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王都暗躍編
第96話 帝都見物
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宿の部屋を取り、夕食は近くの食堂で済ませた。
戻る頃には諜報員からの接触があるのだろうかと思っていたのだが、その日は何も起こらなかった。
翌朝も店主に伝言がないか確認したが何もなかった。
ちなみにこの店主の名前はスタッドさん。
案の定、馬の獣人で36歳独身の花嫁募集中だそうだ。
聞いた訳ではないのだが、本人が言っていたのでそうなのだろう。
若干の肩透かしを食らった気分だった。
そう言えば、諜報員の名前や特徴も聞いていなかったな。
こちらから接触するは無理だと諦めて、初めての帝都観光にでも行くとするか。
「あちらに見えるのが帝都名物、銀狼帝の銀像です。」
リポポさんが指差す方向にはキラキラと太陽の光を反射する剣を構えた少年の像が広場の中心に建てられていた。
石の台座の周りには、たくさんの花々が捧げられている。
「おぉ~、これがあの銀狼帝ですか。」
「すごい、かっこいいです!」
ピートの目もキラキラと輝いている。
獣人の少年にとってのヒーロー的存在なのだろう。
「これって全部が銀で出来ているんですか?」
「いえ、元々は即位の後に記念で建てられた彫像だったのですが、神隠しの後に感謝祭が行われるようになる時に銀で覆ったそうですよ。」
「へぇ~、感謝祭。お祭りか、良いですね。」
「感謝祭の夜には蝋燭を持って、みんながこの像に祈りを捧げるんです。蝋燭の明かりで光の道が出来るのは、とっても神秘的なんです。」
「へぇ~、ピートは見た事あるの?」
「見た事ないですけど、僕の村でも夜に祈りを捧げていました。」
「そうなんだ。」
俺が思っていたお祭りとは違ったな。
花火とか屋台とかの日本的なお祭りを想像していたのだが。
随分と厳かな内容みたいだな。
焼きそばや綿菓子を懐かしみつつ歩いていると、リポポさんが突然立ち止まった。
「ちょっとこのお店に寄っても良いですか?」
「もちろん、予定は特にないですから。ゆっくりで良いですよ。」
そのお店の看板にはブティック・ハナハナとある。
ハナハナと言えば、王都の市で出会ったハナさんのお店かな?
気になっていたので丁度いいや。
リポポさんはもう既に店内で物色中だ。
人気ブランドだと聞いていたが、そんなに大きなお店ではない。
しかしながら、オシャレな雰囲気が溢れている。
この世界では珍しく路面にはガラスのショーウィンドウがあり、商品が見えるようになっている。
お店の扉も花のモチーフが彫刻された特注品と思われる物になっており、細部にまで拘りが感じられた。
店内へ入るとふわりと良い香りがしており、品の良い照明やインテリアでまとめられており、落ち着いた居心地の良い空間だった。
しかし、陳列されているのは女性用の服や下着が大半で、男性用はお店の片隅に少し置いてあるだけだったので、そういう意味では男性には居心地が悪いと言えるだろう。
店内には数組の女性客と接客中の女性店員さんがいるのだが、何とも言えない視線を感じてしまい気まずい限りである。
「あら、貴方は確か。」
背後からの声に振り返ると、眼鏡の小柄な女性が立っていた。
今日は真紅のゴスロリドレスに身を包み独特な存在感を放っていた。
「あっ、ハナさん。」
「たしか、サンダルの人よね?」
「そ、そうですね。ガルドです。」
「えぇ、えぇ、思い出したわ。ふふふ。」
「ど、どうかしたんですか?」
「いえ、スタッフが挙動不審な男がいるって言うから来てみたら貴方だったから。」
「げっ、そんなに不審でしたか?」
「男の人は滅多に来ないから、それにほぼオートクチュールだし。」
「へぇ~、俺のも作ってもらえるんですか?」
「ごめんなさい。男物は可愛くないからお断りしているの。」
「そうですか。あっ、あれってバスローブですか?」
俺が指差した先には女性下着の横に飾ってあるピンクのバスローブ。
「えぇ、可愛いでしょ?バスローブを知っているって事は。」
ハナさんが近くに来て耳打ちした。
「貴方も転移組?」
と言う事は、ハナさんはやっぱり日本人なのか。
俺は小声で前世の記憶を思い出した事を告げた。
「そんなケースもあるのね。」
「さっきの組って言うのは?」
「あら、意外といるのよ。出会った事ない?」
「へぇ~、俺はハナさんが初めてですね。」
「実は、このバスローブを織った人もそうなのよ。」
「そうなんですか!」
「北エリアで工房をやっているわ、ペコラさんって言うの。」
「会ってみたいですね。」
「じゃあ、これを渡すと良いわ。」
ハナさんから手渡されたのはハンカチ?
ピンクの薔薇が小さく刺繍されている黄色のハンカチだ。
「これは?」
「紹介状みたいな物よ。要らない?」
「いえ、要ります!」
戻る頃には諜報員からの接触があるのだろうかと思っていたのだが、その日は何も起こらなかった。
翌朝も店主に伝言がないか確認したが何もなかった。
ちなみにこの店主の名前はスタッドさん。
案の定、馬の獣人で36歳独身の花嫁募集中だそうだ。
聞いた訳ではないのだが、本人が言っていたのでそうなのだろう。
若干の肩透かしを食らった気分だった。
そう言えば、諜報員の名前や特徴も聞いていなかったな。
こちらから接触するは無理だと諦めて、初めての帝都観光にでも行くとするか。
「あちらに見えるのが帝都名物、銀狼帝の銀像です。」
リポポさんが指差す方向にはキラキラと太陽の光を反射する剣を構えた少年の像が広場の中心に建てられていた。
石の台座の周りには、たくさんの花々が捧げられている。
「おぉ~、これがあの銀狼帝ですか。」
「すごい、かっこいいです!」
ピートの目もキラキラと輝いている。
獣人の少年にとってのヒーロー的存在なのだろう。
「これって全部が銀で出来ているんですか?」
「いえ、元々は即位の後に記念で建てられた彫像だったのですが、神隠しの後に感謝祭が行われるようになる時に銀で覆ったそうですよ。」
「へぇ~、感謝祭。お祭りか、良いですね。」
「感謝祭の夜には蝋燭を持って、みんながこの像に祈りを捧げるんです。蝋燭の明かりで光の道が出来るのは、とっても神秘的なんです。」
「へぇ~、ピートは見た事あるの?」
「見た事ないですけど、僕の村でも夜に祈りを捧げていました。」
「そうなんだ。」
俺が思っていたお祭りとは違ったな。
花火とか屋台とかの日本的なお祭りを想像していたのだが。
随分と厳かな内容みたいだな。
焼きそばや綿菓子を懐かしみつつ歩いていると、リポポさんが突然立ち止まった。
「ちょっとこのお店に寄っても良いですか?」
「もちろん、予定は特にないですから。ゆっくりで良いですよ。」
そのお店の看板にはブティック・ハナハナとある。
ハナハナと言えば、王都の市で出会ったハナさんのお店かな?
気になっていたので丁度いいや。
リポポさんはもう既に店内で物色中だ。
人気ブランドだと聞いていたが、そんなに大きなお店ではない。
しかしながら、オシャレな雰囲気が溢れている。
この世界では珍しく路面にはガラスのショーウィンドウがあり、商品が見えるようになっている。
お店の扉も花のモチーフが彫刻された特注品と思われる物になっており、細部にまで拘りが感じられた。
店内へ入るとふわりと良い香りがしており、品の良い照明やインテリアでまとめられており、落ち着いた居心地の良い空間だった。
しかし、陳列されているのは女性用の服や下着が大半で、男性用はお店の片隅に少し置いてあるだけだったので、そういう意味では男性には居心地が悪いと言えるだろう。
店内には数組の女性客と接客中の女性店員さんがいるのだが、何とも言えない視線を感じてしまい気まずい限りである。
「あら、貴方は確か。」
背後からの声に振り返ると、眼鏡の小柄な女性が立っていた。
今日は真紅のゴスロリドレスに身を包み独特な存在感を放っていた。
「あっ、ハナさん。」
「たしか、サンダルの人よね?」
「そ、そうですね。ガルドです。」
「えぇ、えぇ、思い出したわ。ふふふ。」
「ど、どうかしたんですか?」
「いえ、スタッフが挙動不審な男がいるって言うから来てみたら貴方だったから。」
「げっ、そんなに不審でしたか?」
「男の人は滅多に来ないから、それにほぼオートクチュールだし。」
「へぇ~、俺のも作ってもらえるんですか?」
「ごめんなさい。男物は可愛くないからお断りしているの。」
「そうですか。あっ、あれってバスローブですか?」
俺が指差した先には女性下着の横に飾ってあるピンクのバスローブ。
「えぇ、可愛いでしょ?バスローブを知っているって事は。」
ハナさんが近くに来て耳打ちした。
「貴方も転移組?」
と言う事は、ハナさんはやっぱり日本人なのか。
俺は小声で前世の記憶を思い出した事を告げた。
「そんなケースもあるのね。」
「さっきの組って言うのは?」
「あら、意外といるのよ。出会った事ない?」
「へぇ~、俺はハナさんが初めてですね。」
「実は、このバスローブを織った人もそうなのよ。」
「そうなんですか!」
「北エリアで工房をやっているわ、ペコラさんって言うの。」
「会ってみたいですね。」
「じゃあ、これを渡すと良いわ。」
ハナさんから手渡されたのはハンカチ?
ピンクの薔薇が小さく刺繍されている黄色のハンカチだ。
「これは?」
「紹介状みたいな物よ。要らない?」
「いえ、要ります!」
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