塔に住むのは諸事情からで、住み込みで父と暮らしてます

ちより

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片膝をつく

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 言いにくい……すごい重圧を感じる。

 目の前に座るハッベルト助教授は、今まで何度も話を聞きに行き、執筆した文献についてや、この国の医療体制について意見を交わしてきた。

 口数は少ないものの、邪険にすることなく、訪れた生徒に対しては向き合ってくれていたように思う。思うのだが……今日は違う。内容によっては容赦はしない……そのような圧を感じる。

 彼から家族の、一緒に塔に移り住んでいるという娘の話など聞いたことはなかったが、一度エドルドの方から質問したことがある。

―――「ご令嬢も、ハッベルト助教授のように薬学に詳しいので?」―――

―――「…………」―――


 あまりにも無のリアクションに、娘への関心があまりないのではないかと思っていたが、なんだ、この眼力と重い雰囲気は……いや、分かる。当然、娘が大きな怪我をして急に連れてこられたんだ。普通の父親であれば当然の反応だろう。


 だが、どうしても意外ではあった。そして、エドルド同様に、隣に座っているアリシアも驚いている、というより、戸惑っているようにも見える。



「……ハッベルト助教授……いえ、父殿。アリシアご令嬢についてお話があります」

「…………」


「ご令嬢の怪我が、悪化しているのはお察しの通りです。原因は……まだ証拠は揃っておりませんが、おそらく、幻覚魔法を扱える者が絡んでいるかと」


「…………」


「……明らかにご令嬢に悪意を向けての行為です。それは……私にも責任があります故、グレスビーとこの件が解決するまで、ご令嬢をお守りする許可と謝罪をしに参りました……この度の件、申し訳ございません」

 床に片膝をつき、頭を下げる。王族である彼が、証拠もない件で自ら謝罪など極めて異例のことだ。


「エドルド様っ!? っぐっ!?」

 思わず立ち上がろうとしてしまい、バランスを崩す……が、しっかりと父が支え、転ばずに済んでいた。その瞬間、なぜだか懐かしい感じがしたが……

「お父様……」

「座ってなさい」
 そう言われ、ゆっくり座り直す。父がエドルドに口を開く。


「エドルド・ログ・ディフェンサ君。アリシアの反応を見るに、本名をお伝えしたようで?」


 父は言葉を選んでいるようだった。

「今回の失態はエドルド・ログ・カスラーとして責任を取ります」


「そうですか……」

 父も床に片膝をついて座る。

「殿下、恐れながら。これは教師と生徒の話ではありません。私のような下の者に簡単に膝をついてはなりません……娘の足を見るに、おそらく怪我した足をかばわず無理をしたのでしょう……私はしばらくグレスビーの討伐で帰れませんので……娘のこと宜しく頼みます」



 驚いた。お父様にエドルドのことを話した時、
カスラーではなく、ディフェンサの名で伝えていた。まぁ、学園の生徒のことは知っていても不思議ではないけど……

 あの時父は、そう名乗ったのか?と聞いていた。
あれは、ディフェンサならば彼が一生徒としてで関わりを終わらそうと思っていると判断したのだろう。

 今回はカスラーの名を出したってことは、やっぱりカレンの件は身内の問題として王家が対応するのね。

 あまり……大事にはしたくないのだけれど。

 爆破した寮部屋を思い出す……
 でもそうすると、やっぱりあの部屋の弁償はハッベルト家が?


 アリシアの部屋だけとはいえ、窓や壁まで爆破され、当然備え付けの家具や豪華なつくりの飾りつけ、贅沢に設計された部屋の弁償を……


 あの場では寮の管理人には、弁償しますと言ったが、ハッベルト家の財政状況を考えると、一生ただ働きで償うくらいしか思いつかない。

 アリシアは身震いする。

 ……どうにか身の潔白を証明しなければ、ハッベルト家は終わりだわ。


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