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2.普通の世界
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学校まで歩いて行く。あの後、両親が遅くまで起きていたようだが、何を話していたかは分からない。今朝は何か言いたげな母さんを無視し黙って登校した。父さんは朝から既にいなかった。きっとガッカリしたのだろう。
「危ないっ!!」
考えごとをしていたからか、ふらふらとした瞬間、後ろから来る自転車の人に注意される。
中学生にもなって何も持たず歩いて登校など、僕くらいだ。もしスマホを見ようとして事故をしたら危ないと、自転車に乗ることも、家の外でスマホを持つことも禁止されているのだ。
「はぁ」
ため息が出る。
皆と同じ学校に入ることを許されたのは、模試で全国一位を取り続ける学力の高さがあってのことだ。
当然、授業はついていけている。
「手元にある図を参考に、こちらの問題を解いて下さい」
そのスピードは驚異的で、手元のタブレットで図を見ながら、同時に提示された問題を眼で追って行く。それを同時に計算すると、すぐに次の問題に変わっていく。いちいち下を向いて解こうものなら、目が足りない。
「歩くん、手はきつくないですか?」
タブレットをずっと掲げ、映し出されるモニター画面と交互に見れるようにする。これを授業中するわけだから、腕がしびれそうになる。先生のソレと眼が合い、心配そうに声をかけられる。
「問題ありません」
頭で計算し、答えのみを手もとのタブレットに記入していく。そうしてやっと、皆のペースについていける。
だが、休憩時間に歩に話しかけてくれる相手はいない。というよりも、誰も話し合っていないのだ。
「あはは、そうだよね」
「昨日の動画だけどさ」
「…………」
全員がうつむいている。話しているのは画面の向こうの誰かにだ。黙って何かをしている生徒の方が多いかもしれない。
僕はまだ、クラスメイトの顔を知らないのだ。
「はぁ……」
バッ
「っ!?」
しまった。昨夜の話を思い出して油断した。思わず、ため息をついてしまった。クラス中のソレがいっせいにこちらを見る。
「おっ……お腹すいたな」
なるべく自然に、独り言をつぶやく。ようやく解放された視線に、今度はそうっと息をつく。
危なかった。注目されるのは好きじゃない。お昼休憩のような長い時間は、授業用のタブレットを触るしかない。関係ないものは制限がかかって検索できないようにロックがかかっているが、もう少しで解除出来そうだなのだ。
もう少し、あとはパスワードだけなのに、間違いは許されない。24桁の組み合わせを一発で当てるなど、到底無理だ。
今日も解除出来なかったな。
「明日から長期休みですが、皆さん眼の疲れには十分気をつけてお過ごしください」
そうだった。学校が休みだから家にこもるしかない。今朝の雰囲気のままだとかなり気まずいじゃないか。
「ただいま」
少し遅い帰宅時間、ドアを開けると同時に母さんが走って出迎える。
「おかえりなさいっ、いつもより30分も遅いから心配したのよ……無事で良かったわ……」
僕がふたつ目しかないからか、この歳になっても過保護だ。
「ごめん、これ買ってたんだ」
「これは?」
「夕飯はあとで食べる」
母親にプレゼントなんて、少し照れくさい。そのまま自分の部屋へと階段をあがり、ベッドへ横になる。学校の帰り、気まずい雰囲気をなんとかしようと思いついたのが、昔よく買っていたお菓子だった。何かと健康思考な母さんだが、これだけは検査をした帰りによく買ってくれていたのだ。
「移植か。そうしたら、ぼくも皆んなと同じになれるんだよな」
「危ないっ!!」
考えごとをしていたからか、ふらふらとした瞬間、後ろから来る自転車の人に注意される。
中学生にもなって何も持たず歩いて登校など、僕くらいだ。もしスマホを見ようとして事故をしたら危ないと、自転車に乗ることも、家の外でスマホを持つことも禁止されているのだ。
「はぁ」
ため息が出る。
皆と同じ学校に入ることを許されたのは、模試で全国一位を取り続ける学力の高さがあってのことだ。
当然、授業はついていけている。
「手元にある図を参考に、こちらの問題を解いて下さい」
そのスピードは驚異的で、手元のタブレットで図を見ながら、同時に提示された問題を眼で追って行く。それを同時に計算すると、すぐに次の問題に変わっていく。いちいち下を向いて解こうものなら、目が足りない。
「歩くん、手はきつくないですか?」
タブレットをずっと掲げ、映し出されるモニター画面と交互に見れるようにする。これを授業中するわけだから、腕がしびれそうになる。先生のソレと眼が合い、心配そうに声をかけられる。
「問題ありません」
頭で計算し、答えのみを手もとのタブレットに記入していく。そうしてやっと、皆のペースについていける。
だが、休憩時間に歩に話しかけてくれる相手はいない。というよりも、誰も話し合っていないのだ。
「あはは、そうだよね」
「昨日の動画だけどさ」
「…………」
全員がうつむいている。話しているのは画面の向こうの誰かにだ。黙って何かをしている生徒の方が多いかもしれない。
僕はまだ、クラスメイトの顔を知らないのだ。
「はぁ……」
バッ
「っ!?」
しまった。昨夜の話を思い出して油断した。思わず、ため息をついてしまった。クラス中のソレがいっせいにこちらを見る。
「おっ……お腹すいたな」
なるべく自然に、独り言をつぶやく。ようやく解放された視線に、今度はそうっと息をつく。
危なかった。注目されるのは好きじゃない。お昼休憩のような長い時間は、授業用のタブレットを触るしかない。関係ないものは制限がかかって検索できないようにロックがかかっているが、もう少しで解除出来そうだなのだ。
もう少し、あとはパスワードだけなのに、間違いは許されない。24桁の組み合わせを一発で当てるなど、到底無理だ。
今日も解除出来なかったな。
「明日から長期休みですが、皆さん眼の疲れには十分気をつけてお過ごしください」
そうだった。学校が休みだから家にこもるしかない。今朝の雰囲気のままだとかなり気まずいじゃないか。
「ただいま」
少し遅い帰宅時間、ドアを開けると同時に母さんが走って出迎える。
「おかえりなさいっ、いつもより30分も遅いから心配したのよ……無事で良かったわ……」
僕がふたつ目しかないからか、この歳になっても過保護だ。
「ごめん、これ買ってたんだ」
「これは?」
「夕飯はあとで食べる」
母親にプレゼントなんて、少し照れくさい。そのまま自分の部屋へと階段をあがり、ベッドへ横になる。学校の帰り、気まずい雰囲気をなんとかしようと思いついたのが、昔よく買っていたお菓子だった。何かと健康思考な母さんだが、これだけは検査をした帰りによく買ってくれていたのだ。
「移植か。そうしたら、ぼくも皆んなと同じになれるんだよな」
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