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1章「ドラゴン、人間界へ」
四天王最弱、人になる。
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魔王城がある。
そこに魔王をトップにした軍隊がある。
それを魔王軍と皆は呼ぶ。
そんな魔王軍の中から特別に選別された四名が集う少数精鋭の部隊を「四天王」と魔王様は使命した。
オレは「バハムート」と呼ばれ人々に恐れられていた。
本来は「魚」の姿で生まれたが、何故か女神に「人々の一般的なイメージに合わないからドラゴンの姿になりなさい」と無茶振りをされたので、ドラゴンの姿になった。
まぁドラゴンの方が便利だからよかったけどな。
魔王城にギリギリ収まる紫紺の巨体と、鋭く真っ赤な瞳がシンボルマークになり、魔王軍の中でも人気が高い存在…だった。
しかし…!
『君が四天王…!』
『ナハハハ!そうこのオレこそが、四天王の最初の難問である…』
『行くぞ!ちょーまぶしいビーム!!!』
『グハッ!!!!!!!!!!!!!』
四天王最初の難問。そうつまりは、最弱。
勇者が眠る前、かつて魔王城が勇者一人の手によって戦略されたあの日───
魔王城の入り口で昼寝をしていたオレは、誰よりも先にワンパンされたのであった。
魔王城が壊滅し、どうにか立て直し世界征服を果たした後でも…オレの評価は魔王軍の中で絶賛右肩下がり中だ。
「あいつ勇者にワンパンだってよ」
「え、マジ?あれは僕でも二回はあの拳を避けたよ」
「甘いな、俺は一回腹パンした」
「兄貴すげー!バハムートよりすげー!」
※幻聴です。
最近は転職を考えている。
「クソが…」
そして今、オレの背中には勇者の女が入った棺(本来は死んだ奴が入るもの)が縛りつけられている。
魔王城から追い出されたオレは勇者と二人きりで、かつて聖剣があった森にいた。
なぜ勇者が棺に入っているかと言えば、「バレないまま運ぶには棺が最適だろう」という魔王の考えだ。
控えめに言って大馬鹿だと思う。護送にしては雑すぎるし、結構重くて肩痛いし、偉く動きにくい。
オレ、バハムート、四天王だったら最弱、でもドラゴンの中だったら最強。
…なのに。
「木より背が小さいってどういうことだ…」
数少ないオレの威厳は…この事件の元凶である魔女が簡単に奪い去った。
『私の魔法がごめんなさいねぇ、謝罪のついでに…バハムートちゃんに魔法かけちゃう!人間の里に行くなら、人間の姿で行かなきゃね~!無駄に大きい身体からバイバイしよ!』
『なんだよそれ!?』
「本当に、なんだよこの姿ッ…!!」
…近くにあった湖に映る人間の男の姿を、自分のものだと思いたくなかった。
擬人化、というものがオレは嫌いだ。
人間の世界には様々な娯楽小説があるが、その中でもドラゴンを擬人化させる人間が大嫌いだ。しかも守りたくなるような美少女になる事例が多い。
「もっとこう…強そうに擬人化させてくれよ」
…オレの場合は、20代前後の…男、だろうか?
身長はおそらく170cm前後で、髪及び瞳は紫紺を受け継いでいる。しかし目つきは死んでいて、体型がやや痩せ気味のせいでやつれている人間に見える。
服はあの魔女から簡単なものを着せてもらったが、正直動きにくい。そして何より、全盛期のドラゴンの身体とは感覚が全然違う…!
「聞こえますか、バハムート」
「うおっ!?」
…人間が情けない声をあげて、背中の棺と共に尻餅をついた。信じたくないが、きっとオレの声だ。
「幽霊を見たようなリアクションとは不敬ですね」
覗いていた湖から女の声と顔が急に飛び出してきたのだから、誰だって驚くに決まっている。
「うっせぇな、何しにきたんだ…女神様」
そこには…あの女神様がいた。
光り輝く金髪を靡かせ、太陽を閉じ込めたような瞳は自然の動物を惹き寄せる。そんな彼女は人間側の味方で、人の形をしている。
かつては村にいた勇者の能力を見抜き、聖剣を抜かせて魔王討伐に仕向けた張本人だ。
「勇者には無様に倒され、勇者の永眠問題を押し付けられた可哀想なバハムートにご慈悲の機会を…と思いまして。どうぞ咽びいて喜んでください」
オレたちにとっては敵だが、今は状況が異なる。
「礼は死んでも言わねぇ。さっさと済ませようぜ」
ふと、背中の棺が少し動いた気がした。
そこに魔王をトップにした軍隊がある。
それを魔王軍と皆は呼ぶ。
そんな魔王軍の中から特別に選別された四名が集う少数精鋭の部隊を「四天王」と魔王様は使命した。
オレは「バハムート」と呼ばれ人々に恐れられていた。
本来は「魚」の姿で生まれたが、何故か女神に「人々の一般的なイメージに合わないからドラゴンの姿になりなさい」と無茶振りをされたので、ドラゴンの姿になった。
まぁドラゴンの方が便利だからよかったけどな。
魔王城にギリギリ収まる紫紺の巨体と、鋭く真っ赤な瞳がシンボルマークになり、魔王軍の中でも人気が高い存在…だった。
しかし…!
『君が四天王…!』
『ナハハハ!そうこのオレこそが、四天王の最初の難問である…』
『行くぞ!ちょーまぶしいビーム!!!』
『グハッ!!!!!!!!!!!!!』
四天王最初の難問。そうつまりは、最弱。
勇者が眠る前、かつて魔王城が勇者一人の手によって戦略されたあの日───
魔王城の入り口で昼寝をしていたオレは、誰よりも先にワンパンされたのであった。
魔王城が壊滅し、どうにか立て直し世界征服を果たした後でも…オレの評価は魔王軍の中で絶賛右肩下がり中だ。
「あいつ勇者にワンパンだってよ」
「え、マジ?あれは僕でも二回はあの拳を避けたよ」
「甘いな、俺は一回腹パンした」
「兄貴すげー!バハムートよりすげー!」
※幻聴です。
最近は転職を考えている。
「クソが…」
そして今、オレの背中には勇者の女が入った棺(本来は死んだ奴が入るもの)が縛りつけられている。
魔王城から追い出されたオレは勇者と二人きりで、かつて聖剣があった森にいた。
なぜ勇者が棺に入っているかと言えば、「バレないまま運ぶには棺が最適だろう」という魔王の考えだ。
控えめに言って大馬鹿だと思う。護送にしては雑すぎるし、結構重くて肩痛いし、偉く動きにくい。
オレ、バハムート、四天王だったら最弱、でもドラゴンの中だったら最強。
…なのに。
「木より背が小さいってどういうことだ…」
数少ないオレの威厳は…この事件の元凶である魔女が簡単に奪い去った。
『私の魔法がごめんなさいねぇ、謝罪のついでに…バハムートちゃんに魔法かけちゃう!人間の里に行くなら、人間の姿で行かなきゃね~!無駄に大きい身体からバイバイしよ!』
『なんだよそれ!?』
「本当に、なんだよこの姿ッ…!!」
…近くにあった湖に映る人間の男の姿を、自分のものだと思いたくなかった。
擬人化、というものがオレは嫌いだ。
人間の世界には様々な娯楽小説があるが、その中でもドラゴンを擬人化させる人間が大嫌いだ。しかも守りたくなるような美少女になる事例が多い。
「もっとこう…強そうに擬人化させてくれよ」
…オレの場合は、20代前後の…男、だろうか?
身長はおそらく170cm前後で、髪及び瞳は紫紺を受け継いでいる。しかし目つきは死んでいて、体型がやや痩せ気味のせいでやつれている人間に見える。
服はあの魔女から簡単なものを着せてもらったが、正直動きにくい。そして何より、全盛期のドラゴンの身体とは感覚が全然違う…!
「聞こえますか、バハムート」
「うおっ!?」
…人間が情けない声をあげて、背中の棺と共に尻餅をついた。信じたくないが、きっとオレの声だ。
「幽霊を見たようなリアクションとは不敬ですね」
覗いていた湖から女の声と顔が急に飛び出してきたのだから、誰だって驚くに決まっている。
「うっせぇな、何しにきたんだ…女神様」
そこには…あの女神様がいた。
光り輝く金髪を靡かせ、太陽を閉じ込めたような瞳は自然の動物を惹き寄せる。そんな彼女は人間側の味方で、人の形をしている。
かつては村にいた勇者の能力を見抜き、聖剣を抜かせて魔王討伐に仕向けた張本人だ。
「勇者には無様に倒され、勇者の永眠問題を押し付けられた可哀想なバハムートにご慈悲の機会を…と思いまして。どうぞ咽びいて喜んでください」
オレたちにとっては敵だが、今は状況が異なる。
「礼は死んでも言わねぇ。さっさと済ませようぜ」
ふと、背中の棺が少し動いた気がした。
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