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2回目が本番です
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「どうした?」
顔が青ざめているアリシアに気付き、父が声をかける。立ち上がり、両手で顔を直に触りながら顔色を確認する。
いやいやいや、お父様こそどうしましたのっ!?
やっぱり変ですわ!
とは口に出せず、黙ってされるがままだ。
「……問題はないな」
ようやく解放される。
「これを持っていきなさい」
そう言って、研究部屋の方からいくつか薬草が入れられた袋をくれる。
部屋を出る時、アリシアを抱えようとしたエドルドに、他の使用人はいないのかと聞いてきた。
「執事が1人……他の者は帰らせました」
「そうか」
そこからは何か言うことはなく、少し気まずさを感じながらも、結局立てないアリシアは来た時と同じように、エドルドに抱えてもらうしかなかった。
「父に話してくれてありがとうございます」
口には出さなかったものの、緊急事態中のやむを得ない事情とはいえ、父に報告しないことに不安を感じていた。いくら娘に無関心だろうとはいえ、ハッベルト家に影響出ることはさすがに無視はできないだろう。ましてや、寮を爆破し、王族に関わっているとなれば、かなり深刻な問題だ。
久しぶりに父に会い、エドルドが直接話す場を設けてくれたことにほっとする。
「……いや、当然だろう。どうだ? なかなか格好良かっただろう?」
少し冗談ぽく、得意気に話す。
「そうですね」
「え? ……あぁ、まぁな。ハハハ」
自分から振っておいて、素直に認められたことに照れているようだ。
「ところで……次はどちらに向かっているのですか?」
父の時とは異なり、移動魔法は使わず廊下を歩いている。ということは、行ったことがない場所なのだろう。
「……あぁ、幻覚魔法だとは思っているが、グレスビーに関する報告は必要だろう……ミオラ・カクシマディア嬢からも事の経緯は聞いているだろうがな」
「えっ、それはつまり……」
「お父上に会うよりもずっと気楽だよ」
エドルドは軽く笑い、ノックする部屋の入り口には警備管理室の名前が彫られている。
つまり……ここには、学園警備統括の……
「…………」
「…………」
「…………」
ロナルドは、エドルドがアリシアを抱え入室したのを見るとすぐに人払いをした。エドルドは、ロナルドに報告があることを述べ、返事を待つ。
だが、ロナルドは固まったまま表情を微塵も動かさず、なんだ、とも、報告を続けろとも言わない無の時間が流れる。
「あの…………」
「うん、彼女を離……座らせようか」
「……はい」
アリシアを指さされたソファに降ろすと、その隣にサッとロナルドも腰かける。
既視感がございますわね……しかも、お父様の時よりもはるかに空気が重いですわ。
「それで? 何か話すことが?」
ようやくロナルドが話を聞く。
「今回の寮内の話はご存知かと思いますが……実は幻覚魔法が絡んで」
「あぁ、知っている。それで?」
話を遮るようにロナルドが割り込む。管理人から先に報告があったのだろう。学園を警備する者に既に話を通していてもおかしくはない。
「……それで、アリシア嬢が学園にいられない以上、護衛として」
「あぁ、私がしよう」
っ!?
「何か問題でも?」
「あの……ロナルド教授はこの学園の警備統括でもありますよね? 今あなたが学園から離れるわけには……」
「君がそもそも元凶のようなものだろう。そんな奴に彼女の護衛を任せろと? 本来であれば、ミオラが適任なところを、学園の生徒ではないからと余計な手が回ったせいで………まぁ、ミオラは一族の娘ではあるがこの学園においては直接私の管理下にはない。だからといって、君がアリシアちゃんと2人になることを許すわけにもいかない。それに、幻覚魔法においては私の得意分野だ。幻覚が起こってもその精神に働きかけて……」
鋭い眼力とアリシアをちゃん付けする異様な様子に、ただの報告にと訪れただけのエドルドは戸惑を隠さないでいた。
「それは……だからこそ責任を取るつもりで……って、え、アリシアちゃん??」
ズターーーーーーンッ!!!!!!
ドアが勢いよく開き、ミオラが入ってくる。
「失礼しますっ! ロナルド様っ! 副作用が出ましてっ!! って、え、アリシア様!!??」
「ミオラちゃん!!」
「わぁ~、目を覚まされたんですね。良かったです。でもやはり立つのは難しそうですね。ったく、アリシア様にこんなことをするなんて、許せませんわ。でも会えて嬉しいです。えへへ」
っ!?
ミオラの表情に2人は心底驚いているようだった。ミオラは使用人の時に着ていた服ではなく、救護班として動きやすいよう、パンツタイプの軽装にポケットがあちこちついた服装をしていた。
癖が抜けないのか、相変わらずアリシア様と呼ぶが、外でも気軽に話してくれる様子にアリシアも思わず顔がほころぶ。
「あっ、お話中でしたか。すみませんっ、でも緊急なんです。ハッベルト様の指示で新しく作った薬が魔力回復に強い効果を示したんですが、拒絶反応が出る者がいましてっ。幻覚で錯乱してるんです、早く来てください。」
先ほどの発言から察するに、カクシマディア家の能力を応用させた幻覚魔法への対応が出来るのがロナルドだけなのであろう。
「~~っ!! 分かった、行こう。……グレスビーの件が解決次第、すぐに塔にも行く……アリシアちゃんに変な気でも起こそうものなら、王族への忠誠を翻すからな」
それだけ言い残し、ミオラに引っ張られるように部屋を出ていった。
顔が青ざめているアリシアに気付き、父が声をかける。立ち上がり、両手で顔を直に触りながら顔色を確認する。
いやいやいや、お父様こそどうしましたのっ!?
やっぱり変ですわ!
とは口に出せず、黙ってされるがままだ。
「……問題はないな」
ようやく解放される。
「これを持っていきなさい」
そう言って、研究部屋の方からいくつか薬草が入れられた袋をくれる。
部屋を出る時、アリシアを抱えようとしたエドルドに、他の使用人はいないのかと聞いてきた。
「執事が1人……他の者は帰らせました」
「そうか」
そこからは何か言うことはなく、少し気まずさを感じながらも、結局立てないアリシアは来た時と同じように、エドルドに抱えてもらうしかなかった。
「父に話してくれてありがとうございます」
口には出さなかったものの、緊急事態中のやむを得ない事情とはいえ、父に報告しないことに不安を感じていた。いくら娘に無関心だろうとはいえ、ハッベルト家に影響出ることはさすがに無視はできないだろう。ましてや、寮を爆破し、王族に関わっているとなれば、かなり深刻な問題だ。
久しぶりに父に会い、エドルドが直接話す場を設けてくれたことにほっとする。
「……いや、当然だろう。どうだ? なかなか格好良かっただろう?」
少し冗談ぽく、得意気に話す。
「そうですね」
「え? ……あぁ、まぁな。ハハハ」
自分から振っておいて、素直に認められたことに照れているようだ。
「ところで……次はどちらに向かっているのですか?」
父の時とは異なり、移動魔法は使わず廊下を歩いている。ということは、行ったことがない場所なのだろう。
「……あぁ、幻覚魔法だとは思っているが、グレスビーに関する報告は必要だろう……ミオラ・カクシマディア嬢からも事の経緯は聞いているだろうがな」
「えっ、それはつまり……」
「お父上に会うよりもずっと気楽だよ」
エドルドは軽く笑い、ノックする部屋の入り口には警備管理室の名前が彫られている。
つまり……ここには、学園警備統括の……
「…………」
「…………」
「…………」
ロナルドは、エドルドがアリシアを抱え入室したのを見るとすぐに人払いをした。エドルドは、ロナルドに報告があることを述べ、返事を待つ。
だが、ロナルドは固まったまま表情を微塵も動かさず、なんだ、とも、報告を続けろとも言わない無の時間が流れる。
「あの…………」
「うん、彼女を離……座らせようか」
「……はい」
アリシアを指さされたソファに降ろすと、その隣にサッとロナルドも腰かける。
既視感がございますわね……しかも、お父様の時よりもはるかに空気が重いですわ。
「それで? 何か話すことが?」
ようやくロナルドが話を聞く。
「今回の寮内の話はご存知かと思いますが……実は幻覚魔法が絡んで」
「あぁ、知っている。それで?」
話を遮るようにロナルドが割り込む。管理人から先に報告があったのだろう。学園を警備する者に既に話を通していてもおかしくはない。
「……それで、アリシア嬢が学園にいられない以上、護衛として」
「あぁ、私がしよう」
っ!?
「何か問題でも?」
「あの……ロナルド教授はこの学園の警備統括でもありますよね? 今あなたが学園から離れるわけには……」
「君がそもそも元凶のようなものだろう。そんな奴に彼女の護衛を任せろと? 本来であれば、ミオラが適任なところを、学園の生徒ではないからと余計な手が回ったせいで………まぁ、ミオラは一族の娘ではあるがこの学園においては直接私の管理下にはない。だからといって、君がアリシアちゃんと2人になることを許すわけにもいかない。それに、幻覚魔法においては私の得意分野だ。幻覚が起こってもその精神に働きかけて……」
鋭い眼力とアリシアをちゃん付けする異様な様子に、ただの報告にと訪れただけのエドルドは戸惑を隠さないでいた。
「それは……だからこそ責任を取るつもりで……って、え、アリシアちゃん??」
ズターーーーーーンッ!!!!!!
ドアが勢いよく開き、ミオラが入ってくる。
「失礼しますっ! ロナルド様っ! 副作用が出ましてっ!! って、え、アリシア様!!??」
「ミオラちゃん!!」
「わぁ~、目を覚まされたんですね。良かったです。でもやはり立つのは難しそうですね。ったく、アリシア様にこんなことをするなんて、許せませんわ。でも会えて嬉しいです。えへへ」
っ!?
ミオラの表情に2人は心底驚いているようだった。ミオラは使用人の時に着ていた服ではなく、救護班として動きやすいよう、パンツタイプの軽装にポケットがあちこちついた服装をしていた。
癖が抜けないのか、相変わらずアリシア様と呼ぶが、外でも気軽に話してくれる様子にアリシアも思わず顔がほころぶ。
「あっ、お話中でしたか。すみませんっ、でも緊急なんです。ハッベルト様の指示で新しく作った薬が魔力回復に強い効果を示したんですが、拒絶反応が出る者がいましてっ。幻覚で錯乱してるんです、早く来てください。」
先ほどの発言から察するに、カクシマディア家の能力を応用させた幻覚魔法への対応が出来るのがロナルドだけなのであろう。
「~~っ!! 分かった、行こう。……グレスビーの件が解決次第、すぐに塔にも行く……アリシアちゃんに変な気でも起こそうものなら、王族への忠誠を翻すからな」
それだけ言い残し、ミオラに引っ張られるように部屋を出ていった。
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