狂おしいほど愛しています、なのでよそへと嫁ぐことに致します

ちより

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25.お茶会

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 お昼前にはニーナ伯爵夫人が来る予定だ。急な誘いにも関わらず快く返事があった。

「ようこそ、おいでくださっ……」

 予想していなかったわけではない。むしろ、もしかしたらと淡い期待をしないようにその可能性を考えないようにしていたくらいだ。

「本日は、妻をお誘い下さりありがとうございます。カレン次期公爵夫人」


 エッ、エッ、エル様ーーーーーーっ!!?? 

 馬車から降りてきたのはエル様本人だった。なんとか表情は崩さないよう保つが、完全に言葉が詰まってしまった。エル様は、そのまま後ろから降りてくる妻をエスコートすると、本日の主役、ニーナ伯爵夫人が挨拶をする。

「こっ、こんにちは。本日はご招待いただきまして、あ、ありがとうございます」

 完全に緊張してしまっている彼女のおかげで、こちらの言葉の詰まりには注意がいかずに済んだ。

「ニーナ、ブラン公爵家はお2人ともお優しいからそこまで緊張しなくても大丈夫と言っただろう?」

「もちろん、分かっておりますわ。私を招待していただけるなんて……感動でつい」

 すっ、すごいですわ。これが新婚感。パーティで会った時よりも、2人の世界観がパワーアップしておりますわ。

 見たこともないエル様のキラキラした笑顔に思わずこちらが鼻血を出しそうになる。

 んっ、でも、この笑い方、ウェイド様が私を見る時にも向ける笑い方に似ていますわ?? はっ!? もしかして、ウェイド様は新婚感を出そうと!? さすがですわ。当事者の私ですら本物の微笑みかと誤解してしまいそうな演技力……私も負けてはいられませんわ。


「エル・ニシェード・ブラン伯爵、ニーナ伯爵夫人、本日は急なお誘いにも関わらず来てくださってありがとうございます。あとでリドル……ウェイド様も挨拶に来られるようですので、良ければ奥様と一緒にお茶していかれますか?」

 きゃーーーーっ!! エル様をお茶にお誘いするなんて、私頑張りましたわ!!!! もちろん、ニーナ伯爵夫人を送っただけで、エル様が夫人同士のお茶会に参加なんてしないでしょうけど。

「よろしいのですか?」

 ん?

「わぁ、私今日はとても楽しみで……でも失礼があったらとすごく緊張してしまって……主人がいればとても心強いですわ」

 んんっ!?

「ニーナ、女性同士の話に加わるわけにはいかないよ。それに、これからリドル公爵家の領地を見回りに行くと伝えていただろう?」

「それは、そうですわね……」

「ウェイド様にも宜しくご挨拶してくれるね?」

「分かりましたわ」

 完全に2人の世界で見つめ合う。

 こっ、これは……こんなエル様……激レアのなにものでもないですわ。すごいっ、すごいですわ。会話はもはや失礼にすら当たる内容だというとに、見えないんですわ。これが、新婚っ!!?? 勉強になりますわ。

「こほんっ……そろそろ、ご夫人をお借りしても宜しいでしょうか?」

 馬車の前で手を取り合ったまま動かない2人に声をかける。

「あっ、失礼致しました。では、お迎えの頃にまた」

 そう言ってエル様はさっそうと馬車に乗り、戻っていった。


「それでは、ニーナ伯爵夫人、どうぞこちらへ」

 愛おしそうに見つめる彼女へ声をかけると、今日の為に準備していた部屋へ案内する。窓からは庭園が見え、部屋の中にも色とりどりの花を飾っている。

「まぁっ、とても素敵ですわ」

 そうでしょう、そうでしょうとも。リドル家の領地でも有名な花々を集めたんですもの。華やかにならないわけがありませんわ。

 窓からの景色、飾られた花一つ一つをじっと見ては香りを楽しんでくれている。

 なんと言いますか、ここまで楽しんでもらえるとは。やっぱり先ほどの会話は私と2人になるのを純粋に緊張していたからなのでしょうか?

「失礼致します。お茶のセットをお持ちしました」

 ミクリが食器とお菓子を並べる。彼女の好みが分からなかった為、この地方のなじみの菓子と数種類の紅茶を用意している。

「おすすめはこの華の茶ですが、お好みはありますか?」


「あ……りがとうございます」

 ん? 今明らかにテンションが下がったような。

 とりあえず、香りを楽しんでいたものに近い華茶を選ぶ。先ほどのはしゃぎっぷりから変わって静かに席で待っている。


 まぁ、夫人同士の付き合いでもこちらの反応が当たり前ではありますけど、どうも先ほどとのリアクションの差が気になりますわね。彼女にお茶を注いで出すと香りを楽しんでいるようだ。

 やっぱり、華茶にして良かったようですわね。

「お菓子はこの地域のものを取り寄せたんですけど、ニーナ伯爵夫人のおすすめを是非教えて欲しいですわ」

「あ、そうですね……えと、北部の方には有名なお菓子職人が多いようです」

「そうなのですか? まだ領地を見てまわったことがないんですけど、今度是非行きたいですわ」

「そうですね……」

 会話が……会話が続きませんわ。


「そうですわっ、このお菓子も確か侍女達から聞いて勧められたものを取り寄せたんですけど、お口に合うでしょうか? 私も一度味見で食べたんですけど生クリームが中に入ってて見た目よりも甘めなんですけど、とても口あたりが良くて……」

「生クリーム……」

 なぜか話せば話すほどニーナ伯爵夫人の顔色が悪くなる。

「…………うっ、おっ……美味しい、です。うぇっ」

「……ニーナ伯爵夫人……」

「うっ……すっ、すみまぜんんんっ」

 
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