俺はまだ君を忘れられない。

渚の明日葉

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2話 友達

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3月31日

「別れたの?」

小さな居酒屋でアンティークの黒いテーブルを囲んだ仲間が口を揃えて言う。俺を唖然としてこっちを見ている。よっぽど驚いたのだろう。俺も言われた時は驚いた。

「そう、でも不思議なほど落ち着いてるんだ」

ー落ち着いてる、もう2週間だもんなー

この2週間、長いようであっという間に過ぎ去っていった。幸いサークルで元彼女と顔を合わせる事もなく、どこか寂しかったが良かったのかもしれない。無茶にアルバイトを詰め込みただひたすら働いた。会ってしまえばどう反応したらいいか分からない。心の整理がつかないまま会いたくなかったんだ。

ーでも会いたい、まだ好きだからー


「まあ飲めって、お前も20歳になったんだろ。失恋のショックもこれで忘れてしまえって」

強引に置かれたビールを手に取り喉の奥に流していく。

ー不味いー

この味はいつになっても慣れない。隣の席に座っていた梨沙は未だに驚いた顔でこちらを見ている。まるで俺を哀れんでいる様に。何だよ、肩を小突きやめさせる。

ーそんな目で見るな、それが一番辛いからー

俺の対角に座った奈々は多少なりの影響は受けたが何食わぬ顔で料理を食べ進めていた。ここで言わない方が良かったのかも。でもどこかで誰かに言って少し楽になりたかったのかもしれない。一人で悩むのはもう疲れた。

「で、どうすんだよ。」

唐突に真斗が肉の抜けた串をこっちに向けて問いかけた。

「何を?」

「決まってんだろ、新しい彼女だよ」

ーやっぱりそう来たかー

真斗は何かの腐れ縁で高校から同じ大学に進学して3回生になろうとしている今もこうやって関係が続いている。奈々と優子は大学に入ってからいくつかのグループが出来る中、俺は学部の友達というよりすぐにサークル活動を始めたため学部内の友達は少なかった。そんな中で真斗の計らいでこうして仲のいい4人という形で収まった。そしてこの場だ。

「まだそんな簡単に気持ちを切り替えられないよ」

視線を机に落とす。確かにさっさと忘れて新しい彼女でも作ろうと考えた。でもそれを考えるたびに顔が、言葉が浮かぶ。

「めっちゃショックかも、まさか別れるなんて」

奈々が口を開いた。

「何で別れたの?」

優子が続く。

「......何でだろ」

ー本当にそうだよな、何でだろー

そんな事何度も考えた。でも答えは出なかった。その答えはあの子にしか分からないのだから。

「それでどうしたいの、これから」

「ははっ、どうもしないよ。今は」

強がりで笑う。本当はとんてもなく辛いのに人前では強くありたいって思ってしまう。それが俺なんだって。つくづく嫌だな。

「この話はもうやめよう」

なっ、とみんなに促し次の旅行の予定を立てた。



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