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7話 旅行
しおりを挟む5月10日
「あー眠い」
車の窓ガラスには絶え間なく雨粒がぶつかって来る。もう1時間は走ってだろうか。ハンドルを握るのは真斗。運転はどことなく不安が拭えない。助手席の奈々と俺の横に座る梨沙。多分2人とも俺と同じ気持ちだろう。
ーここは奈々に任せるべきだろうー
まあ俺が言ったところで真斗は変わらない。諦めが八割が占める中俺は目を閉じる。すると5分もしない内に真斗が黙って車をコンビニに停めると自ら奈々に変わると申し出た。俺は梨沙と顔を見合わせ首をかしげる。そして微かに笑う。
ーこういう事もあるんだー
雨が止んだからかな。窓の外を見て思う。いつの間にか空には青空が顔を覗かせていた。奈々と真斗は席を変わる前に外でタバコを咥え何やら携帯を見せ合っていた。
「トイレ行ってくる」
俺はコンビニに向かう。2人の横を通り過ぎるくらいに梨沙が走ってきた。
「私も行く」
コンビニ内のトイレは1つ。俺たちは再び顔を見合わす。俺はあごで先にどうぞ、と合図し一歩下がる。ささっとトイレ内に消える梨沙。
ーはやくー
「かんぱーい!」
日が暮れると俺たちは目的地のコテージに到着しバーベキューを楽しんでいた。もちろん酒も進む。
「もう、早く彼氏ほしい」
梨沙が突然叫ぶと俺は笑ってまあまあ、となだめる。俺の肩にもたれかかった梨沙は虚ろな目で
「むー」
俺を睨む。かなりまわってるな。でもそんなに飲んでないだろ。開けたのは缶チューハイ1本だけ。
ーどんだけ弱いんだー
「もう。梨沙は弱いんだから飲んじゃダメだって」
慣れっこなのだろう、奈々が言う。大丈夫らよ。と大丈夫ではない返事をする梨沙に対し
「俺も彼女ほしいよー」
真斗が叫ぶ。
ーお前もかー
「あんたは無理だって」
笑う奈々に対し勢いよくイスに飛び上がった真斗は
「何だと、お前俺と付き合えよ」
「なんでそうなんのよ」
「だってよ、こいつらいい感じじゃんかよ」
俺と梨沙を指指す真斗。それを見た奈々の顔がにやけている。そんなんじゃないよ。そうは言うがそうでなくもなかった。この数週間、俺と梨沙の距離は格段に近くなっていたのは確かだった。2人で色んなところに行ったし同じ部屋に泊まったりもした。でも付き合うとか男女の仲はなかった。でも梨沙が隣にいるのが当たり前になってきた。
「おーい、あんまりいちゃつくんじゃねえ」
完全にみんな酔ってるな。俺も飲み進めるが、酔う、とまではなかなか行かなかった。
ーそろそろやめとくかー
21時をまわる。片付けを終え部屋に戻る中、俺は1人で小さな池のほとりに座り細い枝を手に取り水面の木の葉を突き刺しては離す、を繰り返していた。
「ごめん」
ーやめろー
未だに頭に響く言葉。どこにいても関係なく俺を締め付ける。夜は特にそうだ。1人でいるとものすごく恐ろしい。
なかなか寝付けない日々が続くのはもう慣れっこだったのが幸いだったのかも知れない。もし耐性がなかったら確実に体調を崩してたはずだったから。
「これからどうすればいいんだ」
「どうした、少年」
奈々が背後から歩み寄る。
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