2 / 10
2話 友達
しおりを挟む3月31日
「別れたの?」
小さな居酒屋でアンティークの黒いテーブルを囲んだ仲間が口を揃えて言う。俺を唖然としてこっちを見ている。よっぽど驚いたのだろう。俺も言われた時は驚いた。
「そう、でも不思議なほど落ち着いてるんだ」
ー落ち着いてる、もう2週間だもんなー
この2週間、長いようであっという間に過ぎ去っていった。幸いサークルで元彼女と顔を合わせる事もなく、どこか寂しかったが良かったのかもしれない。無茶にアルバイトを詰め込みただひたすら働いた。会ってしまえばどう反応したらいいか分からない。心の整理がつかないまま会いたくなかったんだ。
ーでも会いたい、まだ好きだからー
「まあ飲めって、お前も20歳になったんだろ。失恋のショックもこれで忘れてしまえって」
強引に置かれたビールを手に取り喉の奥に流していく。
ー不味いー
この味はいつになっても慣れない。隣の席に座っていた梨沙は未だに驚いた顔でこちらを見ている。まるで俺を哀れんでいる様に。何だよ、肩を小突きやめさせる。
ーそんな目で見るな、それが一番辛いからー
俺の対角に座った奈々は多少なりの影響は受けたが何食わぬ顔で料理を食べ進めていた。ここで言わない方が良かったのかも。でもどこかで誰かに言って少し楽になりたかったのかもしれない。一人で悩むのはもう疲れた。
「で、どうすんだよ。」
唐突に真斗が肉の抜けた串をこっちに向けて問いかけた。
「何を?」
「決まってんだろ、新しい彼女だよ」
ーやっぱりそう来たかー
真斗は何かの腐れ縁で高校から同じ大学に進学して3回生になろうとしている今もこうやって関係が続いている。奈々と優子は大学に入ってからいくつかのグループが出来る中、俺は学部の友達というよりすぐにサークル活動を始めたため学部内の友達は少なかった。そんな中で真斗の計らいでこうして仲のいい4人という形で収まった。そしてこの場だ。
「まだそんな簡単に気持ちを切り替えられないよ」
視線を机に落とす。確かにさっさと忘れて新しい彼女でも作ろうと考えた。でもそれを考えるたびに顔が、言葉が浮かぶ。
「めっちゃショックかも、まさか別れるなんて」
奈々が口を開いた。
「何で別れたの?」
優子が続く。
「......何でだろ」
ー本当にそうだよな、何でだろー
そんな事何度も考えた。でも答えは出なかった。その答えはあの子にしか分からないのだから。
「それでどうしたいの、これから」
「ははっ、どうもしないよ。今は」
強がりで笑う。本当はとんてもなく辛いのに人前では強くありたいって思ってしまう。それが俺なんだって。つくづく嫌だな。
「この話はもうやめよう」
なっ、とみんなに促し次の旅行の予定を立てた。
0
あなたにおすすめの小説
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
離婚する両親のどちらと暮らすか……娘が選んだのは夫の方だった。
しゃーりん
恋愛
夫の愛人に子供ができた。夫は私と離婚して愛人と再婚したいという。
私たち夫婦には娘が1人。
愛人との再婚に娘は邪魔になるかもしれないと思い、自分と一緒に連れ出すつもりだった。
だけど娘が選んだのは夫の方だった。
失意のまま実家に戻り、再婚した私が数年後に耳にしたのは、娘が冷遇されているのではないかという話。
事実ならば娘を引き取りたいと思い、元夫の家を訪れた。
再び娘が選ぶのは父か母か?というお話です。
完結 愚王の側妃として嫁ぐはずの姉が逃げました
らむ
恋愛
とある国に食欲に色欲に娯楽に遊び呆け果てには金にもがめついと噂の、見た目も醜い王がいる。
そんな愚王の側妃として嫁ぐのは姉のはずだったのに、失踪したために代わりに嫁ぐことになった妹の私。
しかしいざ対面してみると、なんだか噂とは違うような…
完結決定済み
【完結】6人目の娘として生まれました。目立たない伯爵令嬢なのに、なぜかイケメン公爵が離れない
朝日みらい
恋愛
エリーナは、伯爵家の6人目の娘として生まれましたが、幸せではありませんでした。彼女は両親からも兄姉からも無視されていました。それに才能も兄姉と比べると特に特別なところがなかったのです。そんな孤独な彼女の前に現れたのが、公爵家のヴィクトールでした。彼女のそばに支えて励ましてくれるのです。エリーナはヴィクトールに何かとほめられながら、自分の力を信じて幸せをつかむ物語です。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
元婚約者からの嫌がらせでわたくしと結婚させられた彼が、ざまぁしたら優しくなりました。ですが新婚時代に受けた扱いを忘れてはおりませんよ?
3333(トリささみ)
恋愛
貴族令嬢だが自他ともに認める醜女のマルフィナは、あるとき王命により結婚することになった。
相手は王女エンジェに婚約破棄をされたことで有名な、若き公爵テオバルト。
あまりにも不釣り合いなその結婚は、エンジェによるテオバルトへの嫌がらせだった。
それを知ったマルフィナはテオバルトに同情し、少しでも彼が報われるよう努力する。
だがテオバルトはそんなマルフィナを、徹底的に冷たくあしらった。
その後あるキッカケで美しくなったマルフィナによりエンジェは自滅。
その日からテオバルトは手のひらを返したように優しくなる。
だがマルフィナが新婚時代に受けた仕打ちを、忘れることはなかった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる