目醒めたら武闘家でした。俺だって魔術が使いたい!

アマクニノタスク

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第5話

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俺たちはその後、焚き火を作り、囲んでおっさんから冒険の話をたくさん聞いた。

エルフ族の森にはとんでもなく大きい世界樹があったり、剣闘士が決闘するコロシアムやドラゴンが眠ると言われる山があったりするそうだ。

俺たちは大興奮で夢中で話を聞いていた。
気がつくと夜が明けつつあった。

「おっ、そろそろ戻らないとヤバイぞ。」

「そうだな。おっさん、色々教えてくれてありがとう。」

「もうおっさんでいいわ。こっちも助かったぜ。空腹じゃなければ魔力も回復するし、これなら食料調達も出来そうだ。」

「ここから1番近い村はあっちの方角よ。」

「そうか。坊主たちも機会があれば世界を見てみるといい。お前さんたちが努力を惜しまなければ、世界に出てもやっていけるだけの強さを得られるだろう。」

「そうだね。いつかどこかで、また会えたらいいね。」

「ハッハッハッ!それは楽しみだな。」

「そんじゃあ、俺たち行くね。またな、おっさん!」

「おっちゃんも気を付けてな!」

「色々ありがとう。」

「うむ、達者でな。」

俺たちは急いで道場へと戻った。
コッソリと各自の寝床に戻ろうとしたのだが、早朝に用を足しに出ていた老師に見つかってしまった。
その日は師範に怒られ、掃除や薪割りの雑用3日間の罰が下された。


おっちゃんと出会った日から2年。
俺たちは日々の鍛錬に励み、夜には魔力を高める訓練を欠かさなかった。

メロディはメキメキと魔術の腕を上げ、火・水・風・土の4属性全ての精霊を感じ取り、基本的な魔術は使いこなしていたし、氷属性という複合属性まで扱えるようになっていた。
武術の方も棒術を得意とし、氷と棒術のコンビネーションで序列も5位となっていた。

リズムは恵まれた体躯と格闘センスで魔術なしでも序列1位に早々となっていた。
魔力の扱いは俺たちの中では1番苦手だったが、火の精霊を感じ取り、火の魔力を纏う方法を会得した。
素手で戦う拳闘術が得意なリズムとは相性が良く、この技を使われると師範を含めて太刀打ち出来る者は少なかった。

俺はと言うと、魔術はまぁまぁ上達していた。物に魔力を流すのも、魔術陣の発動も出来るようになった。魔力の量も増えてきている自覚もある。
何よりも俺を成長させてくれたのは、このフルーツ流格闘術の極意、身体活性だった。
自分の内側を巡る力、フルーツ流では活力と呼ばれている力を使い、己の体を活性化させ超人のような動きを可能にする技だ。
俺は背も低く、体躯には恵まれていなかったが、魔力量と魔力操作は他人よりも優れていたので、身体活性を使いこなす事が出来た。
さらに前世の記憶から身体活性の効率的な使い方、走り出す瞬間に脚だけ強化したり、防御の瞬間だけ腕を強化したりするマンガ知識を試してみた所、なんと出来てしまった。
それだけでなく、この世界に存在していなかったヌンチャクという武器も前世の記憶から自作してみた。
自分の名前が有名なアクションスターに似ていたので冗談のつもりで作ってみたのだが、俺にはこのヌンチャクがしっくりきたのだ。
今までにない変則的な攻防の動きを身体活性で行い、序列は2位へと上げていた。
リズムには勝てる時もあるが、総じて見れば負け越している。

そんな俺たちにも、そろそろ卒業の時期が近づいて来ている。
道場での鍛錬は12歳までと国が決めており、その後は一部の優秀な者を除き、指導役か国の兵士として登用される。
国の兵士になっても無茶な戦場へと駆り出され、新兵のほとんどは使い捨てにされるらしい。
そうならない為にも、次の武闘会で良い成績を上げ、願わくば解放される権利を得たいものだ。
孤児で道場の出身者は無給で国に仕えなければならない。一定の金額分の働きをすれば解放され、給料を貰えたり、自分の家を持ったりと市民と同じ生活ができるようになる。さらに一定の金額を払えば完全解放として退役して冒険者や別の国へ移る事も可能になる。

武闘会では優秀な人材が選別され、選ばれると高待遇で登用される。俺たち孤児ならいきなり解放され、最初から給与が貰えたりするらしい。

俺たちの最終目標は完全解放されて、3人で冒険の旅に出る事だ。
その為には、まずは武闘会で活躍しないと。
武闘会はもう来月に迫っている。

武闘会には各道場から代表が5名ずつ出場し、トーナメント方式で争う。
武器や魔術の使用は許可されるが、真剣ではなく木剣が使用される。その為、対戦相手を殺めると反則負けとなる。
勝敗は相手が降参するか戦闘不能になるか、隊長格が務める審判が判断するかだ。

俺たち3人の出場は先日の序列決定戦で決まっている。
なので、来月の武闘会までに少しでも技を磨く為、今日も俺たちは鍛錬に励んでいる。
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