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第二章 ダンジョンへ
第十五話 ダンジョンへの道
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隣国のタリオテガイへの約三週間の旅を終え、辿り着いた町はジュンルウと言った。タリオテガイで四番目に大きな都市であり、ヒッケンの十倍ほどの人口だという。
ヒッケンも大きな町だと思ったが、言わば地方都市クラスであり、ここジュンルウは都心クラスという感じらしい。
町の目抜き通りが広い。ざっと五十メートルはあるだろうか。小学生の運動会くらいなら出来そうなくらいだ。そんな通りがいくつもある。もっとも、そこら中に人がいるので走り回る事なんてできそうにないが。
人。人。人。窒息しそうなくらいの人の多さだった。何度か東京や大阪に遊びに行ったことはあるが、その時の気分に似ている。高層ビルこそないが、人の多さは負けていない感じだ。それに活気も。
立ち並ぶ商店には行列ができ、屋台では威勢のいい声が飛び交っている。ジュンルウに来てもう三日だが、俺はまだこの町の感覚に慣れる事が出来ないでいた。
転生する前はずっと地方の人が少ない所に住んでいたから、これだけの人にもまれるのはそれだけで疲れることだった。
俺はベンチを見つけて一休みする。すると早速お茶やお菓子の売り子が寄ってくるが、手を振って追い払う。ここでは多少強気でいないとあっという間にお金が無くなってしまう。それにスリも危険だ。退屈はしないが、油断のならない街だった。
「もっと朝早くにすればよかったか。こんなに人がいるんじゃな……」
ジュンルウには木工職人の研修旅行という事で来たのだが、最近までこの国では疫病が流行っていたらしい。一年ほど前に広がりかなり長い期間続いていたそうだが、最近になってようやく治まってきたのだ。俺達がこの国に来られたのもそれが理由だった。
だが肝心の研修先、職人の工房などでまた感染者が出たらしく、そこに行く予定が潰れてしまった。そのせいで俺は用意してもらった宿舎で待機……なのだが、実際は自由時間で勝手に出歩かせてもらっている。
マジェスタはと言えば早速会社に泊まり込んでの仕事が続いているそうで、俺の境遇を随分うらやんでいた。俺がお前だったら町中の女の子と恋が出来るのに、とかなんとか。あいつは外国に来ても物怖じしていない。その点はすごいが、それ以外に駄目な点がいろいろある。見習うにしても取捨選択が必要だろう。
そして俺は今、自由時間を使ってダンジョンを目指している。この町を抜けて街道を進んでいくと、隣の町との境界辺り、山の麓にダンジョンがあるらしい。アストラと名付けられていて、ざっと二百年前からそこにあるそうだ。マジェスタから貰った地図にも描いてあって、ジュンルウから一番近いダンジョンだ。
距離は大体十キロくらいらしいので、歩きでも二時間ほどで辿り着く。そう思っていたのだが……思ったより町の通りの人が多くて移動に時間がかかり、揉みくちゃにされてどっと疲れている所だった。
「……でも、こんな所でへこたれてる場合じゃないな」
俺は意を決して立ち上がる。一歩歩けば一歩近づく。人ごみをかき分け、俺はダンジョンへと向かった。
「ここかな……人が集まってる」
恐らく二時間少々が経ったのだろう。日もいつの間にか高くなり、腹も減って喉も乾いた。
ずっと森の中の道が続いていたが、それが開け山の方へと道が分岐していた。道の続く先にはいくつかの建物があり、人も結構集まっているようだった。それに看板が出ていて、アストラダンジョンとある。間違いないようだ。
「ダンジョン……ここに本当に、俺に関係する何かがあるのかな?」
このダンジョンを征服せし者は神の前に立つであろう。
ダンジョンにはその文字が刻まれているという。俺をこの世界に転生させたものが神であるのなら、その神とダンジョンの中で会う事が出来るのかもしれない。
何だか荒唐無稽な気もするが、他に縋れるような者はなかった。いくつかの宗教は存在するが、神棚やご神体を相手に何十年も拝んでいるよりは建設的な行為に思えた。
ダンジョンの入り口に近づくにつれその姿が見えてきた。だがそれはダンジョンそのものではなく、囲っている柵や門のようだった。手前にはいくつかの建物があるが、それには双頭の鷲、ギルドのマークが描かれているようだった。
「ひょっとして……入れないのか?」
てっきりダンジョンの入り口があって、自由にそこに出入り出来るものかと思っていたが……あの門で受付をしているようだった。それにギルドが絡んでいるという事は、ひょっとするとそこに登録しないと中に入れないのかもしれない。
嫌な予感がしてくるが……近づくにつれてそれは確信に変わっていく。
冒険者達……鎧を身に着け剣や槍で武装した人たちが列になり何かを待っている。門で係の人が書類を確認し、何事か口頭で確認している。それが済んだ人から門をくぐり中へと進んでいるようだった。恐らく門の向こうにダンジョンの入り口があるのだろうが……外からでは見えないようだった。
まずいぞ、これは。ひょっとして……全然見る事が出来ないのか?
俺は門の二十メートルほど手前で止まり様子を見る。誰かに話しかけたいが、冒険者の人たちはみんないかつくて声をかけづらい。赤い鎧の人はおそらくこのダンジョンの管理者か何かの人なのだろうが、みんな忙しそうで話しかけるタイミングがない。
強気でいかなければパンも買えない。マジェスタが言っていたことだが、流石にここで強気になるには、俺は小心者過ぎた。
「よう、兄さん。何か困りごとかい」
声を掛けられ、俺は後ろを振り向く。そこには男の人が立っていた。白髪交じりで、年齢は四十代だろうか。鎧は身につけず普通の服で、冒険者ではないようだが、しかし独特の雰囲気は普通の人でもなさそうだった。
「あーあの……ダンジョンを見たかったんですけど、ここって勝手に見られないんですか?」
「ダンジョンを見に? 偵察って事かい?」
「いや、そうじゃなくて……本当に見学って言うか、眺めるだけと言うか……」
「見学? はははは! こりゃいいや! 古戦場やら城跡の見学ならともかく、ダンジョンの見学とはな……!」
男は大仰に笑い、なんだか俺は笑われて恥ずかしくなった。心なしか周りの目が集まっているような気がする。
「いや、すまんね。兄さんが妙なこと言うからだぜ……見学って、本気かい?」
男は顎を撫でながら俺に聞いた。俺はうさん臭さを感じながらも、男に答えた。
「本気……です。木工職人の見習い中なんですけど……ダンジョンの建築技術に興味があって。それを見て見たかったんですけど……入れないみたいで」
「建築?! ほう、そういうことか。職人さんとはね。確かにダンジョンは一晩でまるっきり姿を変えちまうからねえ……建築って事なら、なるほど、面白いものなのかもなあ……」
「ええ。そう思ってここまで来たんですけど……」
「生憎だが、兄さん、そいつは無理だな」
男は断ち切るように言い、言葉を続けた。
「そこのギルドはまだ行ってないんだよな? まず、あそこで管理組合に登録しなきゃ入れねえ。その金が二十万ダーツだ。で、登録したら今度は審査が必要で、これも手数料が五万ダーツ。実際に入るとなりゃ装備も整えなきゃいけないが……まあ見学だけなら入ってすぐでりゃ危険もないかもな。しかし……兄さんは素人だよな?」
「素人……はい、ダンジョンには行ったことはないです」
「戦士でも魔法使いでもない。となりゃソロは無理だからどこかのパーティについていくしかねえが、その場合も依頼料がかかる。まあ数万ダーツからでピンキリだが……とにかく金と手間をかけないとそこの門はくぐれねえんだよ」
「ざっと三十万ダーツが……必要なんですね」
「そうさ。しかもそれは最低限だ。どこまで潜りたいのか知らないが、深くなればなるほど危険が大きくなり依頼料は更に高くなる。それにいくら金を積んだって死ぬときは死ぬからね。自分の命も勘定に入れる度胸も必要だぜ、ひひ……」
そう言い、男は不気味に笑った。
三十万ダーツ。そして、自分の命。軽く考えていたが、結構な大事のようだった。
「ま、冷やかしで門を眺めるだけなら、その辺の係に言えば見せてくれるかもな? 鼻薬は必要だが」
「鼻薬?」
「鼻薬……おいおい、風邪の薬じゃねえぞ。金だよ金。賄賂」
男は少し声を潜めて言う。
「そんなものまで必要に……」
「兄さん、あんたよほどの田舎者のようだな……身なりはともかくその肌と髪……南方の出か?」
「えっ?! ああ……はい」
そうだった。俺はグビラさんの遠い親戚で南方の国の出身という設定だった。
「まあとにかく金が必要だがよ、もし行きたいってんなら俺に声をかけてくれ。俺はリューバン。仲介屋だ。冒険者と依頼主の間を取り持ってる。まあ色々俺の事を言うやつもいるが……金さえもらえりゃ損はさせないよ。ひひ……じゃあな、兄さん」
「はい……ありがとうございました……」
そしてリューバンは人ごみの中に消えていった。なんだかゲームとかのテンプレートみたいな人だったな、リューバン。怪しい人だったが、一応覚えておこう。
しかし、とにかく門を拝むことすら難しいことは分かった。その点はリューバンの情報に感謝だ。
「あ~あ、入り口だけでも見たかったのにな」
「入口? 見えるぞ、二階から」
「えっ?」
俺の独り言に答えたのは、俺の隣を通り過ぎようとしていた赤い鎧の人だった。ここの管理者の人のようだ。
「そこのギルドの二階の窓から見える。中までは無理だが、外観だけなら分かるぞ。あと、さっきのあの男は評判が悪い。金に汚いとな。あんたは見る限り……最近外国から来た人だな? 注意した方がいいぞ。優しい他人は大抵怪しい。俺のような管理組合の者は別だが……とにかく、変な輩には関わらないようにな」
そう言うと係の人は門の方へ向かい冒険者の人と何か確認をし始めた。
「あのおっさん……やっぱり怪しい人だったのか」
リューバン。その名前は忘れておこう。
そしてダンジョンの門はギルドの二階から見る事が出来た。門から五十メートルくらい離れていて結構遠いが、高さ十メートルほどの結構でかいもんだった。内側は異様に暗く、まるでカーテンでもひいてあるかのように途中で急に暗くなっている。
門の石柱に例の文字が刻まれているようだったが、俺の視力ではそこまでは見られなかった。一応頭の中で画像をキャプチャーしておく。
ダンジョン……間近で見られる日はいつになるのか。なかなか厳しい道行になりそうだった。
ヒッケンも大きな町だと思ったが、言わば地方都市クラスであり、ここジュンルウは都心クラスという感じらしい。
町の目抜き通りが広い。ざっと五十メートルはあるだろうか。小学生の運動会くらいなら出来そうなくらいだ。そんな通りがいくつもある。もっとも、そこら中に人がいるので走り回る事なんてできそうにないが。
人。人。人。窒息しそうなくらいの人の多さだった。何度か東京や大阪に遊びに行ったことはあるが、その時の気分に似ている。高層ビルこそないが、人の多さは負けていない感じだ。それに活気も。
立ち並ぶ商店には行列ができ、屋台では威勢のいい声が飛び交っている。ジュンルウに来てもう三日だが、俺はまだこの町の感覚に慣れる事が出来ないでいた。
転生する前はずっと地方の人が少ない所に住んでいたから、これだけの人にもまれるのはそれだけで疲れることだった。
俺はベンチを見つけて一休みする。すると早速お茶やお菓子の売り子が寄ってくるが、手を振って追い払う。ここでは多少強気でいないとあっという間にお金が無くなってしまう。それにスリも危険だ。退屈はしないが、油断のならない街だった。
「もっと朝早くにすればよかったか。こんなに人がいるんじゃな……」
ジュンルウには木工職人の研修旅行という事で来たのだが、最近までこの国では疫病が流行っていたらしい。一年ほど前に広がりかなり長い期間続いていたそうだが、最近になってようやく治まってきたのだ。俺達がこの国に来られたのもそれが理由だった。
だが肝心の研修先、職人の工房などでまた感染者が出たらしく、そこに行く予定が潰れてしまった。そのせいで俺は用意してもらった宿舎で待機……なのだが、実際は自由時間で勝手に出歩かせてもらっている。
マジェスタはと言えば早速会社に泊まり込んでの仕事が続いているそうで、俺の境遇を随分うらやんでいた。俺がお前だったら町中の女の子と恋が出来るのに、とかなんとか。あいつは外国に来ても物怖じしていない。その点はすごいが、それ以外に駄目な点がいろいろある。見習うにしても取捨選択が必要だろう。
そして俺は今、自由時間を使ってダンジョンを目指している。この町を抜けて街道を進んでいくと、隣の町との境界辺り、山の麓にダンジョンがあるらしい。アストラと名付けられていて、ざっと二百年前からそこにあるそうだ。マジェスタから貰った地図にも描いてあって、ジュンルウから一番近いダンジョンだ。
距離は大体十キロくらいらしいので、歩きでも二時間ほどで辿り着く。そう思っていたのだが……思ったより町の通りの人が多くて移動に時間がかかり、揉みくちゃにされてどっと疲れている所だった。
「……でも、こんな所でへこたれてる場合じゃないな」
俺は意を決して立ち上がる。一歩歩けば一歩近づく。人ごみをかき分け、俺はダンジョンへと向かった。
「ここかな……人が集まってる」
恐らく二時間少々が経ったのだろう。日もいつの間にか高くなり、腹も減って喉も乾いた。
ずっと森の中の道が続いていたが、それが開け山の方へと道が分岐していた。道の続く先にはいくつかの建物があり、人も結構集まっているようだった。それに看板が出ていて、アストラダンジョンとある。間違いないようだ。
「ダンジョン……ここに本当に、俺に関係する何かがあるのかな?」
このダンジョンを征服せし者は神の前に立つであろう。
ダンジョンにはその文字が刻まれているという。俺をこの世界に転生させたものが神であるのなら、その神とダンジョンの中で会う事が出来るのかもしれない。
何だか荒唐無稽な気もするが、他に縋れるような者はなかった。いくつかの宗教は存在するが、神棚やご神体を相手に何十年も拝んでいるよりは建設的な行為に思えた。
ダンジョンの入り口に近づくにつれその姿が見えてきた。だがそれはダンジョンそのものではなく、囲っている柵や門のようだった。手前にはいくつかの建物があるが、それには双頭の鷲、ギルドのマークが描かれているようだった。
「ひょっとして……入れないのか?」
てっきりダンジョンの入り口があって、自由にそこに出入り出来るものかと思っていたが……あの門で受付をしているようだった。それにギルドが絡んでいるという事は、ひょっとするとそこに登録しないと中に入れないのかもしれない。
嫌な予感がしてくるが……近づくにつれてそれは確信に変わっていく。
冒険者達……鎧を身に着け剣や槍で武装した人たちが列になり何かを待っている。門で係の人が書類を確認し、何事か口頭で確認している。それが済んだ人から門をくぐり中へと進んでいるようだった。恐らく門の向こうにダンジョンの入り口があるのだろうが……外からでは見えないようだった。
まずいぞ、これは。ひょっとして……全然見る事が出来ないのか?
俺は門の二十メートルほど手前で止まり様子を見る。誰かに話しかけたいが、冒険者の人たちはみんないかつくて声をかけづらい。赤い鎧の人はおそらくこのダンジョンの管理者か何かの人なのだろうが、みんな忙しそうで話しかけるタイミングがない。
強気でいかなければパンも買えない。マジェスタが言っていたことだが、流石にここで強気になるには、俺は小心者過ぎた。
「よう、兄さん。何か困りごとかい」
声を掛けられ、俺は後ろを振り向く。そこには男の人が立っていた。白髪交じりで、年齢は四十代だろうか。鎧は身につけず普通の服で、冒険者ではないようだが、しかし独特の雰囲気は普通の人でもなさそうだった。
「あーあの……ダンジョンを見たかったんですけど、ここって勝手に見られないんですか?」
「ダンジョンを見に? 偵察って事かい?」
「いや、そうじゃなくて……本当に見学って言うか、眺めるだけと言うか……」
「見学? はははは! こりゃいいや! 古戦場やら城跡の見学ならともかく、ダンジョンの見学とはな……!」
男は大仰に笑い、なんだか俺は笑われて恥ずかしくなった。心なしか周りの目が集まっているような気がする。
「いや、すまんね。兄さんが妙なこと言うからだぜ……見学って、本気かい?」
男は顎を撫でながら俺に聞いた。俺はうさん臭さを感じながらも、男に答えた。
「本気……です。木工職人の見習い中なんですけど……ダンジョンの建築技術に興味があって。それを見て見たかったんですけど……入れないみたいで」
「建築?! ほう、そういうことか。職人さんとはね。確かにダンジョンは一晩でまるっきり姿を変えちまうからねえ……建築って事なら、なるほど、面白いものなのかもなあ……」
「ええ。そう思ってここまで来たんですけど……」
「生憎だが、兄さん、そいつは無理だな」
男は断ち切るように言い、言葉を続けた。
「そこのギルドはまだ行ってないんだよな? まず、あそこで管理組合に登録しなきゃ入れねえ。その金が二十万ダーツだ。で、登録したら今度は審査が必要で、これも手数料が五万ダーツ。実際に入るとなりゃ装備も整えなきゃいけないが……まあ見学だけなら入ってすぐでりゃ危険もないかもな。しかし……兄さんは素人だよな?」
「素人……はい、ダンジョンには行ったことはないです」
「戦士でも魔法使いでもない。となりゃソロは無理だからどこかのパーティについていくしかねえが、その場合も依頼料がかかる。まあ数万ダーツからでピンキリだが……とにかく金と手間をかけないとそこの門はくぐれねえんだよ」
「ざっと三十万ダーツが……必要なんですね」
「そうさ。しかもそれは最低限だ。どこまで潜りたいのか知らないが、深くなればなるほど危険が大きくなり依頼料は更に高くなる。それにいくら金を積んだって死ぬときは死ぬからね。自分の命も勘定に入れる度胸も必要だぜ、ひひ……」
そう言い、男は不気味に笑った。
三十万ダーツ。そして、自分の命。軽く考えていたが、結構な大事のようだった。
「ま、冷やかしで門を眺めるだけなら、その辺の係に言えば見せてくれるかもな? 鼻薬は必要だが」
「鼻薬?」
「鼻薬……おいおい、風邪の薬じゃねえぞ。金だよ金。賄賂」
男は少し声を潜めて言う。
「そんなものまで必要に……」
「兄さん、あんたよほどの田舎者のようだな……身なりはともかくその肌と髪……南方の出か?」
「えっ?! ああ……はい」
そうだった。俺はグビラさんの遠い親戚で南方の国の出身という設定だった。
「まあとにかく金が必要だがよ、もし行きたいってんなら俺に声をかけてくれ。俺はリューバン。仲介屋だ。冒険者と依頼主の間を取り持ってる。まあ色々俺の事を言うやつもいるが……金さえもらえりゃ損はさせないよ。ひひ……じゃあな、兄さん」
「はい……ありがとうございました……」
そしてリューバンは人ごみの中に消えていった。なんだかゲームとかのテンプレートみたいな人だったな、リューバン。怪しい人だったが、一応覚えておこう。
しかし、とにかく門を拝むことすら難しいことは分かった。その点はリューバンの情報に感謝だ。
「あ~あ、入り口だけでも見たかったのにな」
「入口? 見えるぞ、二階から」
「えっ?」
俺の独り言に答えたのは、俺の隣を通り過ぎようとしていた赤い鎧の人だった。ここの管理者の人のようだ。
「そこのギルドの二階の窓から見える。中までは無理だが、外観だけなら分かるぞ。あと、さっきのあの男は評判が悪い。金に汚いとな。あんたは見る限り……最近外国から来た人だな? 注意した方がいいぞ。優しい他人は大抵怪しい。俺のような管理組合の者は別だが……とにかく、変な輩には関わらないようにな」
そう言うと係の人は門の方へ向かい冒険者の人と何か確認をし始めた。
「あのおっさん……やっぱり怪しい人だったのか」
リューバン。その名前は忘れておこう。
そしてダンジョンの門はギルドの二階から見る事が出来た。門から五十メートルくらい離れていて結構遠いが、高さ十メートルほどの結構でかいもんだった。内側は異様に暗く、まるでカーテンでもひいてあるかのように途中で急に暗くなっている。
門の石柱に例の文字が刻まれているようだったが、俺の視力ではそこまでは見られなかった。一応頭の中で画像をキャプチャーしておく。
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