦士職だ。元々の防御力も高いし、今は鎧の他に兜と盾も身につけている。防備は万全だ。
そして僧侶の資格を持つアイーシャは後衛。ブレンは人間のように回復魔法を受け付けないようなので、主に補助と攻撃魔法を使うことになる。
その事を念頭に二人は森の魔物を相手に練習した。と言っても、最近のブレンは滅法強くなってしまい敵になるような魔物がいなくなってしまっていた。
火炎蜂や邪眼蝶は攻撃を当てにくいが、そんな魔物相手でもブレンは正確に斬撃を当てやっつけてしまう。あれから一度暴れ狼の群れを見つけたが、今度はアイーシャの助けなしでほとんど一方的にブレンがやっつけてしまう程だった。
「剣の使い方は大体思い出したと思う。一か月前のローリックとの戦いのおかげかも知れない。短い時間だったが、なかなか刺激的な経験だった」
「刺激的ねえ……」
その言葉を聞けばローリックやベラウはどう思うのだろうか。怒るのか、はたまた喜ぶのか。アイーシャにはわからなかった。
「……あんたのおかげで、私も魔力切れの心配がなくなった。元々四回くらい使うのがやっとだったけど……回数の制限がないし、威力も上がっている」
アイーシャは自分の左手の甲の紋様を眺める。思えば、全てはこれから始まったのだ。あの名無しの古いダンジョンでブレンを見つけ、いきなり主従関係を結ばされた。
しかし、今日こうしてダンジョンに向かう用意をしているのも、すべてブレンのおかげと言ってもいい。一人でもやり切るつもりだったが、やはり僧侶一人では現実性が薄い。ブレンという前衛、それも飛び切り強くて頑丈な魔導人形がいればこそなのだ。
「あんたって本当に謎よね……ただの魔導人形じゃない。変な魔導人形……」
「変か。しかし僕はほかの魔導人形を知らないからな……君がそういうのならそうなんだろう」
「そもそも普通にしゃべれているのがおかしいのよね。魔導人形って普通決まったことしか答えられないのよ。古代の奴は多少融通が利いたらしいけど……あんたはもっと古代の魔導人形なのかしら?」
「僕の記憶は今も戻っていない。眠る前の状況を思い出せば具体的に何年経ったというのも分かるかも知れないが……現状では無理だ」
「まあいいわ。下手に昔のことを思い出して昔の主人を探しにでも行かれたら困るし……」
「そうだな。今は君と主従関係にあるし、それを破るようなことになっては僕も困る。特に過去の事を思い出す必要はないだろう」
ブレンはアイーシャの目を見つめながら言った。
「ふうん……ところでさ……あんた、いきなり魔力が切れて止まったりしないわよね?」
アイーシャの問いに、ブレンはしばらく考えるように首をかしげ答えた。
「自覚できる異常はない。僕の中のレンダリングエナジーはおおよそ一定で、それから生み出される魔力も一定だ。君が魔法を使うとその分僕の魔力は減るが、許容範囲内だ。魔力切れを起こすことはないだろう」
その答えに、アイーシャは困ったように頬杖を突く。
「時々あんたは言うけどさ、そのレンダリングエナジーって何なの? 魔力とは違うものなの?」
「レンダリングエナジーが何か、か……さあ、何だろうな。レンダリングエナジーという言葉だけがぽつんと頭の中にあって、それに関連する知識が……恐らく存在しない。無いのか、忘れているのか、それも分からないが……とにかくレンダリングエナジーとしかいいようがない。魔力とはまた別のものだ」
「普通の魔導人形は定期的に魔力を注入する必要があるけど……あんたの場合はそれがない。私は魔力をあんたに注入してないし、それどころか逆にあんたからもらっている。本当に……あんたの中身はどうなっているのかしら?」
「さあ、どうだろう」
言いながらブレンは自分の胸をつつく。硬い鎧の音が響く。
「内側にあるのは、何かとても危険な物のような気がする。僕の体が頑丈なのは、それを抑えるためかもしれない」
「あんたが……抑えてる……?! また訳の分からないことを。火が燃えてるとか……そういう事じゃなさそうだけど」
「似たような物かもな。この世界の法則とは全く別の、何か不可解な力なのかもしれない」
「不可解……ほんと、不可解ね。考えてても時間の無駄だわ」
アイーシャはお茶を一気に飲み干し、テーブルの上に置いた。
アイーシャがソファに腰かけお茶を飲みながら聞く。
「役割か。前衛、だろう? 君と魔物の間に立ち、攻撃を引きつけ君を守る」
「そう。その辺の森でもダンジョンでもそれは同じ。練習したようにやればいい」
ブレンが前衛。アイーシャが後衛。ブレンは具体的に何のための魔導人形か不明のままだが、しいて言えば剣使いの戦士職だ。元々の防御力も高いし、今は鎧の他に兜と盾も身につけている。防備は万全だ。
そして僧侶の資格を持つアイーシャは後衛。ブレンは人間のように回復魔法を受け付けないようなので、主に補助と攻撃魔法を使うことになる。
その事を念頭に二人は森の魔物を相手に練習した。と言っても、最近のブレンは滅法強くなってしまい敵になるような魔物がいなくなってしまっていた。
火炎蜂や邪眼蝶は攻撃を当てにくいが、そんな魔物相手でもブレンは正確に斬撃を当てやっつけてしまう。あれから一度暴れ狼の群れを見つけたが、今度はアイーシャの助けなしでほとんど一方的にブレンがやっつけてしまう程だった。
「剣の使い方は大体思い出したと思う。一か月前のローリックとの戦いのおかげかも知れない。短い時間だったが、なかなか刺激的な経験だった」
「刺激的ねえ……」
その言葉を聞けばローリックやベラウはどう思うのだろうか。怒るのか、はたまた喜ぶのか。アイーシャにはわからなかった。
「……あんたのおかげで、私も魔力切れの心配がなくなった。元々四回くらい使うのがやっとだったけど……回数の制限がないし、威力も上がっている」
アイーシャは自分の左手の甲の紋様を眺める。思えば、全てはこれから始まったのだ。あの名無しの古いダンジョンでブレンを見つけ、いきなり主従関係を結ばされた。
しかし、今日こうしてダンジョンに向かう用意をしているのも、すべてブレンのおかげと言ってもいい。一人でもやり切るつもりだったが、やはり僧侶一人では現実性が薄い。ブレンという前衛、それも飛び切り強くて頑丈な魔導人形がいればこそなのだ。
「あんたって本当に謎よね……ただの魔導人形じゃない。変な魔導人形……」
「変か。しかし僕はほかの魔導人形を知らないからな……君がそういうのならそうなんだろう」
「そもそも普通にしゃべれているのがおかしいのよね。魔導人形って普通決まったことしか答えられないのよ。古代の奴は多少融通が利いたらしいけど……あんたはもっと古代の魔導人形なのかしら?」
「僕の記憶は今も戻っていない。眠る前の状況を思い出せば具体的に何年経ったというのも分かるかも知れないが……現状では無理だ」
「まあいいわ。下手に昔のことを思い出して昔の主人を探しにでも行かれたら困るし……」
「そうだな。今は君と主従関係にあるし、それを破るようなことになっては僕も困る。特に過去の事を思い出す必要はないだろう」
ブレンはアイーシャの目を見つめながら言った。
「ふうん……ところでさ……あんた、いきなり魔力が切れて止まったりしないわよね?」
アイーシャの問いに、ブレンはしばらく考えるように首をかしげ答えた。
「自覚できる異常はない。僕の中のレンダリングエナジーはおおよそ一定で、それから生み出される魔力も一定だ。君が魔法を使うとその分僕の魔力は減るが、許容範囲内だ。魔力切れを起こすことはないだろう」
その答えに、アイーシャは困ったように頬杖を突く。
「時々あんたは言うけどさ、そのレンダリングエナジーって何なの? 魔力とは違うものなの?」
「レンダリングエナジーが何か、か……さあ、何だろうな。レンダリングエナジーという言葉だけがぽつんと頭の中にあって、それに関連する知識が……恐らく存在しない。無いのか、忘れているのか、それも分からないが……とにかくレンダリングエナジーとしかいいようがない。魔力とはまた別のものだ」
「普通の魔導人形は定期的に魔力を注入する必要があるけど……あんたの場合はそれがない。私は魔力をあんたに注入してないし、それどころか逆にあんたからもらっている。本当に……あんたの中身はどうなっているのかしら?」
「さあ、どうだろう」
言いながらブレンは自分の胸をつつく。硬い鎧の音が響く。
「内側にあるのは、何かとても危険な物のような気がする。僕の体が頑丈なのは、それを抑えるためかもしれない」
「あんたが……抑えてる……?! また訳の分からないことを。火が燃えてるとか……そういう事じゃなさそうだけど」
「似たような物かもな。この世界の法則とは全く別の、何か不可解な力なのかもしれない」
「不可解……ほんと、不可解ね。考えてても時間の無駄だわ」
アイーシャはお茶を一気に飲み干し、テーブルの上に置いた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
天城の夢幻ダンジョン攻略と無限の神空間で超絶レベリング ~ガチャスキルに目覚めた俺は無職だけどダンジョンを攻略してトップの探索士を目指す~
仮実谷 望
ファンタジー
無職になってしまった摩廻天重郎はある日ガチャを引くスキルを得る。ガチャで得た鍛錬の神鍵で無限の神空間にたどり着く。そこで色々な異世界の住人との出会いもある。神空間で色んなユニットを配置できるようになり自分自身だけレベリングが可能になりどんどんレベルが上がっていく。可愛いヒロイン多数登場予定です。ガチャから出てくるユニットも可愛くて強いキャラが出てくる中、300年の時を生きる謎の少女が暗躍していた。ダンジョンが一般に知られるようになり動き出す政府の動向を観察しつつ我先へとダンジョンに入りたいと願う一般人たちを跳ね除けて天重郎はトップの探索士を目指して生きていく。次々と美少女の探索士が天重郎のところに集まってくる。天重郎は最強の探索士を目指していく。他の雑草のような奴らを跳ね除けて天重郎は最強への道を歩み続ける。
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
お兄ちゃんはお兄ちゃんだけど、お兄ちゃんなのにお兄ちゃんじゃない!?
すずなり。
恋愛
幼いころ、母に施設に預けられた鈴(すず)。
お母さん「病気を治して迎えにくるから待ってて?」
その母は・・迎えにくることは無かった。
代わりに迎えに来た『父』と『兄』。
私の引き取り先は『本当の家』だった。
お父さん「鈴の家だよ?」
鈴「私・・一緒に暮らしていいんでしょうか・・。」
新しい家で始まる生活。
でも私は・・・お母さんの病気の遺伝子を受け継いでる・・・。
鈴「うぁ・・・・。」
兄「鈴!?」
倒れることが多くなっていく日々・・・。
そんな中でも『恋』は私の都合なんて考えてくれない。
『もう・・妹にみれない・・・。』
『お兄ちゃん・・・。』
「お前のこと、施設にいたころから好きだった・・・!」
「ーーーーっ!」
※本編には病名や治療法、薬などいろいろ出てきますが、全て想像の世界のお話です。現実世界とは一切関係ありません。
※コメントや感想などは受け付けることはできません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
※孤児、脱字などチェックはしてますが漏れもあります。ご容赦ください。
※表現不足なども重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけたら幸いです。(それはもう『へぇー・・』ぐらいに。)
中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語
jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ
★作品はマリーの語り、一人称で進行します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる